円高による窮状を訴えるより、ドル安容認姿勢による世界経済における米国企業の躍進の是非を世界に問うべき。

昨日のエントリーでは、多数のコメントを頂き有難う御座いました。

そのコメントの中に「では日本はどうすべきか?」というご質問を頂きました。

私はこう考えます。

■日本固有の問題から、世界全体の問題として世界へ訴える
「円高で大変です、産業が空洞化してしまいます」と世界各国に訴えた所でそれは日本独自の問題にすぎません。「震災からの復興のためどうかお慈悲を」と情に訴えかけても効果は持続しませんでした。

これを「ドル安を更正すべきです。何故なら今は産業モデルの転換点であり、現在のドル安と、TPPによる関税の撤廃は、米国のハイテク産業が各国の産業の芽を潰す格好の好機を与えることになる。これは皆さん全体が考えるべき問題です」とドル安の容認は世界全体の問題であると訴えたなら、欧州の動きは変わってくるでしょう。中国に至ってはこういった米国の動きを警戒してか、米国のインターネット産業に対して鎖国状態です。

何事も交渉であり、自国の窮状を訴えるだけなら誰も力を貸してくれません。日本の根本的な問題は長引く政局の不安定により大局的な視点で物事を考える人材が不足しており、その場、その場の対応に追われている点にあります。

今年の2月、オバマ大統領を囲むこんな会食の光景が話題になりました。

AppleのSteveJobs、Facebookのマークザッカーバーグ、Oracleのラリーエリソン、Googleのシュミット、Twitterのディックといった、IT業界のリーダと共に雇用や経済について話し合ったとのことです。

世界のITをリード出来るリーダ達が集まり、オバマ大統領にどんな進言をしたのでしょうか?そして、米国の経済を語り合う場に集められたリーダ達がIT業界を代表する面々であることを考えると、これからの米国経済を立て直すには彼らの力が必要だと大統領自身も考えているのでは無いでしょうか。

Apple、Facebook、Google、Twitter、Cisco、etc、、、これら米国を代表するIT業界のリーダ達が世界に対して盤石な体制を敷く「経済戦争」において、今という時期は非常に重要な時期であり、彼らの技術を各々の分野でプラットフォームで採用させるために有利な政策を話し合ったかもしれません。

自国の窮状を訴え、幾ら単独介入した所で、世界から見ればそれは「日本の問題」です。いかに「世界を巻き込む」か。視点を世界に変え「ドル安と米国産業の躍進」という観点で、もう一度戦略を立て直すべきだと私は考えます。

■「物」づくりから「仕組み」づくりへ
そして、並行して、「ハード」から「ソフト」作りを行うための「日本の体質転換」を徐々に行なっていくべきです。「産業の空洞化」は世界がグローバル経済に移行していく中では何れ直面する問題であり、今延命を行ったとしても、問題の先延ばしに過ぎません。「産業の空洞化」という言葉が日本の政治家から出るのは「日本が物作りの国」であるという認識があるからに他なりません。

インターネットでサービスを提供する、あるいは高付加価値のあるプロダクトを「開発する」ということが利益の大部分を産むという体質に転換することが、抜本的な対策案であり、いつまでも「物作り」にこだわっていたのでは、いずれは安い人件費の国に仕事を奪われ「産業の空洞化」は起きてしまうのです。

■知識教育からイノベーション型人材の育成へ
参入障壁の高かった「ハード作り」から、参入障壁の低い「ソフト開発」においては、課題発見能力、課題解決能力、形式に囚われない柔軟な思考、創造力が求められます。

決まりきった知識の暗記や、数式の解答方法を幾ら学習しても「創造性豊かな人材」は中々生まれません。今すぐにそういった人材を排出することは不可能と考えられますが、本格的な「ソフトの時代」の到来を予測して、イノベーション型人材を排出出来るような教育改革が必要になるでしょう。

■まとめ
短期的には、「ドル安の更正」を世界に訴える。
中期的には、日本の産業の体質転換。
長期的には、日本の教育改革における次代の人材の育成

といったことがこれからの日本を考えるにあたって必要なのでは無いかと私は考えます。



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プロフィール

大元隆志(おおもと たかし) 通信事業者のインフラ設計、提案、企画を12年経験。異なるレイヤーの経験を活かし、技術者、経営層、 顧客の三つの包括的な視点で経営とITを融合するITビジネスアナリスト。業界動向、競合分析を得意とする。Yahoo!ニュース講談社 現代ビジネスCNET翔泳社EntepriseZineITmedia マーケティングITイニシアティブ、等、様々なIT系メディアで活躍する。SNSビジネス特集でNHK教育テレビに出演。ソーシャルメディア系イベントしては国内最大級となるソーシャルカンファレンス主催者。著書に「ビッグデータ・アナリティクス時代の日本企業の挑戦」「ソーシャルメディア実践の書」、「IPv4アドレス枯渇対策とIPv6導入」がある。所有資格 米国PMI認定PMP、シニアモバイルコンサルタント等。