Google+が変える世界。フラット化するインターネット

Facebookページの対抗馬としてGoogle+でも企業用ページのリリースが予定されている。

ソーシャルという観点では、Google+と、Facebookページが企業ユーザの取り合いをしているだけに見えるかもしれない。しかし、インターネットという視点で考えると、これら2つのサービスの陣取り合戦は、インターネットに重大な変化をもたらす可能性を含んでいる。

■形を変えるインターネット
2009年頃から、インターネットの形が変化してきているという話題がインターネット界隈を賑わせるようになった。1995年から2007年までのインターネットは、Tier1と呼ばれる巨大なISPを中心にトラフィックが流れていた。

しかし、Googleや、Facebookといった人気サイト、CDNと呼ばれる一部の企業が大きなトラフィックを集めるようになってきた。年を追うごとにこれらの企業の存在はインターネットで徐々に大きくなり、従来のTier1 ISPを通過するトラフィック量を凌駕するようになってきた。Tier1 ISPに変わってインターネットのトラフィックを支配する”Hyper Giants”と呼ばれる存在が姿を現したのだ。

■Google+の企業ページの登場で、勢力を拡大するHyper Giants
察しの良い読書のことなら、既にお気づきかもしれないが、Google+の企業ページと、Facebookページの「企業ユーザ」の取り込み合戦は、この”Hyper giants”の勢力を更に拡大させる恐れがあるということを意味している。

海外の先進的な企業では自社のHPを廃止し、Facebookページのみに移行している所も登場している。Facebookページがインターネットを自らの陣地に取り込もうとしているかのように、今までインターネットの世界で「オープンな世界の王様」であった、Googleが、自社のDC上に世界中の企業サイトを取り込んでいくかもしれない。もし、そうなれば「企業サイト」はFacebookページか、Google+上のどちらかに取り込まれることになる。

企業がそれを推進する理由は十分にある。Facebookページが、その圧倒的なユーザ数とバイラル効果によって企業ユーザを魅了しているように、Googleの検索に上位に表示される事は企業にとって同じ位重要になるだろう。googleは、Google+の「G+」ボタンのクリツク数と、Google+上の企業ユーザの検索結果を「比較的優位」に表示する「インセンティブ」を提供する事は十分に予想されるからだ。

更に、出来たばかりの企業のサイトなら、これらソーシャルサービス上にページを開設することは、ドメイン料やサーバ利用料等が不要という、コスト的なメリットも存在する。(データ保管用に別途必要なケースもあるが)

Facebookは「ソーシャルグラフ」を武器に、Google+は「検索結果とソーシャルグラフ」を武器に、企業ユーザの自社プラットフォームへの取り込み合戦は激しさを増して行くだろう。

■Google App Engineとの連携が企業ユーザ取り込みの鍵に
企業ユーザの取り込みについては、Google+の方が有利では無いかと私は推測している。

理由はGoogle App Engineの存在だ。現在ではGoogle+の企業ページがどのようになるのか余り細かい情報は発表されていない。しかし、もし、Google App Engineとの連携が可能になるならば、Google+にとって非常に強力な武器となるだろう。

Facebookページは高度な処理を行うためには、別途サーバを準備する必要があるが、Google+がもし、Google App Engineを利用可能ならば、Googleのクラウドサービス内で、非常に効率良くウェブサイトの構築を行う事が可能になる。また、Google App Engineは既に多数の実績があり、Google App Engineでの開発を得意とするエンジニアやSIerも多く存在する。企業によっては、既にGoogle App Engineでウェブサイトを構築している所等は、比較的容易に移行する事が可能になるのではないだろうか。

■小さくなり、フラット化するインターネット
インターネットに接続する機器は今後も右肩上がりで増加していくだろう。しかし、インターネットは小さくなっていくかもしれない。

企業サイトがFacebookページと、Google+に集約され、ウェブサービスはAmazon Web Servicesで提供され、個人ユーザはISPやキャリアが提供するiDCを利用するような流れが加速するかもしれない。

Tier1 ISPという存在は過去のものとなり、これらの”Hyper Giants”のDC間でトラフィックが完結する時代が来るかもしれない。

もし、そんな時代が来たらどうなるだろうか?

1969年にカリフォルニア大学ロスアンゼルス校、スタンフォード大学、カリフォルニア大学サンタバーバラ校の小さな研究室で繋がった「ARPANET」から産声を上げ、世界を覆う巨大な雲となった、インターネット。「Hyper Giants」の成長によって、その姿を研究室の繋がりから、”Hyper Giants”のDCの繋がりへと、小さな「箱」に姿を戻すかもしれない。

しかし、これには大きな問題をはらむようになってくるだろう。1969年の頃と違い、インターネットは既に「公共インフラ」と呼べる存在になっている。「Hyper Giants」がこの世界を取り込むことになれば、インターネットが一部の民間企業のルールの元で運営される事を意味するようになる。例えばgoogleの営利を侵害するような企業はGoogle+の中で不利な検索結果を与えられるかもしれない。

インターネットという仮想空間は自由であるが故に「Hyper Giants」を産み出したとも言える。しかし、巨大になりすぎた「Hyper Giants」を阻止するのは「現実世界」の政治と法律かもしれない。

勿論、ここまで話した全ての展開が外れるかもしれないし、また新たなトレンドが生まれる事によって、「Hyper Giants」そのものが無くなるかもしれない。しかし、もし、私の予想が当たるなら、インターネットという空間が「誰の物」であり、「誰のために」存在しているのかを、今以上に問われるようになってくるだろう。



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  • プロフィール

    大元隆志(おおもと たかし) 通信事業者のインフラ設計、提案、企画を12年経験。異なるレイヤーの経験を活かし、技術者、経営層、 顧客の三つの包括的な視点で経営とITを融合するITビジネスアナリスト。業界動向、競合分析を得意とする。Yahoo!ニュース講談社 現代ビジネスCNET翔泳社EntepriseZineITmedia マーケティングITイニシアティブ、等、様々なIT系メディアで活躍する。SNSビジネス特集でNHK教育テレビに出演。ソーシャルメディア系イベントしては国内最大級となるソーシャルカンファレンス主催者。著書に「ビッグデータ・アナリティクス時代の日本企業の挑戦」「ソーシャルメディア実践の書」、「IPv4アドレス枯渇対策とIPv6導入」がある。所有資格 米国PMI認定PMP、シニアモバイルコンサルタント等。