面白さは最高、システムは最低なドラゴンクエスト10

 8月2日に発売され、「和製、指輪物語」と呼べるほどに作りこまれた世界。MMOとなったことで賛否両論があるとは思うが、ゲームとしての完成度は素晴らしい。

■ドラクエの中に生まれる”ソーシャル”
 今回、大勢のユーザが同時にドラクエの世界にログインし、プレイヤー同士が”繋がる”ことで、ドラクエという仮想空間の中で会話をしたり、共に冒険をすることも、バザーと呼ばれるシステムを利用して自分が仕入れた素材や武具を販売することが出来る。

 特にバザーの仕組みは、ドラクエの大陸毎に在庫が異なるようになっていて、ある大陸ではこの素材は安いけど、こっちに持っていくと高く売れるといった「商い」をおこなうことが出来る。「あそこにこれ作って売ると儲かるよ!」といったような儲かるテクニックを他のプレイヤーから教えて貰うこともあり、まさに「ドラクエの中に社会(ソーシャル)」が誕生していると実感する。

 プレイヤー同士の会話が成立することで、現在のゲームの「とある課題」も解決されていると気づく。RPGに限らず、ウェブが発達してから先行するプレイヤー達がまとめサイトを開設し、そこにゲームをいかに効率良くクリアーするかといった方法が掲載されるようになった。それを見れば物語をスムーズに進められるため、つまずくと自分で考えるよりかは「まとめサイト」をみるようになり、まとめサイトの攻略チャートを見ながら進める、といったプレイヤーも多いのでは無いだろうか。それによって、ゲーム内のイベントは「作業」になり、単調なものに感じてしまう。

 しかし、今回のドラクエでは、何かにつまずいたり街中に居る他のプレイヤーが攻略を手伝ってくれる。例えば、あるクエストで討伐依頼のあった敵の位置がわからなかったりしたら、親切にその場所まで案内してくれるといった状況が起こりえる。つまずくとゲームの外に答えを求めていた流れが、ゲームの中で閉じるようになった。これにより「作業をさせられている」という感覚が著しく低下するようになった。

 何より凄いのが「やっぱり面白いわ」という、リアルソーシャルの「口コミ」で周りの友人が遊びだす。ソーシャルゲームのソレとは違う、本物の「ソーシャル」がドラゴンクエスト10は実現した。

■ドラクエらしさで進める最初は面白い
 従来のドラクエの世界観を踏襲しつつ、プレイヤー同士の交流を組み合わせることで、ドラクエ10は今までのシリーズの中で最高に面白いと、素直に感じた。

 しかし、それは本作で提供される基本シナリオの序盤から中盤までの話であったことに、シナリオを進めていくと感じるようになっていった。ドラゴンクエストのようなRPGと呼ばれるゲームは主人公に「レベル」というものが設定されていて、敵を倒すごとに経験値がたまり、ある一定値たまれば、レベルがあがり主人公が成長する。成長することでより強い敵を倒すことが出来るようになり、この成長を楽しむと共に、より強大な敵を倒していくことでシナリオを進めていくのがRPGの醍醐味だ。

 このレベル上げが序盤は必要経験値が10や20なのですぐにたまる。LV20位でシナリオ中盤に差し掛かるが、このあたりまではプレイヤー同士も仲良く手助けしながらゲーム内で交流を楽しむことが出来た。本作では最大四人までパーティとして共に旅をすることが出来るが、この四人でワキアイアイと会話をしながら進むというのが序盤戦でよく見られた光景だった。

 ところが、LV25に到達したあたりからレベルアップに必要となる経験値が1万を超えてくるようになる。しかし、敵を倒して貰える経験値が序盤と比べて大幅に上昇するかというとそうでもない。この経験値を増やすために、四人で敵を倒すより、一人で戦う方が獲得経験値が四倍になるので、「個人プレイ」に出た方が早くレベルもあがるようになってくる。

 この辺りから殺伐とした空気がゲームをおおうようになってくる。

■MMOらしさが出てくる中盤以降は”苦痛”でしかない
 LV25を超えたあたりから、一人で旅に出て弱い敵を延々と倒すだけの単調なゲームになる。だいたい一時間位一人で戦ってレベルが1上昇する。LV30からは1時間30分位必要になってくる。

 時間と手間がかかるようになってくるので、プレイヤー同士が協力しなくなってくる。自分より弱いプレイヤーを手助けすることもなく、ボスを倒すのに都合の良い「自分より強い人」とパーティを組もうとする。運良くパーティを組めたとしてもボス戦が終われば、また次のボスと戦うための「一人レベル上げ」を延々と繰り返す。多くの社会人にとって一日に遊べる時間はせいぜい2時間位が平均値なのではないかと思うが、毎日ログインしては、ひたすら単調なレベル上げを繰り返すだけのゲームになっていく。

 町から町へと移動し、新しい町で手に入る装備を一通り手いれることができたら次の町へ向かうための必要なレベルに達している。これがドラクエの伝統的なストレスを感じさせない絶妙なバランス感覚だったが、本作ではMMO化したことでその絶妙なバランス感を失ってしまっている。

 次第に総時間でみると「一人レベル上げ」が相対的に多くなっていき「これMMOでやる意味あるのかな?」と疑問すら感じるようになってくる。協力しあったプレイヤーは「良い獲物」を奪い合う邪魔な存在になっていく。さらに本作の最低な所は度重なるサーバ障害とメンテナンス発生率の高さ。特にサラリーマンが多くプレイする時間帯であろう22時から24時にかけてまともに遊べない状況が続いているので公式サイトでも、多数の苦情とも悲痛な叫びともとれるコメントが続いている。そんな気持ちを逆なでするようにログインする度に表示される「課金しますか?」の催促メッセージ。

しかし、昔からMMOを遊んでいる人たちには、「そんなのはMMOでは当たり前」らしいのだ。

 ネット上の評判を見ているとMMOを昔からプレイしている”MMOらしいというのは”
 ・”1LVアップに数十時間、極端なものでは100時間費やす”のは当たり前。
 ・初回リリース時、新クエストリリース時にサーバに繋がらないのは当たり前。

 といったことらしいのだが、1日に1~2時間位しか遊べない、それも毎日は無理という社会人にとってこのMMOの”常識”は受け入れがたいし、そういうものなら無理してまで遊びたいというのが本音であり、残念ながら今回のドラゴンクエスト10は、このMMOらしさが理解出来ていないと”遊べない”代物になっている。

 ゲームバランスを失い、誰もが遊べる気軽さを失い、ただひたすら「課金」をうながされる、これはドラクエという皮を被った、全く別物のゲームになってしまった。

■MMOらしさではなく、ドラクエらしさに課金したかった
 歴代ドラゴンクエストの良さとは、一本分の値段で誰でも最後まで遊べるように配慮された親切な作りと、絶妙なゲームバランス、練りこまれたシナリオだったと筆者は感じている。しかし、本作はシナリオは非常に先が見たくなるものでゲームとしての完成度は高いのだが、あいつぐトラブルによって時間だけが過ぎてしまい、パッケージに付与されている20日間プレイ期間の間では、残念だが基本ストーリを終了させることは出来そうにない。

 ストレージを搭載していないWiiという機種で発売し、外付けUSBメモリ16GBを購入させるという負担をユーザに強制する程の価値が本作のMMO化にあったのだろうかと疑問を感じる。MMOにライトユーザを取り込もうという狙いがあったのだろうが、MMOらしさを理解してくれるユーザで無ければ着いていくことはないだろう。今時ゲーム機の前で単調な作業を喜んで何時間もプレイする層はごく限られた層であることを認識した方が良いだろう。

 序盤から中盤にかけてのオフラインゲームのような絶妙なレベルアップのバランスと、プレイヤー同士の協力はとても素晴らしかった。年甲斐もなく熱中し朝の三時まで徹夜するなんて本当に久しぶりのことだった。(しかし、その日も朝4時からメンテナンスというメッセージで熱中は強制的に覚めされられたが)この内容なら喜んで課金すると感じたものだ。

 最初から最後までドラゴンクエストのままMMOになっていたら喜んで「課金」していただろう。しかし、後半の単調なレベルアップを強要されるドラクエという皮を被ったまともにゲームも出来ないドラゴンクエストに変わっていくにつれ、熱狂は冷めていった。

 あと数日でパッケージに付与された20日のプレイ期間が終了するため恐らく、もうログインすることは無いように思うが、第一作目からのファンでもあった自分にとって「ドラクエらしさ」を捨ててしまった本作は残念でならない。次回作は「ドラゴンクエスト」が戻ってくることを期待したい。



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プロフィール

大元隆志(おおもと たかし) 通信事業者のインフラ設計、提案、企画を12年経験。異なるレイヤーの経験を活かし、技術者、経営層、 顧客の三つの包括的な視点で経営とITを融合するITビジネスアナリスト。業界動向、競合分析を得意とする。Yahoo!ニュース講談社 現代ビジネスCNET翔泳社EntepriseZineITmedia マーケティングITイニシアティブ、等、様々なIT系メディアで活躍する。SNSビジネス特集でNHK教育テレビに出演。ソーシャルメディア系イベントしては国内最大級となるソーシャルカンファレンス主催者。著書に「ビッグデータ・アナリティクス時代の日本企業の挑戦」「ソーシャルメディア実践の書」、「IPv4アドレス枯渇対策とIPv6導入」がある。所有資格 米国PMI認定PMP、シニアモバイルコンサルタント等。