日銀による円高介入もむなしく77円台水準に。ドル安が及ぼす本当の影響とは何なのか?

日銀による介入によって、一時は79円台になったドル円相場は、大方の予想通り既に77円台に突入。75円台の水準に戻すのも時間の問題では無いだろうか。

円高は短期的には国内産業の空洞化の問題が指摘されているが、長期的に考えると「今」というタイミングの円高は日本にとって「非常に都合が悪い」と私は考えている。

いや、円高という視点が今の問題を捉えると確かに「産業の空洞化」が問題であることに間違いない。しかし、視点を変えて「ドル安」が問題であると考えると違った物が見えてくるのでは無いだろうか。

■変化の時代
世の中は変化の真っ最中にある。オンプレミスからクラウドに変わり、フィーチャーホンからスマートフォンにかわり、コンシューマビジネスはリアル店舗中心のビジネスからソーシャルメディアを基点としたグローバルなオンライントレードに変わろうとしている。

この変化の激しい時代において従来の勝者であっても、これからの新しい時代の勝者であるとは限らない。先の見える企業は今より5年後を見て先手を打っている。この「変わりゆく」ビジネスモデルの中で、常に中心に居るのは「米国企業」である。私達は円高の影響でアマゾンのKindle fireやアップルのiPadを格安で購入する事が出来る。消費者には嬉しい話であるが、長期的に考えれば将来のデジタルコンテンツ、オンライントレードの「入り口」を米国製品で固められるという事を意味している。

米国企業は「ドル安」を武器にこの「時代の転換点」において自分たちの製品を普及させやすい状態にあると言って良い。そして、従来と異なるのが、アマゾン、アップル、グーグルの販売する製品は全てデータは「クラウド」上に保存されるという点だ。これが消費者にとっては利便性を向上させ、永らく使い続けると「製品」では無く「クラウド上のデータ」が重要になり、そのクラウド上のデータにアクセス出来るプロダクトを選択するようになる。

これは、消費者が他社製品に乗り換えるための「スイッチングコスト」と考えることが出来る。日本のメーカはこういった戦略が弱く「なぜそのメーカの物を買わないといけないのか」という動機づけが非常に弱い。良い製品を作りそれがブランドになり、消費者が選択しつづけてくれる時代はとうに終わっている。

「物」だけの差別なら大半の消費者は「価格」が大きな意思決定要素となる。しかし、「物」では無く「蓄積されたデータ」は、そう簡単に変えは効かない。

「物」から「蓄積されたデータ」へと商品購入の意思決定要素が移り変わろうとしている時代において、今ドル安が続くことは米国企業の将来の成功を約束することになる。

歴史的な円高ドル安は短期的に国内の空洞化が訪れるだろうが、本当に怖いのはその後に訪れるだろう。このトレンドが解消されるまでの数年間の間に次の時代を担うプロダクトは米国製の物で占められ、国内のメーカがどれだけ素晴らしいプロダクトを作ろうとしても「消費者は物のスペックと価格だけでは中々移行しない」そんな状態を築き上げられることだろう。

日本のメーカはそのことに気づき、今の円高ドル安を短期的な視点で考えるのでは無く、中長期的な視点でこのままアマゾンやアップルの躍進が続けば「自分たちは巻き返せるのか?」といった視点で検討する必要があるだろう。もし、未だに「UIやデザイン、価格で素晴らしい物を作れば消費者は選択してくれる」と考えているのなら、既にその考えは時代遅れだ。今から三年後に重要視されるのは、「蓄積されたデータと、そこから得られる体験」なのである。



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  • プロフィール

    大元隆志(おおもと たかし) 通信事業者のインフラ設計、提案、企画を12年経験。異なるレイヤーの経験を活かし、技術者、経営層、 顧客の三つの包括的な視点で経営とITを融合するITビジネスアナリスト。業界動向、競合分析を得意とする。Yahoo!ニュース講談社 現代ビジネスCNET翔泳社EntepriseZineITmedia マーケティングITイニシアティブ、等、様々なIT系メディアで活躍する。SNSビジネス特集でNHK教育テレビに出演。ソーシャルメディア系イベントしては国内最大級となるソーシャルカンファレンス主催者。著書に「ビッグデータ・アナリティクス時代の日本企業の挑戦」「ソーシャルメディア実践の書」、「IPv4アドレス枯渇対策とIPv6導入」がある。所有資格 米国PMI認定PMP、シニアモバイルコンサルタント等。