食べログが導入し注目が高まる、口コミサービスの信憑性を向上させる「携帯電話番号認証」

グルメ情報のレビューサイト「食べログ」(運営:カカクコム)にて、飲食店の口コミを意図的に操作する「口コミ代行業者」が問題になった。いわゆる「ヤラセ」であり、「ステルスマーケティング」とも呼ばれ、ネットに留まらずマスメディアでも取り上げられ大きな話題となっていた。

2012年3月2日、食べログは信頼性向上を目的とした「携帯電話番号認証」を導入した。

今回は、何故食べログが携帯電話番号認証を導入し、それがどんな効果があるのかを解説しよう。

■何故ステルスマーケティングは起きるのか?
 「食べログ」のように影響力のあるサイトになってくると、好意的な口コミか、クレームを書かれるかで、そのお店の印象は随分変わる。本来は、こういった書き込みがあれば、好意的な意見には感謝し、クレームは真摯に受け止め、改善するといった用途で使われるべきものであった。しかし、手っ取り早く収益に結び付けたいと考える店舗と、そういった店舗側のニーズを汲み取り「やらせ」をする業者の思惑が一致しビジネスとして成立している。
 
 とはいえ、「口コミ」を売りにしている「食べログ」にとっては、口コミの信頼はビジネスに直結する。ヤラセか自然な口コミなのかが分からないということになれば、誰もその情報を信じなくなり、単なるお店紹介ページとなってしまえば、他の情報サイトとの差別化が難しくなる。
 
 「口コミ」の信頼性向上はサイト運営にとって重大な経営課題なのだ。

■ステルスマーケティングは回避できるか?
 現在主流となっている、こういった会員サイトの会員登録は、メールアドレスと簡単な個人情報を登録するだけで、一人のユーザが幾らでも取得することが可能だ。システム側は一人のユーザが複数IDを利用して投稿している場合には「スパム」と判断するため同一IPからの連続書き込みを禁止するといった処理を行うことで、こういった行為に対処している。
 
 しかし、ヤラセ業者が「ライター募集」と称して一般人を集め、個別に会員登録させることで、異なるIPアドレスとなり、幾らでもヤラセを組織化することが可能だ。

 「ステログ」のような「ヤラセ診断サイト」が登場しても、「ヤラセ診断サイト」自体がヤラセの温床になる可能性もあり、イタチごっこになる可能性は否定出来ない。
 
 最も確実な対処方法は、ユーザ自身の見る目を養い、自分の意思で口コミの信憑性を調べ判断するしか無いというのが現実だ。

■何故「電話番号認証」がレビューの信憑性向上に繋がるのか
 ご存知の通り電話番号は通常携帯電話一台に付き、1つしか割り当てられていない。しかも、契約時に通信事業者によって本人確認が行われる。口コミレビューサイトの会員登録時にこの特性を活かし「電話番号」認証を行うことによって、複数のアカウントを保持することを防止することが出来る。
 今回食べログが実施した、レビュアーが「電話番号認証済み」のユーザか、そうでないユーザなのかをアイコンで分ける等の工夫を施す事で、どちらのタイプのユーザかを誰でも簡単に判断することが出来るようになる。
 
 レビュアーとして「信頼されたい」ユーザは、電話番号認証で本人であることを証明し、そうでは無いユーザは今まで通りのメールアドレス認証でレビューを行う。
 口コミを参照するユーザにこの違いが認知されれば、必然的に信頼性の高い「電話番号認証」されたユーザのレビューを信頼するようになって行くと考えられる。

 ◆ヤラセが困難になる
 仮に「ヤラセ業者」が前述した方法でライターを公募したとしよう。ライター自身がプライベードで利用しているアカウントが既に電話番号認証されて居れば、その電話番号に紐づいたIDは複数登録不可能にすることが出来る。僅か数百円の口コミ投稿のために、携帯電話をもう一台契約することは金銭の負担が大きい。日常的に利用する口コミサイトを「ヤラセ口コミ」のためにプライベード携帯の電話番号認証をすることは心理的な障壁も大きいだろう。

 ヤラセ業者がヤラセアカウント1つ毎に、携帯電話を一台ずつ契約するとも考えにくい。携帯電話の維持コストがかかるからだ。プリペイド携帯を契約することも考えられるがそれでもコストが今より大きくなるのは確実だ。そもそも携帯電話をライター一人一人に配布すること自体が大きな負担となる。

■ソーシャルメディアの普及で「本人認証」はますます重要になる
 既にブームの時期を終え、普及期に入り、「文化」として根付き出したソーシャルメディア。ソーシャルメディアでは日常的に膨大な数の口コミが流通している。 当然、「ヤラセ業者」はソーシャルメディアをもターゲットとして検討している。
 
 今後、ソーシャルメディアを活用した「口コミレビューサイト」はジャンルを問わず増加することだろう。そういったサイトを構築する時に「情報の判断は利用者自身でご判断下さい」と利用者に全てを委ねることは簡単だ。
 
 しかし、システムを提供する側として「ユーザに負担を掛けない、安心して利用出来るシステム」を作ることが出来たならば、多数のユーザに愛されるサービスに成長するだろう。今回、食べログが携帯電話番号認証を導入し、システム側でサービスの信頼性向上に踏み切った姿勢は評価されるべきだろう。そして、業界をリードする食べログの今回の判断が、他の口コミレビューサイトにどのような影響を与えるか注目したい。

■参考リンク
携帯電話番号認証を実現する空電プッシュ



この記事のタグ: , ,


関連する記事

  • FBで人に言えない「内緒のコミュニティ」に入るのは気をつけよう

  • 朝日新聞元記者が語る、新聞に取材される五つのコツ

  • 市場原理に従い質低下が危ぶまれる東洋経済オンライン

  • コンテンツにフリーライドする広告

  • 2013年版 絆の種類

  • ソーシャルCRMでコールセンタのコスト削減

  • ソーシャルメディアが晩婚化を助長する?

  • 「SNSで目立ちたい症候群」に企業はどう対処すべきか

  • イノベーションを生み出すスマートオフィス

  • 差が付きはじめた携帯三社のソーシャル評判


  • プロフィール

    大元隆志(おおもと たかし) 通信事業者のインフラ設計、提案、企画を12年経験。異なるレイヤーの経験を活かし、技術者、経営層、 顧客の三つの包括的な視点で経営とITを融合するITビジネスアナリスト。業界動向、競合分析を得意とする。Yahoo!ニュース講談社 現代ビジネスCNET翔泳社EntepriseZineITmedia マーケティングITイニシアティブ、等、様々なIT系メディアで活躍する。SNSビジネス特集でNHK教育テレビに出演。ソーシャルメディア系イベントしては国内最大級となるソーシャルカンファレンス主催者。著書に「ビッグデータ・アナリティクス時代の日本企業の挑戦」「ソーシャルメディア実践の書」、「IPv4アドレス枯渇対策とIPv6導入」がある。所有資格 米国PMI認定PMP、シニアモバイルコンサルタント等。