Interop2012雑感。2001年のIPv6ブームのような盛り上がりを見せるSDN

昨年に引き続いて、Interop2012 A10 NetworksさんのブースでキャリアにおけるIPv4枯渇対策という講演を担当させて頂いている。実際の所、大半のキャリアはIPv4枯渇対策としてのCGN等は導入ずみであったりするので、今後CGNをどう活用していくかなどを中心に話している。明日は最終日で 15:35 – 15:55 の時間帯に登壇しているので、ご興味のある方は20分ほどお付き合い頂ければと思う。

講演の都合で毎日Interopにお邪魔しているが、やはり今年はSDN、OpenFlowブースが盛況だ。昨年末位からメディアでも頻繁に取り上げられるようになってきているので、当然とも言える。その他はIPv4アドレス枯渇対応タスクフォースのブースもインターネット業界で著名な方が多数登壇していることもあって盛況となっている。

IPv4アドレス枯渇対応タスクフォースのブースでは私が漫画となってIPv4アドレス枯渇対策について解説しているので、興味のある方は是非、足を運んで頂きたい。

ネットワークという観点では、SDN(OpenFlow、ネットワーク仮想化)、IPv4アドレス枯渇対策、クラウドと、ここ数年のトレンドにSDNが盛り上がりを見せてきたといった所だろうか。

■盛り上がる一方で、意外に冷静な技術員の説明
SDNの講演を担当しているビジョナリーの話は各社夢を語っている。私も自分の講演でSDNについても触れているが、ビジョナリーの立場では確かに「夢」を語るのは当然だ。

しかし、実際に私もSDNの実用化を検討したりするが、実の所「SDNで無ければいけない理由」というのは実は乏しかったりする。確かに、非常に巨大なDCや、FWやLBをオンデマンドに有効にしたいといったニーズには応えるには便利な技術なのだが、それらを必要とするのは局所的であったり、極一部のビッグユーザに必要とされるケースが殆どなのである。

そういった日頃感じている疑問をせっかくの機会なので、各ブースの何社かの説明員に尋ねてみたのだが、大半は「同感です」という答えが帰ってきた。

■シーズ先行、ビジョン先行のSDN
Google、Facebookといった技術力もある資金もある、SDNを必要とするスケールもあるというHyper GiantsがSDNを求めるのは必然な流れでそれを否定する人は、少なくともこの業界には少ない。

しかし、自分達の環境にそれを当てはめて「今すぐ使いたいか」と、導入費、運用面、SDNで何をするのか?という三つの視点で冷静に考えると、国内ではまだまだ二の足を踏むユーザが多いというのが、実際の担当者と話している筆者の所感だ。

良く、SDNの有用性を訴求するために、AkamaiやFacebookは一人のオペレータで一万台単位のサーバやネットワーク機器の管理を行っているということが引き合いに出される。これらがSDNで実現されているというわけでは無いが、それ位徹底した「自動化」をDCの設計段階から検討しており、SDNはその流れのネットワーク版なのだという説明だ。

確かにDCはコスト競争が激しいので如何に自律したネットーワークを作ることが大切なポイントだ。しかし、一番の問題は、数万台規模の管理をすることではなく、数万台のサーバを「売る」ことの方が重要なのだ。技術的な側面だけを見ていると大規模管理の素晴らしさばかり目につくが、それを「売る」側の視点からすると、数万台規模で無ければコスト効果が出ない技術を採用するのはリスクが高く、従来の技術で十分という判断になり得る。

SDNで語られるビジョンは素晴らしいし、シーズはGoogle等が実用段階に入っているのは事実だが、それと同等のことを、収益面、人員のスキル、機器調達コストを考えると、国内で現段階で同様のレベルでメリットを享受出来る所は少ないというのが現実だ。

■2001年のIPv6と類似する盛り上がり
2000年、2001年頃のInteropではIPv6が大盛況だった。インターネットブームに沸くインターネット業界で「明日にでもIPv4アドレス」が無くなりそうなムードにつつまれて、Ipv6を搭載した冷蔵庫等も展示されていた。時代は数年先にはIPv6になるそんな予感を感じている者は決して「少なく」なかった。

それから10年が経過した現在、IPv4アドレスは枯渇したが、まだIPv6の時代は到来していない。

現在となってはIPv4が枯渇し、IPv6は必要性を増している。しかし、当時の状況では「巨大」なネットワークではIPv6を必要としたかもしれないが、それ以外のネットワークではIPv6を必要とする必然性は無かった。IPv6を利用出来る機器も少なかったので自作する位の技術力が無ければ利用することが難しかった。

現在のSDNでも同様のことが言えるのでは無いだろうか。
 - 現在のインフラをリプレイスして、SDNを必要とする程の巨大なインフラ
 - SDNの機器を自作出来る位の技術力
 - SDNの設定を殆どリファレンスが無い状態で、プログラム可能な技術力
 - 従来のMPLS-TEや、VPLS、冗長機能、セキュリティと同程度の品質をプログラムする技術力
 - 必ずしも導入しなければならない技術では無い

最低でもこれ位の条件を満たすことが出来なければ、SDNのメリットを享受することが出来ない。現状ではメディアの盛り上がりとは裏腹に、冷静にこれらのポイントを分析し、どこまで実用段階であるかを「お金を払う人達」は精査している段階にある。これらを既存の技術と天秤にかけた結果、導入するかが決定していくだろう。

■SDNの普及予測
2012は技術先行型の企業からDCで採用されるケースは登場するだろうと予測している。その他では比較的小規模なネットワークで実験的な導入が散見されるレベルになると考えている。筆者の時間軸では国内で本格的な導入事例が登場するのは2014年前後であり、一般企業レベルとなると、当面導入されることは無いのではないかと考えている。

SDNはIP Routingで構成されてきたネットワークの一大転換点であり、今後主流になる可能性があることは否定しない。しかし、これを使いこなす、または誰でも使いこなせるレベルになるには、相当な時間がかかるだろう。それは恐らく1~2年といったレベルで解決されるものではなく、一般的な技術と認知されるようになるには最低でも5年は要すると筆者は見ている。下手をすればMPLS-TE等の技術は一部のエンジニアにしか使いこなせないようにSDNという技術も極一部のハイレベルなエンジニアにだけ必要される技術となる可能性もあると考えている。

上記予測は筆者の経験によるものであり、メディアでは当面SDNに関する話題は盛り上がり続けるだろう。しかし、一番大切なことは「その新しい技術でどんなサービスを提供出来るのか」という点なのである。メディアの方には導入事例や動向を紹介して頂くのは勿論ありがたいが「SDNを導入することで収益モデルにどんな影響を与えるか?」といった観点での冷静な分析を期待したい。そこが欠けていれば、2001年のIPv6ブーム同様、空回りで終わることとなるだろう。



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  • プロフィール

    大元隆志(おおもと たかし) 通信事業者のインフラ設計、提案、企画を12年経験。異なるレイヤーの経験を活かし、技術者、経営層、 顧客の三つの包括的な視点で経営とITを融合するITビジネスアナリスト。業界動向、競合分析を得意とする。Yahoo!ニュース講談社 現代ビジネスCNET翔泳社EntepriseZineITmedia マーケティングITイニシアティブ、等、様々なIT系メディアで活躍する。SNSビジネス特集でNHK教育テレビに出演。ソーシャルメディア系イベントしては国内最大級となるソーシャルカンファレンス主催者。著書に「ビッグデータ・アナリティクス時代の日本企業の挑戦」「ソーシャルメディア実践の書」、「IPv4アドレス枯渇対策とIPv6導入」がある。所有資格 米国PMI認定PMP、シニアモバイルコンサルタント等。