クラウド利用のリスク。ファーストサーバにてデータ消失を伴う大規模障害発生

2004年1月23日、日本のIT業界の歴史に刻まれる、ある事件が発生した「Yahoo! BB顧客情報漏洩事件」。ソフトバンクは流出したとされる450万人のユーザ一人一人に500円の金券を発行し、システム改修費用などを含めて、40億円の支出をこうむるようになった。

この事件はこれ以降、セキュリティリスクの被害額算出例として度々取り上げられるようになった。そして、この事件を境にリスクを嫌う日本企業ではセキュリティリスクを重視する傾向になり「プライバシー過保護法」と揶揄される程の厳重なセキュリティ対策を行うようになった。結果として世界で1、2を争うほどのセキュリティ意識の高い企業文化が醸成されたが、紛失リスクの高いノートPC等の利用が敬遠されるようになり、企業においてはモバイル後進国への道を歩むこととなった。

■クラウドの危険性を露呈させたファーストサーバの大規模障害
2012年6月20日、恐らく日本のIT業界の歴史に刻まれることになるであろう事件が起きた。ヤフー子会社のファーストサーバでデータ消失を伴う大規模障害が発生した。

原因は更新プログラムのバグと運用の不備。対象サービスは、ビズ/ビズ2/エントリービズ/エンタープライズ3/EC-CUBEクラウドサーバ マネージドクラウドとなっている。

■クラウド利用のリスク事例として
ファーストサーバでは、本障害において利用顧客がこうむった被害に対する賠償は「顧客が支払った額が限度」としている。現在、障害影響の範囲を調査中とのことだが、被害の規模によってはファーストサーバの信頼のみならず、クラウド業界自体の信頼を損なう事故となるだろう。

クラウドというキーワードが盛んに叫ばれた当初、セキュリティ意識の高い国内企業からはクラウド利用に対して慎重な構えを見せていた。それがGoogleやアマゾンの地道な布教活動と、不安感の払拭によって、コストメリットやリードタイム短縮といった本来のメリットが見直され、徐々にクラウド利用が理解され出してきた所に、今回のデータ消失を伴う大規模障害の発生である。

被害状況と、ファーストサーバの補償状況等によっては、クラウド利用の意識が後退するのは確実だ。モバイル後進国に続いてクラウド後進国にならないためにも、ファーストサーバには誠意ある対応を期待したい。また、被害状況が最小限に留まっていることを切に願いたい。



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プロフィール

大元隆志(おおもと たかし) 通信事業者のインフラ設計、提案、企画を12年経験。異なるレイヤーの経験を活かし、技術者、経営層、 顧客の三つの包括的な視点で経営とITを融合するITビジネスアナリスト。業界動向、競合分析を得意とする。Yahoo!ニュース講談社 現代ビジネスCNET翔泳社EntepriseZineITmedia マーケティングITイニシアティブ、等、様々なIT系メディアで活躍する。SNSビジネス特集でNHK教育テレビに出演。ソーシャルメディア系イベントしては国内最大級となるソーシャルカンファレンス主催者。著書に「ビッグデータ・アナリティクス時代の日本企業の挑戦」「ソーシャルメディア実践の書」、「IPv4アドレス枯渇対策とIPv6導入」がある。所有資格 米国PMI認定PMP、シニアモバイルコンサルタント等。