優秀で面白くて成功している人が持っている、諦めない強さ

イケダハヤト君の「優秀で面白い人ほど会社を辞めていく3つの理由」によると、今の若い世代の人たちは、この三つの理由で会社を辞めるという。

  ・時間と場所に縛られたくないと考えるから辞める
  ・会社に勤めると「言えないこと」が増えるが、それに耐えられないから辞める
  ・会社のビジョンに共感できない、仕事の意義を実感できないから辞める

もし、これらに共感する若者達が、世の中で右肩下がりの業界に就職していたとしたら。例えば日本の家電業界はまさにそうかもしれない。テレビを作ればアジアの格安メーカに負け、それ以外の家電に目を向けても、デジカメや電子書籍、電子辞書、手のひらで解決するデジタル家電はどんどんスマートデバイスに置き換えられていく。

沈み行く泥船からは仕事の意義を感じることが出来ず、もっと良い船を探し出して脱出する。確かにその考えには一理ある。私もそういう立場になれば、同じ行動に出るかもしれない。

特に、上記の考えに否定も肯定もしない。この会社はもうだめだと思ってしまったのなら、脱出するのが利口な生き方だとは思う。が、沈み行く泥舟から逃げ出さず、奇跡の復活を遂げた「サラリーマン」の話を紹介したい。

■デザインの力で新聞を救った男
「世の中のニュースを伝える」ことを目的として400年以上の歴史を持つ「新聞」。活字を中心として、ニュースを伝えるという特徴ゆえに同一の地域であれば、それほど特色が出ない媒体だ。そのせいか「ニュースを伝える」という役割はインターネットへとシフトし、世界中で新聞の売上は右肩下がりを続けている。

そんな先行きの見えない「新聞業界」で「デザインが新聞を救う」と主張し、見事購読数を100%増加させた男が居る。ポーランドを代表するデザイナー ジャチェック・ウツコ氏だ。ジャチェック・ウツコ氏のTEDでのプレゼンを紹介しよう。
 ※TEDのジャチェック・ウツコ氏の講演ビデオ

新聞を救うすべき手段はあるか?様々な意見があるでしょう。
ある人は言います。「無料であるべきだ」と。そして、もっともっと色んな意見があるでしょう。
 - タブロイド版かもっと小さいA4サイズがいい
 - コミュニティ毎に発行する地方紙がよい
 - 小さなビジネスなどニッチを狙うべき
 - 新聞は意見主体であるべきだ
 - ニュースは少なく、見解を多く
 - 出来れば朝食の時に読みたい

それぞれに良い所はあるでしょう。しかし、このどれも時間稼ぎに過ぎません。長い目で見たときに、「今の新聞」である限り、生き残る意味は無いと思うからです。

そこで、私達に一体何が出来るでしょうか?

私は新聞のアートディレクターです。
ある日、祖母にこう聞かれました。
 「お前は何で生計を立ててるんだい?」
 「新聞のデザインだよ」
 「新聞なんてデザインする所なんて無いじゃない、あるのはつまらない活字だけ」
 ”あるのはつまらない活字だけ”その言葉を聞いて、私は笑うしか無かった。彼女は正しかった。来る日も、来る日も退屈なレイアウトの上に、決められた文字を並べている。私は常にフラストレーションを貯めていました。

そんな時、私はシルクドソレイユのパフォーマンスに出会いました。そのショーを見た時、私はかつてない衝撃を受けました。「こいつらは、サーカスみたいなくだらない”見世物”を”最高のパフォーマンスアート”に仕立て上げてる」と。

そこで、私は思いました。「つまらない活字だけの新聞でも同じ事が出来るかもしれない」

そして、私はすぐさま実行にとりかかりました。一つ一つデザインをやり直したのです。そう、あのつまらない活字だけらけの新聞をアートにするために。

私たちは一面を特徴づけるようにしました。チームワークや共同作業なんて言うつもりはありません。私の考えはとても利己的でした。私はアーティストとして主張したかった。
そう、私が作りたかったのは新聞ではなく、ポスターでした。

雑誌でも無い、写真でも無い、ポスターです。私は字や写真にもとても気を配りました。
そして、幸運なことに、それらはすぐに結果をもたらしました。ポーランドでは私達の作品は「Cover of The Year」に3年連続選ばれました。

でも、私達の本当の秘密は、新聞全体を作品として扱っていた事にあります。そう、ポスターは一面だけでは無かったのです。新聞全体をまるで楽曲のようにデザインしたんです。

音楽にはリズムがあります。そして、紙面にもリズムがあるのです。デザイナーはデザインで、これを読書に体感させる責任があるのです。読書はページをめくりながら、様々なリズムを感じる。私はその体験に責任を持っているんです。

我々は見開き2ページを1つのページとして捉えました。何故なら読書はそう感じるからです。

そして、私達の新聞はニュースデザイン協会から「世界一素晴らしいデザインの新聞」と謳われるようになりました。

その後、新聞の発行部数はどんどん増えました。
 - ロシアでは一年後に11%増、更に三年後には29%増
 - ポーランドも同様、最初の一年で13%、三年後には35%増
 - 最も凄かったのはブルガリアで100%増加した。

   

何年も停滞を続けた新聞は、デザインを変更した後で発行部数はグングン上昇するようになりました。

しかし、紙面のデザインだけがこれを成し遂げたのではありません。紙面のデザインはプロセスの一環に過ぎません。我々のデザインは、外見を変えるだけでなく、新聞という商品そのものを改良する事でした。私は建築における機能と形式の鉄則を新聞の内容とデザインに応用しました。更にその上に戦略を載せました。

そして私は気づきました。デザイナーは新たな役割としてプロセスの最初から最後までに関わらなければならないんだと。

これらから得た私の一つ目の教訓は、
 デザインとは商品を変えるだけでなく
  ワークフローも変えられる
  会社の全てを変えるられる
  会社をひっくり返す事が出来る
  あなた自身も変えてしまえる
 
 誰のせいかって?そう、「デザイナー」です。
 だから、もっとデザイナーに権限を与えて下さい。

でも、二つ目の教訓はもっと重要です。
私のように貧しい国に住み、小さな会社のつまらない部署で働きながら、予算も何も無い所でも、それでも「自分の仕事を最高レベル」に持って行くことが出来ます。

誰でも出来るんです。

必要なのは、閃きと、ビジョンと、決断力だけです。
そして、「ただ良い」ということ、だけでは足りないんだと覚えておくことだけなのです。

ご清聴ありがとうございました。

■諦めない強さ
サラリーマンとして働いていると、会社を辞めたくなる時は誰にだって訪れる。私だって一度や二度では無く、毎月一度位は「自由になりたい」という衝動に駆られる時がある。

そして、何か上手く行かない時に限って、どうしても会社や部署が悪いであったり、予算が無いから、、、とつい口に出してしまうことがある。そんな時、私はいつもこのジャチェック・ウツコの話を思い出す。

 - 常に自分自身が「閃きと、ビジョンと、正しい決断力を持っている事」、これは誰のせいでも無く、自分自身の事だという事。
 - どんなに酷い環境であったとしても、自分の仕事に誇りを持ち続ける事。
 - 「ただ良い」だけでは自己満足であることを知ること。
 - 何かをするためには、戦略があり、誰のために、何のためにするかが企業の方向性と一致していなければ単なる自己満足だという事。

私はサラリーマンで居る事も、独立を勧めるわけでもない。ただ、ふと立ち止まって考えてみて欲しいと思う。言論の自由とはクライアントの意思を尊重しているのだろうか?会社のビジョンに共感出来なくても、自分の中にビジョンがあり、そのビジョンの実現のために今の会社の中で出来ることもあるのではないだろうか。

会社で裁量がないことを会社のせいにして、自分を磨く努力を怠っていないだろうか?
会社がベストを尽くしてくれないと嘆くなら、自分は常にベストな状態でパフォーマンスを発揮していただろうか?
と胸に問いかける。

そんな時、いつも思うことがある「まだ、ここでやれることがあるはずだ」と。

優秀で頭が良くて「成功」している人は、諦めない強さを持っていると、私は思う。



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  • プロフィール

    大元隆志(おおもと たかし) 通信事業者のインフラ設計、提案、企画を12年経験。異なるレイヤーの経験を活かし、技術者、経営層、 顧客の三つの包括的な視点で経営とITを融合するITビジネスアナリスト。業界動向、競合分析を得意とする。Yahoo!ニュース講談社 現代ビジネスCNET翔泳社EntepriseZineITmedia マーケティングITイニシアティブ、等、様々なIT系メディアで活躍する。SNSビジネス特集でNHK教育テレビに出演。ソーシャルメディア系イベントしては国内最大級となるソーシャルカンファレンス主催者。著書に「ビッグデータ・アナリティクス時代の日本企業の挑戦」「ソーシャルメディア実践の書」、「IPv4アドレス枯渇対策とIPv6導入」がある。所有資格 米国PMI認定PMP、シニアモバイルコンサルタント等。