アップル、エリクソンに対する交渉力強化を狙うソフトバンク

 12日のソフトバンクの株終値は2395円、前日比-16.87%の大暴落を記録した。株価原因の要因は昨日のスプリント買収報道によるものだ。

 投資家から見れば当然の行為。2006年のボーダフォン買収により一時は2兆円を越える有利子負債がようやく8千億程度になり全額返済の目処が見え経営が安定すると見ていた所に、当時を彷彿とさせる巨額の買収劇。しかも、米国は既に携帯電話市場が飽和しており、スプリント、メトロPCSを買収に成功した所でAT&T、ベライゾンの二強の状態に変わりない。

 日米合わせて9000万人のプラットフォームでコンテンツ配信と言ってみても、利用者からすればインターネット上のコンテンツはキャリア関係なく利用出来る。多少のリップサービスにはなるだろうが確実な収益源に結びつくかは水物だ。

 何らかの勝算はあるのだろうが、ソフトバンクからの戦略が発表されていない現時点では「博打」にしか見えない。

■バイイングパワー向上による交渉力の強化
 実は今回の買収によってもたらされる確実なメリットが一つある。表向きには見えないが、スプリントを買収することで、ソフトバンクはアップルとエリクソンに対して最大の事業者となる。

 端末調達コストと、基地局調達コスト、運用コストの削減に繋がり、CAPEX/OPEXの削減に繋がる。

 ボーダフォン買収時には低価格戦略を掲げ自社間の通話を無料にし加入者を獲得する一方で、他キャリアへの通話料を値上げすることで音声ARPU獲得という三番手だからこそ出来る秘策を見せたソフトバンク。

 今回は利益の捻出先を、巨額の利益を計上するアップルから調達する狙いがあるのかもしれない。

 巨大な博打のようで、勝算が無ければ勝負には出ない孫正義氏のことだから、恐らくは強気な買収戦略の裏には、利益を捻出する自信があるのだろう。

■LTEがもたらすグローバル規模での通信業界再編
 昨年AT&TがTモバイル買収を検討していた時も、主な狙いはLTE拡大用の周波数確保にあったが、バイイングパワーの強化の狙いもあった。

 LTEの時代に入り今まで無線規格の違いにより異なっていた各キャリアの設備は標準化される動きがある。実の所グローバルで見れば通信事業者が複数の国にまたがってサービスを展開するのは珍しいことでは無い。ソフトバンクが以前買収したボーダフォンも複数の国にインフラを提供する国際キャリアだ。
 前述した通り、先進国では携帯電話事業はスマートフォンへの乗り換え需要はあるものの基本的に飽和状態にあり、自国の国民だけを対象としていたのではトップラインの拡大は難しい。トップラインの拡大は他国に期待し、バイイングパワーを強化し利益の捻出を追求する。LTEによる設備の標準化と、iPhone、Galaxyという人気端末によって、キャリアのビジネスが新たなフェーズへ移行しようとしている。

 各国で1位と2位が利益を上げていた時代は終わり、世界で1位と2位のみが生き残るそんな争いの幕があけようとしている。

 今後もスケールメリットを狙った事業者の再編成が続くのではないだろうか。



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  • プロフィール

    大元隆志(おおもと たかし) 通信事業者のインフラ設計、提案、企画を12年経験。異なるレイヤーの経験を活かし、技術者、経営層、 顧客の三つの包括的な視点で経営とITを融合するITビジネスアナリスト。業界動向、競合分析を得意とする。Yahoo!ニュース講談社 現代ビジネスCNET翔泳社EntepriseZineITmedia マーケティングITイニシアティブ、等、様々なIT系メディアで活躍する。SNSビジネス特集でNHK教育テレビに出演。ソーシャルメディア系イベントしては国内最大級となるソーシャルカンファレンス主催者。著書に「ビッグデータ・アナリティクス時代の日本企業の挑戦」「ソーシャルメディア実践の書」、「IPv4アドレス枯渇対策とIPv6導入」がある。所有資格 米国PMI認定PMP、シニアモバイルコンサルタント等。