東北関東大震災で活躍するエンジニア達。あるソフトバンクモバイル社員の基地局復旧の状況と、被災地に笑顔が戻った日。

今回の震災では多大な被害が報告されていますが、通信事業者とて例外ではありません。ソフトバンクモバイルで働くエンジニアの方が、震災によって被害を受けた携帯電話の基地局被害復興の緊迫した現状を寄稿して下さいました。

—-以下寄稿文—
基地局を復旧させるために必要なもの=今必要なものは何か?それはエネルギーと伝送路です。破損や津波で根こそぎもっていかれたものは無理ですが、伝送路(局~センターを繋ぐファイバ)が切れているもの、電気が通れば復旧する基地局も多くあり、避難所を最優先で復旧させていきます。

取り方によっては不安を招くため詳細伏せますが、伝送路は出来る限り復旧させます。が、問題はエネルギーです。とにかく発電機を動かすガソリンがないです。明かりや熱を取るためガソリンの需要は凄まじく高いです。伝送路をつなぎ、電波を出すにはエネルギーが必要ですが燃料確保が難題です。

東京にはガソリンがまだありますが現地に運ぶのは困難を極めます。別のライフラインのためにタンクローリーなどはほぼ抑えられており、考えうる限りのコネクションで運ぶため、ガソリンをかき集め車をかき集め、本社も対策チームが全力で動いています。僅かずつですが燃料を送っています。

毎日現地ネットワークセンター(通信拠点)とHQで会議を聞いています。今日は会議中に現地で地震が発生し、即時対応のため現地が会議を抜け、対応に走りました。

現地では風呂にも入れず、食事は一日にバナナ一本以下。それでも彼らは、助けを待ち望んでいる人を助けなくてはなりません。信じられない程の精神力でネットワークを守っている、そんな彼らの環境改善を一刻も早く行うべく、本社では生活水や食料を運ぶためこちらも全力で手配をしています。

物資の手配、生活用品の手配、会社はすべてのプライオリティをネットワークセンターの皆に集中させます。そんな彼らに役員から「欲しい物があれば何でも言ってくれ!」と励ましの言葉がかけられました。その言葉に現場で働くエンジニアからウェットティッシュが求められました。「すぐに毎日風呂入れるようにしてやるからな!」センターとの通信を終わる時に彼がかけた言葉です。

一度に大量の物資が送れない中で、せっかく送った機材が使えないというのは最悪です。悠長な作業に思えても、設計と技術検証は絶対に手を抜きません。今回技術部隊はわずか一日で設計、検証を終わらせました。これは通常考えられないほどの速さです。

交通網が復旧していない中で、リソースをただ送るだけでは全くダメで、誰が何をそれぞれすべきかを定義し、最速で最高効率で動くようにすることが極めて重要です。現地はもちろん、本社も未曾有の事態に混乱しています。最速で判断・決定するための情報の整理と統制、これはバックオフィス業務ですが、私が手伝っている仕事です。

復電で自動的に復旧したものもありますが、昨日1日で新たに300局を回復しています。通信が復旧し、自分の無事を伝える、家族の無事を聞く、これだけで人は絶望的な状況から立ち上がります。バッテリーと基地局が届いた避難所で、約700人が通話をした日、人々に笑顔が戻り、そして前向きな言葉を口に出し始めたそうです。

僕はこれから最も伸びるし面白そうだし「携帯イカスし~」という理由でソフトバンクに入りましたが、"通信"そのものの力と大切さ、NWを守り維持する人の使命感と素晴らしさをこの震災で目の当たりにしました。『通信を復旧させる』、このために掛け値なしに全てのリソースが尽くされています。なう。
—-寄稿文終了—
私自信、SIerとして通信業界のインフラ構築に10年近く携わってきました。私達インフラに関係するエンジニアは普段皆さんの目の前に出る事は無く、華やかとは言いがたい職業です。重要なシステムだと頭では理解しつつも、お客様の顔が見えないと「自分の仕事は誰かの役に立っているんだろうか?」と悩んだ時もあります。

そんな決して外からは見えない自分達の仕事ですが、今回被災された方々に勇気を与え、笑顔を取り戻す事が出来た。自分にとっても、この寄稿は、自分達の仕事に誇りを感じ勇気づけられるものでした。

こういった被災地の復興にあたっている方々は、今回寄稿頂いたソフトバンクモバイルの方以外にも、たくさんいらっしゃることでしょう。離れた所からですが、皆さんの頑張りとご活躍のお陰で、日を追う毎に被災地に「笑顔」が戻っていっているのだと思います。

今の私には「頑張って下さい」としか申し上げることしか出来ませんが、これは国民全ての思いであると思います。皆さんの震災を恐れない勇気と、卓越した技術が多くの人々の笑顔に繋がっていると思います。連日の作業で疲労はピークに達していると思いますが、どうか宜しくお願い致します。

皆さんがゆっくりとお風呂に入れる日が一日でも早く訪れる事を、陰ながらお祈り致します。



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    大元隆志(おおもと たかし) 通信事業者のインフラ設計、提案、企画を12年経験。異なるレイヤーの経験を活かし、技術者、経営層、 顧客の三つの包括的な視点で経営とITを融合するITビジネスアナリスト。業界動向、競合分析を得意とする。Yahoo!ニュース講談社 現代ビジネスCNET翔泳社EntepriseZineITmedia マーケティングITイニシアティブ、等、様々なIT系メディアで活躍する。SNSビジネス特集でNHK教育テレビに出演。ソーシャルメディア系イベントしては国内最大級となるソーシャルカンファレンス主催者。著書に「ビッグデータ・アナリティクス時代の日本企業の挑戦」「ソーシャルメディア実践の書」、「IPv4アドレス枯渇対策とIPv6導入」がある。所有資格 米国PMI認定PMP、シニアモバイルコンサルタント等。