Androidは本当に世の中を席巻するか?市場の予測に疑問を投げかけてみたい

今日話題になったサイトに「android-au.jp」があった。Android-au.jpにアクセスすると下記のような寂しいメッセージが表示され、http://www.au.kddi.com/mirai/にリダイレクトされるという仕掛けが行われていた。

昨年までは「AndroidってAuが作ってるんでしょ?」や、「AuってGoogleに買われたの?」と言われる位、「android=au」と言うイメージ戦略を展開していただけに、このあっさりとした「終了宣言」はネットの話題をさらっていた。
 ※2011年9月26日23時現在は別の文言が挿入される模様。

Windows Phoneも登場し、iPhone5も発売目前となり、第三の勢力MeeGoo等も着々と存在感を露にしつつあるスマートフォン業界。丁度半年前に書いた記事だが、参考になるであろう記事を紹介したい。
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今年の通信業界を振り返ってみれば、スマートフォン一色と言って良かったと思う。その話題の中心は常に「Android」だったように思う。

Gartnerが発表した、全世界の2010年Q3の市場シェアを見ても、Androidの勢いを疑う余地は無い。2009年の3.5%から、2010年では25.5%に躍進し、既にiPhoneを抜き二位の座を獲得している。
Gartner

そういった世相を反映してか、世の中のアナリストや調査会社の発表するスマートフォンの市場予測では、今後はAndroidが優勢になるとの見方が多い。ここ数日、大前研一氏がiPhoneはAndroidに負けると書いた記事も話題になっている。私も実際にAndroidを触るまでは、これらの予想通り、徐々に世の中のスマートフォンをAndroidが席巻していくものと考えていた。しかし、先日、IS03を購入し実際にAndroidに触れて見ると、私にはこのまま、世の中全てがAndroid一色になるとは到底思えないと感じた。

■高機能が裏目にでるAndroid
Androidが人々を魅了する大きな理由は、Googleの技術力によって、先進的な機能が次々と追加され、最新のテクノロジーに触れる事が出来る点だろう。Googleの優れたInternet上のサービスを存分に活用可能で、多数のアプリケーションが登録されているAndroidマーケットは確かに魅力的だ。

しかし、その多機能さ故に操作が複雑になりがちになってしまう。それを必要としないユーザ、ITにあまり興味の無い、高齢者や女性の多くは、使いにくい端末だという印象を受けることになるだろう。

実際、私もIS03を利用してみて、IT好きの友人には薦められるが、これを自分の両親に「使ってみなよ」と薦めることが出来るかと聞かれれば、「No」と答えるだろう。反対に、iPhoneを所有している人の意見は、その使い易さが魅力だと答える人が多い。使い易いから女性や、高齢者にも広く利用されているように思う。

こういった感覚は、数値だけを見て予測していたのでは、実感出来ない物だと思う。Androidを採用したスマートフォンの課題は、Googleの技術力を享受しながら、その凄い技術力を駆使していることを気づかせない「わかりやすさ」をどうやって実装するかだと筆者は感じている。

しかし、Androidアプリケーションの開発者の方々と言葉を交わすと、彼らにとって重要な事は、素人向けの親しみやすいアプリケーションを作るということより、Geekで、Geekから賞賛されるアプリケーションを作る事に視点が向いているように感じる。

また、今年の冬に相次いで発売されたAndroidスマートフォンの売れ行きから見ても、暫くの間、国内キャリアから発売されるスマートフォンにはワンセグや赤外線等のガラパゴスハードが実装されて行くと予想される。ガラケーの良さは誰でも簡単に使える点だった。本当に注力すべきは、ITリテラシーの低い人でも簡単に使える工夫をすべき筈なのに、そうはなって居ない。

アプリケーション、ハードウェアがITリテラシーの高い人向けにフォーカスされている以上、Android頼みでは一定のパイ以上を獲得するのは難しいのでは無いかと思う。

■水面下で動き出したSamsung
世界第二位の販売能力を持つ、Samsungの動きも忘れてはならない。Samsungは昨年「Bada」と呼ばれるモバイルプラットフォームを発表した。2010年12月20日には、2.0の概要が発表され、HTML5、NFC対応、FlashLight4.0、マルチタスキング等にも対応し、Androidにも引けを取らない多機能なプラットフォームに成長していることが伺える。

Bada2

タッチパネル主体のスマートフォンの製造において、直感的な操作感を実現するためには、ハードとソフトがお互いに最適化されている方が機敏な動作が実現できる。CPUから独自に開発されているiPhoneがAndroid製品より機敏に動作するのはこのためだ。今世界で最も勢いのあるSamsungがOSを提供しだすということは、スマートフォンの市場予測をするさいに注目すべき点だろう。

■Phone7で再起をかけるMicrosoft
モバイルプラットフォームの話をする際に、殆ど話題にもならないマイクロソフトだが、Phone7は、従来の概観を一新し再起を図ろうとしているのが見て取れる。2010年12月21日に発表された同社の報告によると、Phone7は発売6週間を経て、150万台が出荷されたとしている。これは中々の数値といって良いだろう。

筆者もPhone7の実物を触った事があるが、想像以上に良い出来だった。Windows Mobile時代とは異なり、動作は軽快で、高級感ある作りになっていた。Microsoft Officeとの親和性という強い武器を背景に、法人向けへの販売が伸びるのでは無いかと予想する。

■低所得者層に普及が進むAndroid
SamsungやMicrosoftが存在感を増してくるとしても、それでも、世界規模で見れば、Androidは普及するだろう。Gartnerの同レポートから興味深いデータが読み取れる。これは、2010年Q3の全世界での携帯電話のメーカ別シェアだ。10年近く30%を切った事が無かったNokiaが30%を割り、サムソンが二位以下を大きく引き離し、存在感と勢いを感じさせている。

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しかし、本当に注目すべき所はそこでは無い。Top10をよく見ると大半が昨年よりシェアを落としていることが読み取れる。実はNokiaよりも大きな隠れたシェア一位が急成長しているのだ。それが「Other」でくくられた、WhitBoxと呼ばれるノーブランド製品群。中国等で製造された格安のノーブランドの携帯電話が中国、インド、ロシア、南米といった低所得者層向けに販売を増加させているのだ。

筆者はこういったBRICS等の地域で、低価格Androidが支持されると予想している。Fortuneに興味深い記事が紹介されていた。

By this time next year, Broadcom says it will release a follow-up chip that will allow WVGA displays and as much power as today’s high-end Smartphones at the same $75-$100 prices. That Nexus S that costs $530 now off contract will cost just a fraction of that in just one year.

Broadcom isn’t the only chipmaker taking aim at this new market. There is another chipmaker out of China building the same type of chipset for 3G EVDO Rev. A, the type of network that Sprint and Verizon use. They also say that they can get retail prices below $100.

To be clear, That sub $100 price is not the cost of materials, it is the suggested retail price after the manufacturers (and carriers) have taken their profits.

スマートフォンのチップメーカーであるBroadcomが発表した、BCM2157を利用すると、端末メーカは、現在の3Gスマートフォンと同程度の性能で、$75~$100といった、格安スマートフォンを製造する事が出来るようになるというレポートだ。こういった低価格のスマートフォンにAndroidはぴったりだろう。端末メーカは器だけ用意すれば、あとはGoogleがソフトウェアで高機能にしてくれるのだから。

BRICS等の携帯後進国市場では、日本人や先進国のように「使い易い携帯電話」に触れた文化が少ない。多少ITリテラシーの要求されるAndroid端末でも「こんなものか、でも、多機能だから良いか」と考える人も多いだろう。むしろ、今まで音声通話しか出来なかった携帯電話からすれば、感動すら覚えるかもしれない。

こういった市場に対して、低価格なAndroid端末は受け入れられていくだろう。そして、世界規模でのシェアという点では、先進国に売れた台数より、BRICS市場に売る方がシェアは大きく見えるのは間違いない。

■日本国内ではどうなるか
MM総研の予想によると、2015年度には国内の携帯電話市場の半数はスマートフォンになると予想している。
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MM総研は2015年度は国内にスマートフォンは約6035万台に成長しているとしている。この数値を基に、日本国内でのOSのシェアを所感ではあるが述べてみたい。

日本国内では、AndroidはITリテラシーの高い層に受け入れられるだろう。恐らくそのパイは丁度、国内のソーシャルメディアの会員数と同程度の二千万台前後の規模に落ち着くのでは無いかと予想する。
高齢者や女性等のいわゆる「マス市場」においてはiPhoneが依然受け入れられているのでは無いかと予想する、iPhoneがAndroidと同程度の二千万台前後のシェアを獲得しているのでは無いかと予想する。
そして、法人向け市場を中心にPhone7が一千万台前後。

といったような状況になり、アナリストが予想するようなAndroid一色になるという状況には陥らないのでは無いかと予想する。この予想を覆す要素があるとすれば以下の点だ。
 - 日本人のITリテラシーが劇的に向上する
 - Androidが劇的に使い易くなるか
 - ジョブスが他界し、Apple製品のカリスマ性が消失する

という三点では無いかと思う。こういった状況で、外部要因に頼らず自力でAndroidでトップを取りたいと携帯キャリアが望むなら、ガラケーのガラケーチップセットをAndroidに移植することではなく、使い易くするための「スキン」を提供することだろう。

また、筆者はスマートフォンの販売が中心となる、2015年頃には、「安くて、使い易い端末が良い」という消費者向けに「ガラケーの中古市場」が支持されるとも予想する。

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この記事は2010年12月30日にITmedia オルタナティブブログに掲載されたものです。



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    大元隆志(おおもと たかし) 通信事業者のインフラ設計、提案、企画を12年経験。異なるレイヤーの経験を活かし、技術者、経営層、 顧客の三つの包括的な視点で経営とITを融合するITビジネスアナリスト。業界動向、競合分析を得意とする。Yahoo!ニュース講談社 現代ビジネスCNET翔泳社EntepriseZineITmedia マーケティングITイニシアティブ、等、様々なIT系メディアで活躍する。SNSビジネス特集でNHK教育テレビに出演。ソーシャルメディア系イベントしては国内最大級となるソーシャルカンファレンス主催者。著書に「ビッグデータ・アナリティクス時代の日本企業の挑戦」「ソーシャルメディア実践の書」、「IPv4アドレス枯渇対策とIPv6導入」がある。所有資格 米国PMI認定PMP、シニアモバイルコンサルタント等。