Blogosを超えるか?Yahoo!ニュースに「個人」カテゴリが登場。その狙いを聞いてみた。

 本日から月間55億PVを誇るYahoo!ニュースに「個人」カテゴリが創設された。オピニオンリーダが自らの知見と感性で情報を発信する。

 私もこのオーサの中に私も末席に加えて頂くことになった。ここでは「モバイル」を中心とした記事を選抜して投稿していきたいと考えている。また、「一顧客」という視点で、「消費者からすればこう見えているのでは無いか?」ということをメーカや業界に訴えかけていきたいという思いで「顧客視点アドバイザー」と名乗るようにした。
 

今回は、Yahoo!ニュースに、「個人」カテゴリ解説の狙いを聞いてみた。

■Q1 なぜ月間55億PVを誇るYahooニュースが個人にフォーカスしたニュースコーナを設けるのか?
 Blogosや、アゴラといった個人の意見に焦点を充てたメディアが人気を集めていることは事実です。また、ブログ形式により一般人参加型のメ ディアは運営側は良質なコンテンツを低コストで集めることが出来るというメリットも存在します。 しかし、ヤフーニュース程のPVと知名度があるメディアでは、これらマンメディアの追加によるPV増加は1%程度、誤差の範囲ではないかと思い ますが、どのような狙いがあるのでしょうか?

A1 ソーシャルメディア上でチャネルを開拓する必要があった。
 昨今の情報摂取行動では、消費者が「必要とする情報」が多様化し、「情報の信頼性」「情報の価値」についても、変化が表れてきたと考えています。

この変化に伴い、キュレーションと呼ばれる解体・再編型のメディア消費が存在感を増しており、消費者はTwitterやFacebookを起点にまとめページやニュース記事、ブログ記事にアクセスし、それを再びTwitterやFacebookに共有するといった行動が定着しつつあります。この中に、必ずしもYahoo!ニュースが介在していないケースが存在します。

こうした状況を受け、多様化するニーズに対応した特色ある多様なコンテンツをワンストップで提供することが、消費者の情報摂取サイクルにおいてYahoo!ニュースが魅力的な価値を提供し続けるために重要だと考えています。

なお、ほとんどの消費者は個人の記事だけが読みたいわけでもなく、個性ある主張だけを読みたいわけでもありません。また、キュレーション全盛時代に入り、カテゴリでパッケージしたメディア自体が、消費者の生活動線のなかに新たに組み入れられづらくなっていると考えています。

このため、私たちは個人に限定した新ブランドのパッケージメディアを創るのではなく、ニュースを消費する場として一定の評価、立場を確立しつつあるYahoo!ニュースの消費動線のなかに、個人のコンテンツを組み込みました。

これにより、検索を使いこなせない方、ソーシャルメディアになじめない方でも、「トピックス」やYahoo!ニュースの関連記事のなかで、個人の多様な発信に自然と触れていただけるという価値を提供いたします。

つまり、Yahoo!ニュース「個人」というコーナーは分類上は確かに設けますが、「個人にフォーカスしたニュースコーナー」を作ることが、今回の企画の趣旨ではありません。

もう一つ、情報発信者向けに提供する価値も重要だと考えています。個人の情報発信活動の持続可能性という観点においては、既存の枠組みや、ブログという仕組みだけでは十分といえない状況があると考えます。

IT系リテラシーが高い書き手の方であれば、ブログツールを選び、ドメインを取り、アフィリエイトや広告などマネタイズの道具を準備し、ソーシャルメディアを使って拡散するといった努力を惜しみませんが、すべての発信者がこうしたリテラシーを持っているわけではなく、広大なウェブ空間のなかの端っこでブログを立ち上げてゼロから集客することだけが、唯一の選択肢であってよいとは考えておりません。

また、消費者の情報摂取行動の変化が、メディア企業の事業基盤を揺るがしているという実態があり、見識ある多くの書き手が活躍の場を失っていく懸念も持っております。私たちは、個人の情報発信ビジネスを支える土台を用意することで、こうした社会的な課題の解決にも貢献していきたいと考えています。

■Q2 オーサの人選について
 人選にあたって、基準等はあったのでしょうか? ヤフーニュースというリーチ力のある媒体力を利用して、世論とかけ離れた思想の伝搬や、自説の発信など、リーチ力の私物化の恐れもあると思います。今回人選にあたって考慮された点はどのよう点でしょうか?

A2 実際の専門領域を生業として情報発信している個人を選抜
 専門領域への知見にもとづいて情報発信を主たる生業(またはそれに準じる活動)として継続的に行なっていると認められる方にお声がけしています。個々の内容や思想による選定は行なっていません。お声がけした順番については、弊社「トピックス」編集部が日頃継続的にウォッチしている発信者のリストをもとに順次お声がけしている形で、ここにも恣意性はなく、現在も継続的にご参加を呼びかけています。

■Q3 今後のオーサの追加予定は?
 今後の執筆人の増加について 執筆人が増加し記事の投稿が増えればそれに比例してPVは増加すると思います。一方で、ほぼ誰でも執筆可能な状態になればプレミアム感は薄れ記 事の質が低下する恐れもあります。今後の執筆人の増加ペース、初回30人に絞った背景などありましたらご教授下さい。

A3 順次追加する予定。1000人も視野に入れている
 初回ご参加いただけるのは50人程度となります。初回をある人数で意識的に切ろうとした意図はありません。なるべく多くの方に参加していただこうと考えていますが、現実的な着地として50人の方にご参加いただけることになりました。今後まず100人、次に150人、300人、500人、1000人と増やしていきたいと考えていますが、逆に「ほぼ誰でも執筆可能」という状態は目指しておりません。

■Q4 個人のコンテンツ配信プラットフォームになる可能性は?
 電子書籍元年と言われる一方で配信プラットフォームの決定版が登場していません。例えば掲載されているコンテンツが、PDFや E-Pub形式でダウンロード可能になり、それを有料コンテンツとして販売するといった構想も可能と思いますが、そういった配信プラットフォーム 化等は視野に入れられているのでしょうか?

A4 その方向性は目指していない
 今回、Yahoo!ニュース「個人」上でご発信されるコンテンツの著作権は書き手の方に属しますから、そのコンテンツをどのような形でどのようにビジネスをしていただくのも自由です。そのなかの一つとして、私どものYahoo!ブックストアが選択肢になるのであれば、そのお手伝いもさせていただければと考えます。ただ、上述の通り、消費者自身が「個人発信のコンテンツのみ」にフォーカスした摂取行動を行うとは考えておりませんので、「個人のコンテンツ配信プラットフォーム」というものを目指しているわけではありません。なお、記事自体に課金をする仕組みは今後提供いたします。

■Q5 競合となるサービスは?
 PVに応じて収入を得ることが出来るという点で、Naverまとめや、Cakesが該当するのではないかと思いますがいかがでしょうか?これら とは違う、全く別のサービスとして差別化出来るポイントは何があるでしょうか?

A5 特に競合は無い
 いくつかの切り口において類似といえるサービスはあると思いますが、特に差別化を意識しないといけない競合はないと考えております。

■Q6 一記事5000文字の文字制限の意図は?
 文字数制限について ウェブ媒体の特徴として文字数制限がないことが挙げられますが、一記事辺り5000文字という制限があります。単なるシステム上の制限なの か、何か他に意図があったのでしょうか? (例えばTwitterは140文字にしたことで、要点を絞った質の高い呟きが生まれているというメリットがあります)

A6 ページ送りを行わなくても快適読める限界
スマートフォンで閲覧する際に、ページめくりを行わない仕様となっております。これは地下鉄など通信環境が不十分な場所でのユーザーのストレスを避けるためですが、この際に消費者が画面のスクロールで読む際の適切な量が5000字程度だと考えました。

■Q7 過去記事へのフォーカスについて
 今回記事提供者には過去の記事を掲載しても構わないということでしたが、ニュースという媒体でありながら、過去の記事掲載でも良いというのは興 味深いと思いました。これには何か狙いがあるのでしょうか? (ウェブの記事の問題点の一つとして、どれ程質の高い記事でもコンテンツが即座に消費されるという側面があると思います。)

A7 特に狙いは無い。
 過去の記事が思わぬ形で広く参照されてページビューを創出することがありますから、書き手の方がYahoo!ニュースという場に何らか置いておく価値を感じるものであれば、それを制限するものではありません、という程度の意図です。

■「正しい情報へ辿り着けなくなった」読者へのYahoo!ニュースの対策
 この企画へのお誘いを頂いた時、PVに応じて著者への報酬があるという点で、「Naver まとめ」や有料コンテンツプラットフォーム「Cakes」を意識した個人のコンテンツ配信プラットフォームを作ろうとしているのかと考えていたが、そうではなく、Yahooニュースのそもそもの読者への「ニュースの改良」が目的であったことがわかった。

 「情報爆発時代」と言われて久しいが、ソーシャルメディアが普及するにつれ、検索エンジンで埋もれてしまった情報が、ソーシャルメディアによってより良い情報がピックアップしやすくなったと言われるようになった。しかし、実際の所は情報発生源が増えてしまい、検索エンジンやITリテラシーが高くないと「正しい情報」「価値ある情報」に辿り着けなくなってしまった。

 そういった消費者の状況を鑑み、Yahoo!ニュースに訪れた読者に「Yahoo!ニュース」の中だけで、マスメディアが発信する情報、ウェブで注目を集めている情報、オピニオンの発信する情報等を、ワンストップで提供する。ニュース媒体として、読者にITリテラシーを高めることを求めるのではなく、サービス提供者側で対策案のひとつを提示したと言えるだろう。

 「情報の質」を担保するために、実際の仕事に従事し専門性を持った人間を選抜し、PVに応じた報酬を発生させるということで、オーサには単なる認知獲得だけでは無い対価を提供している。

■本来は新聞社が見習うべきでは無いか
 ・ウェブ媒体でありながら1記事辺り5000文字という字数制限を設け、狙いは「ページ送りなどの煩わしい操作を読者におこなわせないため」
 ・情報が氾濫しニュースを探せなくなった読者にワンストップサービスを提供したかった
本来はニュースの専門誌である「新聞」がYahoo!のような試みを実施すべきでは無いかと感じた。今回のYahoo!ニュースの試みによって、旧来のマスメディアも「読書」のための改革が進むことを期待したい。



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プロフィール

大元隆志(おおもと たかし) 通信事業者のインフラ設計、提案、企画を12年経験。異なるレイヤーの経験を活かし、技術者、経営層、 顧客の三つの包括的な視点で経営とITを融合するITビジネスアナリスト。業界動向、競合分析を得意とする。Yahoo!ニュース講談社 現代ビジネスCNET翔泳社EntepriseZineITmedia マーケティングITイニシアティブ、等、様々なIT系メディアで活躍する。SNSビジネス特集でNHK教育テレビに出演。ソーシャルメディア系イベントしては国内最大級となるソーシャルカンファレンス主催者。著書に「ビッグデータ・アナリティクス時代の日本企業の挑戦」「ソーシャルメディア実践の書」、「IPv4アドレス枯渇対策とIPv6導入」がある。所有資格 米国PMI認定PMP、シニアモバイルコンサルタント等。