プラチナバンド開通記念。「でんぱわるい」の裏側(前編)

 2012年7月25日、ソフトバンク孫社長の長年の夢だったプラチナバンドがついに提供開始。今回は、このプラチナバンド開局を記念して、ここに至るまでのあるソフトバンクグループ社員の長い長い闘いの記録をご紹介したい。


 「もー!電波悪い!」

ぎゃあ。

これは通信事業者の中の人にとっていちばん精神的にくる言葉です。たしかに繋がらない、というのはこれだけモバイルな世の中では結構なストレスですね。

携帯電話がつながるにはものすごくたくさんの壁があります。それは、技術だけではなく、またお金だけでもなく、資源と、自然の法則と、国の政策と、はては人の心までからんだ理由からなのですが…

「つながる」というのはものすごく難しいことなんですが、実は日本の携帯電話ネットワークは、現在世界でもぶっちぎりナンバーワンの高品質です。
日本という国は、地形的にものすごく「つながる」を作りにくいにも関わらず。

今回のテーマは「「でんぱわるい」の裏側」です。長いので2回に分けてお伝えしますね。

さて携帯電話が日本全国で通話したりメールしたりするためには、日本全国で電波をキャッチできなければいけません。

最近は街を歩けばすぐに基地局を見つけることができます。
「基地局」というと巨大な鉄塔を思い浮かべる人が多いと思いますが、基地局といわれるものは目的に応じて様々な種類があります。いま日本にある基地局の数は、各社全部あわせてだいたい50万局(※)くらいです。


 ※アンチSBのひとにいじめられるので、あくまで総務省免許申請数ベースとした。包括免許は無視している。何を行っているかわからない人はここ読み飛ばしてOK。

「なんでそんなにたくさん必要なの?」
「東京タワーみたいにでっかいのを一個つくって、みんなカバーしちゃえばよくない?」
いい発想ですが、受信するだけのテレビと違って携帯電話は双方向です。つまり携帯電話と基地局はお互いの声が聞こえていなくてはいけません。

東京タワーのように一つの巨大なアンテナでは、近くでは良くても、遠くにいる携帯電話は自分の「声」を届けることができません。遠くまで届くにはこちらもタワーと同じくらい高いところから電波を出す必要がありますし、それほどの強い電波を出した途端に、携帯電話のバッテリーはなくなってしまうからです。

というわけでこの基地局は、種類にも寄りますがひとつでだいたい半径1km~5km程度をカバーしています。これを隙間ができないようにぽこぽこ配置していきます。…と、かなり気軽に言っていますが、この基地局の配置は携帯電話のキモになる部分です。この電波の届く範囲は、重なってもいけないし離れていてもいけません。

重なると「干渉」といって電波同士がぶつかり合ってマトモに通話ができなくなるし、かといって離れすぎていると、電波範囲を離れた途端に通話が切れて「つながらなく」なってしまいます。

歩きながらも通話ができるのは、この電波範囲の設計を厳密にすることで、電波が弱くなる「はじっこ」同士を微妙に重ね合わせて、重なっている間に基地局を切り替える「ハンドオーバー」というしくみのおかげです。

電車に乗っていると切れてしまったり、移動中に繋がらなかったりするのは、この基地局を設計通りに置くことができなかったりしてスキマができているところに入ってしまったからですね。

「でも基地局が見えてるのに圏外になることって結構あるよ!?」
「外ではぜんぜん繋がるのに、家の中では繋がらなかったり」
「同じ都心でもドコモやauは繋がるのに、ソフトバンクがつながらないことあるよ?」

基地局のポイント設計は移動時の品質を左右する大きな部分ですが、もひとつ、「つながりやすさ」を左右する大きなポイントがあります。
それが「電波の種類」です。

電波は「周波数」によって分類されるのですが、この周波数が、低いほど「波」に近く、高ければ高いほど「光」に近くなります。
わけがわからないので図を見てみましょう。

基本的に高い周波数ほど携帯電話には向いていません。
障害物に弱いので室内でつながらないし、ぶっちゃけ空気の粒子に負けるほどへちょいので、あまり遠くまで届かず、届かないところをカバーするのに余計に基地局が必要になります。

つまり携帯電話会社によって、圏外だったり圏外じゃなかったりするのは使っている電波の性質の違いによるところが非常に大きいです(※)。

日本の携帯各社が使っている電波を並べてみました。わかりやすくするため、各社がもっている一番「低い」電波を書いています。

※参考までに800MHz帯を51,000局で「日本中ほとんどつながる」(ドコモ)2.1GHz帯を75,000局打っても「つながるけど不満が残る」(ソフトバンク)程度にしかならない

じゃあみんな「低い」電波を使えばいいんじゃない?
と思うかもしれませんが、電波というのは携帯電話各社に国が割り当てているもので、勝手にそれ以外の周波数を使うことはできません。

「電波」というのは実は「有限の資源」なんです、といったら驚きますか?

電波は情報を伝えるのにとても便利なものですが、自然界に一定の量しかなく、一度に使える量が限られています。
便利だからといって好き勝手に使うと、他の人が使えなくなってしまうのです。そのため国によって厳重に管理されています。
※国が「自由に使って良い」とした以外の電波を許可無く勝手に使うと、犯罪行為になります。

つながらない、と言われるのは、この電波特性によって思うように電波範囲がつくれないことで、電波にスキマや弱いところができてしまうことが原因です。

これを解消する方法は本当に単純で、とにかく基地局を作りまくるしかありません。ビルの影になる場所、屋内、ありとあらゆる「つながらない」ところに基地局を作り、どうにかして理想の電波範囲を作る以外にありません。

しかしながら、ここに大きな壁がまたも立ちふさがります。これはある意味、電波の性質よりはるかに厄介で解決の難しい問題なのですが・・・・


本記事は「リーベンシュタインさちこのテクノロジー大好きBLOG.」からご寄稿頂きました。



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  • プロフィール

    大元隆志(おおもと たかし) 通信事業者のインフラ設計、提案、企画を12年経験。異なるレイヤーの経験を活かし、技術者、経営層、 顧客の三つの包括的な視点で経営とITを融合するITビジネスアナリスト。業界動向、競合分析を得意とする。Yahoo!ニュース講談社 現代ビジネスCNET翔泳社EntepriseZineITmedia マーケティングITイニシアティブ、等、様々なIT系メディアで活躍する。SNSビジネス特集でNHK教育テレビに出演。ソーシャルメディア系イベントしては国内最大級となるソーシャルカンファレンス主催者。著書に「ビッグデータ・アナリティクス時代の日本企業の挑戦」「ソーシャルメディア実践の書」、「IPv4アドレス枯渇対策とIPv6導入」がある。所有資格 米国PMI認定PMP、シニアモバイルコンサルタント等。