任天堂の復活はありえるか?何故任天堂はDeNAに敗れたのか。

勿論、企業の規模や歴史で言えば、DeNAは任天堂に遠く及ばない。しかし、何れ本当に「負ける」時が来るかもしれない。

任天堂が苦戦している。2011年7月28日、任天堂の決算が発表された。


結果は377億円の営業赤字を計上。加えて、円高、Nintendo-3DSの値下げもあり、業績下方修正の発表も行われた。

任天堂は、これらの業績悪化により、取締役の報酬減額も発表している。発表によると、岩田聡社長50%、他5人の代表取締役が30%、代表権のない残る4人の取締役は20%をそれぞれ減額する。

■苦戦する任天堂を尻目に、絶好調なDeNA
社長報酬が50%減額される自体にまで、追い込まれている任天堂を尻目に絶好調な企業がある。「怪盗ロワイヤル」によって快進撃を遂げるDeNAがそれだ。

2011年7月29日に発表された、決算発表は「絶好調」の一言に尽きる。

2011年Q1の決算結果では、DeNAは売上高は、任天堂の3分の1程度にしか過ぎないが、四半期純利益でみれば、255億円の赤字を計上した任天堂を大きく引き離し、94億円の黒字を計上し、前年比44.9%増の強い成長を実現している。

■任天堂が迎える二度目の冬の時代
任天堂の歴史は長い、古くは花札製造から始まり、一時はタクシー事業やホテル事業にも手を伸ばしてきた。その後、ゲームウォッチの大ヒットを契機に、ファミリコンピュータを発売、その後、発売した後継機となるスーパーファミコンも大ヒットし、10年以上に渡ってゲームメーカとしての黄金期を迎える。

しかし、ソニーコンピュータエンターテーメントの発売したプレイステーションが登場し、長い間続いた、「任天堂王国」は長い長い冬の時代を迎えることになる。圧倒的な支配力を持っていた「ファミコン帝国」に対して、新規参入組のプレイステーション陣営が取った戦略とは、「ライトユーザ層の取り込み」だった。

長らく続いた「ファミコン帝国」は、当初、マリオ等の誰でも遊べるゲームが主流だったが、熱烈なゲーマの要望に応えるため、スーパファミコンの時代には映像や音楽性能が向上し、表現力が向上する一方で、ルールや操作が複雑になり一部のユーザしか楽しめない「コア」なゲームが主流を占めるようになっていた。

そういった「一部のユーザ」しか遊べなくなったゲーム市場に対して、プレイステーション陣営は、パラッパラッパーといったリズムに合わせてボタンを押すというシンプルなゲームや、簡単な操作で誰でも遊べる「みんゴル」等によって、今までゲームをしていなかった層を取り込む、または難しくなったゲームによって離れてしまったゲーム層を取り込む事に成功し、「ファミコン帝国」を陥落することに成功した。

しかし、皮肉な事に、かつて「コアなファン」で固められた帝国から「ライト層」を取り込む事で成功した「プレイステーション陣営」は、任天堂によって全く同じ手法で敗れる事になる。2004年に「家でじっくり遊ぶより、外で手軽にちょっとだけ遊びたいというライトな層が存在する筈」という戦略から産まれたNintendo-DSが大ヒットしたのだ。家の外からプレイステーション陣営を取り壊しにかかった、任天堂は2006年に「体感するゲーム機wii」を発売し、プレイステーション陣営の本陣「家庭」に入り込み、ここでもまた、Wii fit等、健康と手軽さ家族で遊ぶをキーワードに、今までの「コア層」とは違うライトユーザ層を開拓し、長く続いた冬の時代を乗り切る事に成功した。

そんな長い冬の時代から見事に復活した任天堂だったが、今回の決算発表で、「二度目の冬」に突入するのは、避ける事の出来ない事実だろう。

■DeNAの成功も「ライトユーザ」の取り込み
では、何故、辛い冬の時代を勝ち抜いた任天堂は、また冬の時代を迎えようとしているのだろうか。任天堂のゲーム自体は、過去の反省もあってか、サードパーティ製のゲームも含めて「コア層」向けのゲームは少ない。その分野はPS3、XBOX360が激しい競争をしており、任天堂は「ライトユーザ層」を囲い込んでいる筈、そう、「筈」だったのだ。

コンソールゲーム機市場と呼ばれているゲーム市場の中では任天堂はライトユーザから圧倒的な支持を得ている。しかし、今のゲーム市場はコンソール市場が主戦場では無いのだ。主戦場はスマートフォンを含むスマートデバイス市場にフォーカスしている。

ここに、DeNAのスマートフォン戦略を示す貴重な図がある。

DeNAからゲーム市場とは、スマートフォンを軸にする事で、コアゲームから、ライトユーザまでを取り込む事が出来るとしている。DeNAから見た「ライトユーザ」とは、既に「コンソールゲーム市場」には存在しないのだ。

全くゲームをしない人間でも、フィーチャーフォンやスマートフォンは必要とする。そういった「ゲームをしないユーザ」をまず、取り込み、そこから徐々にグレードの高いゲームを提供していくことで、従来のコンソールゲーム市場で遊んでいた「コアユーザ」までも取り込んでいくことで、ライトからコアまで全ての層を包括することを狙っている。

任天堂の思い描く「ライトユーザ」はあくまでも「コンソールゲーム市場」の「ライト」であり、DeNAの狙うライトとは、それよりもっとライトな層なのだ。

考えてみて欲しい、幾らライト層向けに手軽に遊べるゲームだったとしても、特定のハードが必要になるゲーム機を購入するには初期投資として本体代、ソフト代で二万円程は必要になる。しかし、スマートフォンを持っているならゲームに接触するだけなら「0円」で済む。これなら、全くゲームに興味を持っていない層でも「暇つぶし」から試してみようという気になっても不思議では無いだろう。

今回の任天堂の敗北は、コンソール市場以外の所に存在する「ライト層」の大陸移動に気付くことが出来なかったことにあるだろう。ゲームの主戦場は「ゲーム機の上で行われる」という、過去からの「常識」が、「ゲームはスマートフォンでするもの」というライト層の「価値観の変化」に気付く事が出来なかったのが、最大の敗因では無いだろうか。

そして、DeNAはサムソンのスマートフォンに「モバゲー」の標準インストールの交渉に成功している。サムソンの販売力に後押しされ、スマートフォンユーザのゲームの入り口が「モバゲー」になろうとしているのだ。

■任天堂復活の鍵は「変化に対応すること」
「強い者が生き残ったわけではない。賢い者が生き残ったわけでもない。変化に対応した者が生き残ったのだ」とダーウィンは語った。任天堂が考えるべきは「ハード有りき」のビジネスに固執するのではなく、ライトユーザ層のゲームの接点の変化を認識すべきだろう。

任天堂のゲームには「愛」があると感じる。コンテンツに必要なのは「マネタイズ」という要素も確かに大切だ。しかし、それと同じ位「愛」も大切だと私は思う。任天堂のゲームから感じるそれは、明らかにマネタイズのみを考えたゲームとは異なる素晴らしさがある。その愛があるからこそ、人は「ゲームというおもちゃで、感動し、夢中になる」のだと思う。

過去に長く続いた冬の時代も、「愛」があるからこそ、世界中のファンに支えられ「任天堂」というブランドを維持する事が出来たきた。今回陥ろうとしている「第二の冬の時代」も、必ず復活を遂げると、一ファンとして心から応援したい。



この記事のタグ: , ,


関連する記事

  • 格安SIM時代には「情報ダイエット」が大切

  • 月額2100円で使えるリア充スマホ「PANDA」

  • サムスン、未来のスマートフォンのコンセプトを公開

  • 総務省 「スマートフォン安心安全強化戦略」(案)に対する意見募集

  • スマートデバイスのシェア争いは、マーケティング競争のフェーズへ

  • WWDC 2013で感じたアップル下落の兆候

  • Nexus7購入で感じた万能だけど中途半端なファブレット市場

  • 「文字を読む」ブログから、「見てタッチする」ブログへ

  • グーグル、データ通信料不要の「フリーゾーン」をフィリピンで提供開始。非インターネットユーザの獲得狙う

  • Gmailのフィルター設定を利用してスマホのバッテリーを長持ちさせる


  • プロフィール

    大元隆志(おおもと たかし) 通信事業者のインフラ設計、提案、企画を12年経験。異なるレイヤーの経験を活かし、技術者、経営層、 顧客の三つの包括的な視点で経営とITを融合するITビジネスアナリスト。業界動向、競合分析を得意とする。Yahoo!ニュース講談社 現代ビジネスCNET翔泳社EntepriseZineITmedia マーケティングITイニシアティブ、等、様々なIT系メディアで活躍する。SNSビジネス特集でNHK教育テレビに出演。ソーシャルメディア系イベントしては国内最大級となるソーシャルカンファレンス主催者。著書に「ビッグデータ・アナリティクス時代の日本企業の挑戦」「ソーシャルメディア実践の書」、「IPv4アドレス枯渇対策とIPv6導入」がある。所有資格 米国PMI認定PMP、シニアモバイルコンサルタント等。