Google+の狙いを考察する。Google+から感じる四つの狙い。

語りつくされた感があるが、先週末にITmediaオルタナティブブロガーの上田さんと、小林さんが共同で主催されたGoogle+勉強会が開催された。そこで、上田さんから、私から見たGoogle+像について講演して欲しいとのご依頼を頂いた。上田さんには「ソーシャルメディア実践の書」の書評を書いて頂いていたこともあり、また、インターネット業界の傍らに10年以上関わってきた人間から見たGoogle+という視点について人前で話す機会が欲しいと思っていた所でもあったので、快諾させて頂いた。

今回は、その勉強会で私がお話した内容を皆さんにシェアしたい。但し、あくまでも私の私見である事を付け加えておきたい。

※勉強会当日の資料は下記リンクからダウンロード可能。

Google plus
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■Googleの中における、Google+の狙い
そもそも、Googleはスマートグリッドや情報家電といった分野にまで影響力を及ぼす存在であり、単なる「ソーシャル屋さん」では無い。私見ではあるが、私はGoogle+は、Googleの中でこのような位置づけになっていると考えている。

 ① Googleの提供するSNSサービス
 ② 新ポータルサイト戦略
 ③ Googleワールドとリアルワールドのタッチポイント
 ④ あくなき「情報収集」への知的好奇心

このうち、①については、当たり前の事過ぎる事柄であり、私としてはあまり興味の無い話題なので割愛する。割愛する理由は明らかだ。Googl+はGoogleのAndroidプラットフォームと共に成長する。英Canalys社の発表したデータによると、グローバルでの2011年第2四半期のスマートフォン出荷台数前年同期比で73%の成長、1億770万台となったとしている。このうちAndroid搭載機種は本調査の対象地域56ヵ国の内35ヵ国でトップシェアを獲得し、グローバル全体でも48%と過半数に迫っている。今後も暫くAndroidの快進撃は継続すると考えられるため、Android搭載のスマートフォンにGoogle+が標準で組み込まれるであろうことは容易に想像がつく。インストールベースでは「成功が約束されたプラットフォーム」だと考えているからだ。

そして、何より、これからのインターネット接続デバイスは「デスクトップPC」より「モバイル」の時代になってくる。そこにはインターネットにまだ接続していない全世界の7割のユーザを対象とした巨大なマーケットが存在しているのだ。

■②新ポータルサイト戦略
Googleのポータルサイトは「シンプル」だ。これは、インターネット黎明期には回線速度や、PCの処理能力が低かったこともあり、「検索結果を瞬時に表示」するために、極力無駄の無い画面にする必要があったのだ。Googleは「検索結果の表示速度が 0.5秒遅くなると、検索数が20%減少する」と発表しており、検索連動型広告収入の売上が大きな柱である同社にとっては「シンプル」はビジネスの要と言っても良かったのだ。

しかし、ユーザがインターネットに接する状況が変化しつつある。一昔前のインターネットとは多くの人々にとって「情報にアクセスする」時に接続するものだった。そう、何かの調べごとをする時に「googleさんに聞く」のだ。

それが、Facebookに代表される「ソーシャルネットワークサービス」の台頭により、インターネットに接続するキッカケが「コミュニケーションを楽しむ」ことに変化してきたのだ。一つの画面でニュースもゲームもチャットも楽しめる。回線速度の向上と、インターネット接続端末の処理能力の向上によって、「シンプル」な画面から、「リッチ」で「楽しい」ポータルサイトを好むようになってきたのだ。

ナローバンドからブロードバンドに変わり、人々のインターネットへ接触するきっかけが変化してきた。その変化に対応するためにも、Google+は重要な「新ポータルサイト」なのだ。なお、このGoogle+のデザインは、初代マックの開発陣でもある、Andy hertzfeldが担当している。

■③Googleワールドとリアル・ワールドを繋ぐ新たな接点となる
現在のGoogleの主戦場である、インターネットと現実世界を図示するとこのようになる。

Googleはインターネットのあらゆる情報を収集することは可能だが(勿論、クローズドなSNS等は対象外だが)、インターネットに接続されていない現実世界の情報の多くを収集する事は出来ない。今日もどこかで行われている、近所のお母さん同士の井戸端会議の内容や、お爺ちゃんが読んでいる本の内容をGoogleは収集する事は不可能なのだ。

しかし、これからは、変わってくるだろう。Googleは着々と自分達の領土をインターネットから現実の世界まで拡げようと虎視眈々とチャンスを狙っている。

Googleはまず、スマートテレビの導入で、今までテレビを見ていた層の取り込みを狙っている。次にスマートグリッドで一般家庭の電力使用状況からどういった電気機器を利用しているかを把握する事も可能になる。そして、Androidによって、あらゆる個人情報を収集する事が可能になる。

Androidについて、少し補足しておこう。私はAndroidに標準搭載されるNFCが今後重要な鍵を握ると考えている。NFCと言えばPasmo等の決済機能の用途ばかりピックアップされる事が多い。しかし、Google+の利用を促進するという観点において重要なことは「かざすことであらゆる情報を取り込める」という点にあるだろうと私は考えている。

例えば、書店に足を運び、気になる書籍があったとする。あなたはこの書籍が面白い物なのかどうかが非常に気になる。そこで、もし、その書籍にNFC対応のシールが貼られていたらどうだろうか?その書籍にNFC対応Android端末を「かざす」だけで、その書籍のネット上の評判がわかるのだ。

レストランに行ったとしよう。テーブルの所に「ここにNFC対応のAndroid端末をかざしてください」と書かれている。そこにAndroidをかざすと、Facebookにチェックインしクーポンが入手出来るのだ。

こんな世の中になれば何が起きるだろうか?今まで操作が複雑だという理由でネットサービスを利用しなかった層を取り込む事が出来るようになるのだ。そして、「かざす」という動作でネットにアクセスする事で「現実世界で起きている様々な情報」がgoogleの元に運ばれてくることになる。

Google+は恐らく、このAndroid搭載のNFCリーダ/ライタ機能と連携して、NFCの情報を取り込みサークルにポストするといったような展開が行われていくだろう。TwitterやFacebookのようにコメントを投稿することは勿論できるが、それより更に操作をシンプルにした「かざす」だけで、今見ている物、触れている物の情報を簡単にポスト出来るようになるだろう。

Google+はあなたの目となり耳となって、現実世界の情報をGoogleに届ける存在となるのだ。

■④「情報収集」への知的好奇心
最後の四つ目は、株式会社のGoogleとしてではなく、Googleの企業理念を考える上で「純粋な興味」があるのでは無いかと考えている。

Googleの使命とは、「Web および世界中で使用可能な膨大な量の情報を組織化する」事である。

Googleには株式会社の顔と、この使命を全うしようとするエンジニア集団としての2つの顔がある。この2つの顔の後者の側面で考えた場合、ある問題により行き詰まりが発生している。それは、どれほどテクノロジーが発達したとしても、私達人間の中の頭や心の中に存在する情報を収集する事は出来ないのだ。

人類の歴史上にはこの「頭の中や、心に起因する事象」の多くは、まだまだ研究が進んでいない。その中の一つに、人の人間関係にまつわる問題が、生活する上でどのように私達に影響を及ぼすのかといった事は解明されていない。例えば、私達には平均何人の親友が存在するのだろうか?その親友の中にエリートが多い人は人より早く出世するのだろうか?出世なんかしなくても、親友と呼べる友が多い人の方が「幸せ」だと感じる事は多いのだろうか?

これらの研究は、世界レベルで見ればまだまだ研究は進んでいない。しかし、Google+の人々の関係性を露にする試みが成功すれば、これらの研究に大きく寄与する事が出来るかもしれない。

それが解明される事によって、Googleに大きな富をもたらすかもしれない。しかし、そうでなかったとしても「世界中で使用可能な情報を整理する」というGoogleの純粋な使命を果たすためとも考える事は出来るのでは無いだろうか。

しかし、恐らくこの④の予想は外れるかもしれない。それは、Google+のサークルを開発した、ポール・アダムス氏は、最近のGoogleの官僚的な社風では、自身の研究したい成果を全うすることは出来ないという理由で「Facebook」に移籍したからだ。

■今後の展開
私としては、Google+は上記のような位置づけであり、Google Waveのような単なるウェブサービスでは無く、長期的展開を計画された戦略的サービスだと考えているため、短命で終わる事は無いだろうと考えている。単なるソーシャルネットワークと考えていては、その戦略は見えないのでは無いかとも思う。

また、まもなくGoogle+には、Facebookページの対抗馬として、年内には企業向けページもオープンされる予定だ。

私としては、現在のgoogle+はTwitterやFacebookと比較して情報の閲覧性は低く、情報収集のためのツールとしては不向きだと考えている。理由は一人辺りの投稿が長文傾向にあり、多数の情報を見るには中々有益な情報が探せない。この点、Twitterは文字数制限があり、多数の情報を閲覧することに優れており、Facebookはエッジランクによって、情報を精査した上で表示してくれている。全ての情報が「ダダ漏れ」となるGoogleはビューアとしては適していないと思う。

それよりは、Google Chromeへの標準「G+ボタン」の搭載や、AndroidによるNFCとの連携による現実世界の情報の取り込みなど、情報を「クリップ」することに優れたサービスとして発展していくのでは無いかと思う。

何れにせよ、Google+は「Facebookの対抗馬ではあるが、単なるSNSサービスでは無い」という点については、強調しておきたい。また、是非、皆さんの考えるGoogle+の戦略や活用方法等があれば、忌憚無いコメントを頂きたいと思う。

■関連リンク
・google+の挑戦はソーシャルグラフでは無く、リレーショングラフの可視化。リーチ力より、より狭い範囲へのレコメンド合戦が始まった
・Google+が教えてくれるたった一つの大切なこと



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  • プロフィール

    大元隆志(おおもと たかし) 通信事業者のインフラ設計、提案、企画を12年経験。異なるレイヤーの経験を活かし、技術者、経営層、 顧客の三つの包括的な視点で経営とITを融合するITビジネスアナリスト。業界動向、競合分析を得意とする。Yahoo!ニュース講談社 現代ビジネスCNET翔泳社EntepriseZineITmedia マーケティングITイニシアティブ、等、様々なIT系メディアで活躍する。SNSビジネス特集でNHK教育テレビに出演。ソーシャルメディア系イベントしては国内最大級となるソーシャルカンファレンス主催者。著書に「ビッグデータ・アナリティクス時代の日本企業の挑戦」「ソーシャルメディア実践の書」、「IPv4アドレス枯渇対策とIPv6導入」がある。所有資格 米国PMI認定PMP、シニアモバイルコンサルタント等。