ソーシャルメディアは正直か?

 Twitterが日本でブームになった2010年、「マスメディアの情報は作られた情報で信用出来ない、これからは人が情報ソースになる」。マスメディアに対する不信感からか、人そのものが情報を発信することに「真実の情報」がそこから発信されると、多くの人が期待した。

 ブームから三年近くが経過し、振り返ってみるとソーシャルメディアとは当時期待されたような「真実の情報」が飛び交うメディアに成長したのだろうか?私にはむしろ「嘘の情報」が飛び交っているように見える。

■SPAのルームシェアと、ソーシャルメディアのルームシェアの違い
 先週のSPAはルームシェアの特集だった。ソーシャルメディアの「情報共有」文化が連想させるのか、これからはシェアの時代というキーワードのもとに、いつしかルームシェアやシェアハウスが人気を集めるようになってきた。ソーシャルメディアで語られているルームシェアは意識の高い人が集まり、皆が夢を持ち、お洒落な空間で、イケテル仲間と暮らす空間。そんなイメージを抱き、ルームシェアに憧れている人も居るのではないだろうか。

 しかし、SPAのルームシェア特集は同居人の窃盗や喧嘩、家賃踏み倒したりと、安さを求めてだらしない人が集まってくるから問題も多いという論調だった。多少盛っている点はあるだろうが、この記事を見てふと感じたことは、自分が見聞きするルームシェアの現状と同じだということだった。

 それにも関わらず、ソーシャルメディア上ではルームシェアは「イケテル」暮らし方として扱われている。

 このルームシェアの件だけでなく、ソーシャルメディアの中では、大学は辞めても良い、会社なんて辞めて好きなことをして生きれば良い、ソーシャルメディアがあれば営業しなくて良い、そんな論調が人気を集めるが、現実の世界で耳にする会話はどれもソーシャルメディアで賞賛される意見とは反対のことばかりだ。

 不景気で不安定な社会では、自由よりむしろ会社での安定を望む。目的があり大学や会社を辞めるのは良いが、自由を求めて辞めることは、逆に自由を失うことになるだろう。繁盛してる店ならむしろソーシャルメディアで呟かなくても客は来る、リピータが居ない店ほどせっせと呟く。

 何故、これほどまでにリアルとソーシャルメディア上のオピニオン達の意見は異なるのだろうか?

■個人広告の溢れるソーシャルメディア
 答えは簡単だ。ソーシャルメディアで何かのオピニオンリーダになるために日々情報発信している人は大抵「何かを売りたい」からだ。

 ルームシェアをことさら持ち上げる人の大半は、それをビジネスにしている。ルームシェアだけではない、ソーシャルメディア集客にしろ、ノマドにしろ、声高に叫び続ける人は、それを商売としていることが多い。だからこそ叫び続けるし、それが彼らにとって最もコストの低い広告だからだ。しかし、例えそれが本人にとっては広告であっても、毎日叫び続けるのがその人は目立つ。ニッチなジャンルであれば発信しつづめことで簡単にオピニオンリーダとなることが出来る。

 あるスタートアップの会合ではこんなことを伝えていた「新しいジャンルの専門家であるふりをしろ。ノウハウなんてなくたっていい新しい技術やキーワードが登場したらプレスを出しまくれ。メディアも新しいジャンルなら本当がどうかわからないから、ひっかかる所はひっかかる。ブログやソーシャルメディアでもそれっぽく書いておけば簡単に専門家と思わせることが出来る」と。流石に一年程前の話なので今でもこんなことをスタートアップとしてメディアに取り上げられるノウハウとして説明しつづけているかわからないが、成功した事例もあるのだろう。

 こうして、ソーシャルメディアには「商売」にしている人がオピニオンリーダとなり、ポジショントークと建前で溢れかえる。素朴な感想を述べる一般人の感想は大勢の呟きの中に埋もれていく。これが2010年に思い描いたソーシャルメディアの理想の姿だっただろうか。一時期のソーシャル礼賛の時期は乗り越え、全てが性善説で語られていた論調は落ち着きを見せている。今なら、当時描いた幻想と現実を冷静に振り返ることが出来るだろう。この若いメディアが有用な物として今後も利用されるか、単なる暇つぶしの道具として認知されるか、今が岐路なのではないだろうか。



この記事のタグ:


関連する記事

  • FBで人に言えない「内緒のコミュニティ」に入るのは気をつけよう

  • 市場原理に従い質低下が危ぶまれる東洋経済オンライン

  • 2013年版 絆の種類

  • ソーシャルCRMでコールセンタのコスト削減

  • ソーシャルメディアが晩婚化を助長する?

  • 「SNSで目立ちたい症候群」に企業はどう対処すべきか

  • イノベーションを生み出すスマートオフィス

  • 差が付きはじめた携帯三社のソーシャル評判

  • クリエイターになるということ

  • 週刊誌を超える発信力を個人に与えるヤフーニュース個人


  • プロフィール

    大元隆志(おおもと たかし) 通信事業者のインフラ設計、提案、企画を12年経験。異なるレイヤーの経験を活かし、技術者、経営層、 顧客の三つの包括的な視点で経営とITを融合するITビジネスアナリスト。業界動向、競合分析を得意とする。Yahoo!ニュース講談社 現代ビジネスCNET翔泳社EntepriseZineITmedia マーケティングITイニシアティブ、等、様々なIT系メディアで活躍する。SNSビジネス特集でNHK教育テレビに出演。ソーシャルメディア系イベントしては国内最大級となるソーシャルカンファレンス主催者。著書に「ビッグデータ・アナリティクス時代の日本企業の挑戦」「ソーシャルメディア実践の書」、「IPv4アドレス枯渇対策とIPv6導入」がある。所有資格 米国PMI認定PMP、シニアモバイルコンサルタント等。