災害対策とクラウド

東日本大震災の発生を機に、企業活動に必要不可欠なITインフラの構築にクラウドの利用が拡大している。

需要増加や市場の成長について、東京IT新聞7月26日号の紙面によると、

-クラウドが事業継続に必要不可欠なインフラになっている
-これまで言われていたコスト削減よりも災害対策として導入

とのことである。また、記事中でも紹介されているが、IDC Japanが6月28日に再発表した国内クラウドサービスの市場予測では「2011年の国内クラウドサービス市場規模は、前年比成長率 45.6%増の660億円」であると予測、更に「2015年の同市場規模で2010年比5.6倍の2,557億円」と予測している。

では何故これほどまでに広がりを見せるようになったのか?

「これまで目に見えない効果を目の当たりにした。」
これが一番大きいと考えている。

今まではサーバーを購入しなくて良いから安価に使えるという内容の訴求だったが、決してそうではない。
実際に以下に挙げる事象を目の当たりにして、本当に必要な機能(設備)を構築するためにクラウドの考え方が
必要不可欠な存在だということに気がついたのである。

これは事業者側も気づかなかった視点かもしれない。

例えば、クラウドを語る時によく言われる「早期構築が可能」という観点では、以下のような実例がある。

■早期構築

-Googleパーソンファインダー
Google社が震災直後に立ち上げた、被災されたご家族やご友人の安否消息情報を確認するサイトで、投稿だけでなくPicasaウェブアルバムを使い、写真のアップロードにも対応した。これらは全てGoogle社のクラウド上で構築されており、震災直後、数時間でサービスを開始した。

-Microsoftのミラーサイト構築
震災後、情報を求める人たちのアクセスにより多くの自治体や公共団体のホームページがダウン。そこで、Microsoft社が対応したのは、自社が提供するクラウドプラットフォームを使い、各ホームページのミラーサイトを構築。この負荷分散により、トラフィックが集中したサイトでも問題なく閲覧することが可能となった。

Internet Watch「自治体のミラーサイトをコミュニティと協力して構築した日本マイクロソフト

これらは、クラウドの特徴を活かした、早期構築・運用の好事例と言えるでしょう。

■バックアップ用途

今回の震災を受け一部の自治体では津波による庁舎の損壊により戸籍データ等の損失が確認された。書類が流されてしまったことによる被害に加え電子データ化していた自治体もサーバー自体が流されてしまうといった壊滅的な被害を受けている。民間企業においても同様で、これを受け多くの企業でバックアップシステムを構築する検討が加速しており、例えば津波を想定する自治体は県外へのバックアップを検討するところも出てきている。

クラウドをストレージとして活用することで、ミラーサイト構築と同様に遠距離におけるバックアップサイトを作り、事業継続性の確保も可能となるため、検討段階にあった企業も本格的に導入しようとする動きが加速している。

■事業継続計画(BCP : Business Continuity Plan)

震災後、停電や業務停止により営業できず売り上げが落ちた企業も多く、事業継続計画の見直しを行う企業も増えている。

Techtarget -ユーザー企業調査が伝える「大震災後のIT投資動向」  によると

-BCPを策定済みの企業は「定期的に見直す」
-BCPを策定していない企業は「策定を検討する」
という意見がそれぞれ増加した。

更にその見直しをするポイントとして約半数が「クラウドを活用する」ことを挙げている。

実際筆者自身も震災後の1週間を自宅待機となったのだが、リモートアクセスの環境も十分に準備出来ない中、
クラウドサービス上のチャットを駆使して業務を行った経験がある。

事業を継続するうえで、社員が出社できないことを想定するならば、いつでもどこでも業務が出来る環境を準備するには、ネット経由で利用するクラウドが最適であるということなのだ。

 

このように、震災が起こる前にクラウドのメリットとして語られていたものが、実際に目に見える形となったことで、
導入検討が加速しているのだと理解している。

例えば、繋がることが当たり前になった通信サービスについては
#利用者は、電話やネットに常時繋がることを期待してその対価をサービス利用料として払っている。
#通信事業者は、常に繋がるよう設備投資をし、最善の努力を尽くしてコミュニケーションをサポートしている。
というポジティブループが形成されている。

これと同じことがクラウドでも言えることだと考えている。
-遠隔地にサーバーを置く際、北海道にあるクラウドシステムを、常に繋がることを期待して対価を払う
-リモートアクセスの環境を作る際にどこからでもアクセスできるクラウドシステムを使って構築する
こういったニーズに応えるため、クラウド事業者も事業継続および、止まらないクラウドシステムに最大限の努力を行う必要がある。

#利用者自身がクラウドの使い方を理解し、信頼できるサービスに利用料という形で対価を支払う。
#クラウド事業者は利用者の大事なデータを預かりサービスを止めることなく運営していく。

この二つが結び着いた時、真の市場拡大が見込まれるのではなかろうか。

 

 

プロフィール
阿部 大輔
阿部 大輔(あべ だいすけ)

通信業界で働いています。社会人になってから、技術畑を歩み続けていたのですが、転職を機に企画へ。5年前からSaaSの世界に足を踏み入れ、「日本の働き方を変える」と意気込みここまでやってきました。まだまだ変わることができる機会は沢山あると思います。その推進力の一端を担えるように業務をこなす毎日です。




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    通信業界で働いています。社会人になってから、技術畑を歩み続けていたのですが、転職を機に企画へ。5年前からSaaSの世界に足を踏み入れ、「日本の働き方を変える」と意気込みここまでやってきました。まだまだ変わることができる機会は沢山あると思います。その推進力の一端を担えるように業務をこなす毎日です。