あなたがクリエイトしたいエクスペリエンスはなんですか?

突然ですが、以下の項目はあるプロダクトのユーザーエクスペリエンス・ビジョンだそうです。
みなさんは何のプロダクトかお分かりになるでしょうか?

  • 速くて見た目もよく、楽しく使えること
  • カレンダーからものすごく簡単に情報を取得できる
  • 四角形が並んでいるだけ以上にする
  • 共有が簡単で自分の生活を一望できる

カレンダーと聞いてピンときた方もいらっしゃるかもしれませんが、
正解は「Google Calendar」です。

プロダクトを開発していると最終的なUIの使い勝手(ユーザビリティ)にフォーカスしがちになりますが、このユーザーエクスペリエンス・ビジョン、いわばプロダクトのゴールとも言えるものを作り手側できちんと共有することがプロダクトを開発する上で非常に大切だなーと最近よく感じます。

このビジョンが共有できていないと、プロダクトを作っていく過程で軸がぶれてしまい、プロダクトがどこに向かっているのか具体的なイメージを作り出すことが難しくなってしまいます。
一つのことを決定するにも共通のベースがないため、「私はこっち」「いや、私はこっち」と堂々巡りの議論になってしまい、いつまでたっても決定しないということを経験されることは多いのではないでしょうか?

去年開催された「Tech Founders Japan」でFoodspottingのCEO「Alexa Andrzejewski」さんが「The UX-Driven Startup」というタイトルで講演された時の内容がユーザーエクスペリエンス・ビジョンを考える上で非常に参考になったので一部抜粋してご紹介したいと思います。

(私は抽選に落選してイベントには参加できなかったのですが、後日「On Off and Beyond」の渡辺千賀さんがHPで全文を公開して下さっていますので、そちらから引用させて頂きます。)

Alexa氏はこの中で「エクスペリエンス・ビジョン」の必要性について以下のように述べています。

シリコンバレーでは、スタートアップのファウンダーは技術に執着しがちなのに気がつきました。
AR・拡張現実がクールだから、という理由だけでARアプリを作りたがりますが、本当にARが便利かどうかは二の次です。

また、製品そのものにフォーカスしすぎるファウンダーもいます。
スケーラブルで、美しく、上手に作られたものにするのにフォーカスします。
しかし、その製品がどんな問題を解決するのかを忘れてしまいます。
お金を稼ぐことさえ、最終的なゴールではありません。
こうしたことは全て目的にはなりえないのです。

その代わりに、こんな質問を自分に問いかけてください。

「この製品はどんな問題を解決するのか?」

「この製品で人々の生活はどんなふうによくなるのか?どんなふうに生活の中で使われるのか?」

「本当にユーザが欲しいものは何か?」

あなたがユーザに経験して欲しいと思うエクスペリエンスにフォーカスしてください。
そして他のすべてをそのエクスペリエンスをサポートするものにしてください。
そのエクスペリエンスがどんなものになるのかのクリアなイメージを作り出してください。

「エクスペリエンスのビジョン」です。

また、きちんと「エクスペリエンス・ビジョン」を持つことによって
スタートアップがしがちな間違いのうち特に大きな3つが防げると述べています。

間違い1.人々が本当に欲しくも必要でも無いものを作ってしまう

Segwayのクリエータは、街の形を変え、新しい世界を作り出す、と予測しました。
Segwayは実際に驚くべき技術を元にできた驚くべき製品でした。
人々の体とともに動いたのです。Steve Jobsもファンになりました。
ですが、今日、Segwayは「製品の失敗」と同義語になってしまいました。
Segwayを使っているのはお上りさんだけです。
ユーザエクスペリエンスにフォーカスしないと、どんなに上手に具現化された製品も失敗してしまうのです。
早い時点で製品のファイナルな形を思い描くことで、作り始める前にアイデアを実証することができます。

間違い2.アイデアを小さく考えすぎる

過去1ヶ月エンジェル投資家からの増資を募ってきましたが、何度も何度も投資家にこんなことを聞かれました。
「どれくらい大きくなるのか」
「5年後にどんな風にしたいのか」
「世界征服のプランはなんだ」
「この問題の完璧な解決策はどんなふうに見えるのか」
投資家は大きなアイデアを見たがっています。あなたに大きく考えて欲しいのです。
彼らは、あなたの製品があったら世界がどんなふうになるかを表現して欲しいと考えています。
未来のビジョンをクリアにつたえることができると、投資家に感銘を与えることができます。

間違い3.動きが遅すぎる

意思決定の共通のベースが無いと、終りの無い議論に入ってしまいます。
一人が「こっちが好きだ」といい、もう一人が「あっちが好きだ」と。
大きなビジョンがないと、チームがひとつになれません。
ビジョンを持ち、それを全員がシェアすることでチームはひとつになり、
二つの選択肢のどちらを選ぶかというときの共通のベースができます。

このように日頃からエクスペリエンスのフォーカスに努めているAlexa氏でも、プロダクトの中身にとらわれすぎて、ユーザの視点を忘れてしまうことがあるそうで、定期的にある取り組みをされているそうです。
非常に手軽にエクスペリエンス・ビジョンを再確認できる方法だと思いますのでご紹介します。

大きな絵を忘れないために、時々私は、自分自身や チームメンバーに、このセンテンスの続きを言う事を課してみます。
「この製品が好きな理由は・・・」
もし答えが「この製品が好きな理由は仮想現実を使っていて、オープンウェブスタンダードを使っているから」といったものだとしたら、もう一回トライしないといけません!普通の人々に取って、私の製品が意味のあるものだと自信が持てるまで、このセンテンス完了のエクササイズを続ける必要があります。
おいしいたべものを探すのが、楽しく自然なことだから、人々はFoodspottingが好きなのです。私の母は、外食がアドベンチャーやゲームのようになるから Foodspottingが好きだったりします。
この質問に答えることで、常にコアに戻ることができます。

スマートデバイスの進化が急速に進み、一昔前では想像できなかったようなエクスペリエンスを簡単に実現できる世界になりました。
これはとても素晴らしいことですが、単なる多機能・高機能化に走ってしまっては、良いエクスペリエンスをユーザーに与えることは出来ないと思いますし、時として逆効果になってしまうかもしれません。
「この製品はどんな問題を解決するのか?」
「この製品で人々の生活はどんなふうによくなるのか?どんなふうに生活の中で使われるのか?」
「本当にユーザが欲しいものは何か?」
これらのことを常に意識し、エクスペリエンス・ビジョンをクリエイトしていくことがより一層必要な時代になっているのではないでしょうか?
 

(おまけ)
ユーザーエクスペリエンスを調べる中でいくつか役に立ちそうなツール類を見つけたのでご紹介します。
 
①Flickrのユーザーモデル
こういうのがあるとメンバー間でサービスイメージの共有がし易くて良いですね。
Flickr User Model, v0.3
 
②LEGOが社内用で利用している UX テンプレート
顧客像を円の中心に書き、なにが必要なのか、どのような体験があるのかを周りに書き込めるようになっています。
legowheel
 
③ユーザーエクスペリエンス・トレジャーマップ
20種類のユーザーエクスペリエンス関連の成果物を俯瞰できるマップです。
詳しくはこちら
User Experience Treasure Map

プロフィール
本田 雄三(ほんだ ゆうぞう)
主にWeb系の開発を行っています。 「ソーシャルメディア」、「スタートアップ」、「スマートフォン」、「クラウド」関連の情報をちょっぴり技術寄りな視点で発信していきたいと思います。



この記事のタグ:


関連する記事

  • なぜ「Turntable.fm」はユーザーを夢中にさせるのか

  • プロフィール
    本田 雄三(ほんだ ゆうぞう)
    主にWeb系の開発を行っています。 「ソーシャルメディア」、「スタートアップ」、「スマートフォン」、「クラウド」関連の情報をちょっぴり技術寄りな視点で発信していきたいと思います。