Kindle3購入。使ってみて分かったiPadとの違い。 - Kindle3 First Impression -

8月28日に注文していた、Amazon最新の電子書籍リーダ Kindle3が本日ようやく到着しました。
Kindle3を手にして感じた、新鮮な気持ちを皆様とシェアするために、利用して5時間程ですが、レビューしたいと思います。

■Kindle3購入の動機
まず、私がKindle3を購入しようとした動機を紹介します。

 Point1 英語学習と総務省報告書を読むためにPDFを読むのに適した装置を探していた
 Point2 日本語表示がデフォルトで可能になった
 Point3 iPadと比較して以下の点で優れていると感じた
      本体価格 購入プランに応じて、4~6万円するiPadに比べて、Kindleは最安値が$139。
      通信費 iPadはWiFiタイプでもソフトバンクのWiFi-AP使用料が月々必要
      重量   約700グラム近くあるiPadに比べて、Kindleは241グラム。
 Point4 円高が背中を押した
 Point5 パソコン扱いされるiPadと違い、単なる電子書籍であるKindleは会社へ持って行ける。

タイミング的な物もありましたが、ウェブを見たり、音楽を聞いたりという事は特に求めておらず、PCで見ていたPDFのファイルを寝転びながら見たり、外出先で見たりするための「PDFビューア」が欲しかったので、iPadでは無く、携帯性、価格の優れていたKindleを選択しました。

また、私の会社はセキュリテイに厳しく個人所有のパソコンを持ち込む事は出来ません。iPadはパソコンと判断されるため持参する事は出来ませんでしたが、Kindleなら持ち込めるという理由も大きな理由でした。

Kindle3には、WiFi版と3G版が存在します。3G版はAmazonが通信料を負担してくれるためウェブサーフィンをしても通信量は発生しません。その分本体価格が高くなるのですが、外出先等でKindle3でウェブサーフィンする事もそれほど無いかなと思いましたので、私はWiFi版を購入しました。(結果としてこの判断は正しかったと思います、理由は後述します)

■誰もが驚く電子インクの美しさ
Kindleが届いて、一番最初に皆さんが驚く事は、箱を空けてKindleのディスプレイに表示されている文字でしょう。私はてっきり、液晶の保護フイルムが張られていてそこに文字が書かれているのかと思いました。

文字の滑らかさ、そこから不思議と感じる立体感と質感、明るさ、パソコンの画面を見慣れた人間には、どうみたって、「紙に書かれた文字」にしか見えません。

この感動は、恐らく、実物を見た人間にしか伝わらないでしょう。何故なら、パソコンの画面を通してしまえば、それは「パソコンで見る文字」になってしまうからです。この文字の美しさは是非、一度ご自分の目でご覧になって頂きたいと思います。

■使用してみた満足感
その電子インクの美しさに興奮しながら、当初から予定していたPDFファイルをKindleで表示させてみる事にしました。まるで紙の書籍を読んでいるような経験を得られるんだろうか?と、胸をワクワクさせて作業に取り掛かりました。

KindleでPDFファイルを見るために特別な作業は必要ありません。
 1) Kindleに付属しているUSBケーブルでPCのUSBポートと接続する
 2) KindleがUSBストレージとして認識されるので、Documentフォルダにドラッグ&ドロップする
    ※PCにドライバのInstall等は不要でした。
 3) 作業が終了したら、USBケーブルを外す
    ※USBケーブルでPCと接続中は、Kindleを操作する事は出来ません。

簡単な手順で、PDFファイルを移動し終えて、さぁKindle電源投入です。

結果は、、、結構残念な結果でした。

 KindleのPDF表示の残念な所
  1) 文字が小さい。単項表示のPDFなら問題無し。複数ページを1ページで表現しているPDFファイルは読みづらい。自炊派には読みづらいかもしれません。文字が潰れてしまっているため、せっかくの電子インクの良さを感じる事が出来ません。

     ※画面レイアウトを横向きに変更する事で若干文字の視認性は改善されます。

  2) 文字の拡大が柔軟性が無い。
     文字が小さくても、iPhone等のようにスムーズに拡大縮小出来れば、不満は無いと思いますが、Kindleはそうはいきません。
     メニューを開いて、150%、200%、300%の単位で拡大幅を選択する必要があります。気持ち的には120%位拡大してほしいのですが、そんな微調整が出来ず、微妙に画面からはみだしてしまったりと、使い勝手が良く有りません。

  3) フルスクリーン表示が出来ない
     画面一杯に表示してくれれば、それだけで視認性は向上すると思われますが、ページ数の表示等に割かれていて、縦横それぞれ1cmずつ程度の余白部分があります。将来PDFのフルスクリーン表示が可能になれば、かなり視認性は向上しそうです。

  4) レスポンスが遅い
     Kindleのレスポンスの遅さは有名ですが、先代より早くなったとはいえ、何かの処理をする度に独特の「間」があります。本を集中して読める状態であれば、ページをめくるのにストレスは感じませんが、文字の拡大縮小や、スクロール等を実行すると、これは結構ストレスの原因になります。

電子インクは綺麗なんですが、PDFはあくまでもオマケの機能であり、「快適」という状態で使える物では無いという結果に至りました。
但し、快適では無いものの、「ビューア」としての役割は果たしてくれます。通信機能をオンにしてても10日間持つバッテリーと、携帯性を考えると、「実用的」である事に間違いはありません。また、将来的にファームウェアのバージョンアップ等でフルスクリーン対応になる、拡大縮小が1%単位で任意に選択出来るという、ちょっとした改善で大きく視認性は向上出来ると考えられるので、それまでの我慢とも言えそうです。

むしろ、一番初めの電子インクの美しさが衝撃的だったので、あれが無かったら、それほどがっかりする事は無かったかもしれません。

■ウェブブラウザとしてのKindle
Kindle3では、標準でウェブブラウザが搭載されているので、ウェブサーフィンが行えます。この機能があるために、3G版を購入している方も居るのでは無いでしょうか?

Amazon、Google、TwitterやFacebook、等がデフォルトでブックマークされているので、通信環境さえあればすぐウェブサーフィンが行えます。

しかし、結論から言うと、「ウェブブラウザはおもちゃ」です。私の感想は以下の通り。

 1) 画面表示が遅い。
   私はWiFi版ですが重いです。Googleを開いて文字入力可能になるまでに2~3秒程かかります。

 2) フリーズする
   私だけかもしれませんが、Facebook等の複雑な処理を行っているページを開くと、フリーズします。

 3) 文字入力が大変
   日本語は入力出来ません。英語で入力するためにも、Kindleのキーボードは英字しか表記がありません。記号、数字を入力するためには、特殊キーをおして、記号用画面から入力する必要があります。英語圏の人でも、この入力方法でKindleでウェブサーフィンしようと思う人は少ないのでは無いかと思います。

 4) フレームを多様しているページが表示出来ない
    2chなら文字中心だし、快適かな?と思って、2chを表示しようとしましたが、Multipil Windowには対応していないという事で、閲覧する事が出来ませんでした。

という状態ですので、Kindle3のレビューで、「日本語のページの表示もOK」と紹介しているようなページも見かけますが、あくまでも表示がOKなだけであって、とても快適とは言えません。快適どころか実用的とも言えないレベル。Twitterなんて携帯電話から見る方が数倍快適なので、Kindleで呟くなんて拷問でしかありません。

良く考えてみれば、私の購入したWiFi版は$139。携帯電話やスマートフォンでも4~5万円は当たり前の時代。たった一万円の機械にそれらの製品と同様の操作感を求めるのは、そもそも間違いかもしれませんね。

外出先でKindle Storeから購入するために3G版という方なら、問題ありませんが、ウェブサーフィン目当てで、Kindle3の3G版を購入しようと考えている方は、再考をお勧めします。

■こんな人にKindleはお勧め
結構辛口なレビューとなってしまいましたが、では、購入して不満か?と言われればそうではありません。冒頭であげた、「Kindle購入の動機」については、満たせていますし、実用的なレベルです。

むしろ、購入前に想定していなかった用途として、ウェブ上のRSS等を登録しておけば、WiFi経由で自動的にKindleにダウンロードされ、それをオフライン状態でも閲覧出来ますから、簡易電子新聞がわりに利用出来そうです。これは、嬉しいサプライズでした。

 Kindle3で幸せになれる人
  1) Kindle Storeで販売されている本を読みたい
     紙の本より何割かは安く買えます。しかも、欲しいと思った瞬間に、手元に届くのはちょっとしたカルチャーショックです。但し、難点は大半が英語である事です。

  2) 小説のようなじっくり読む、本を読むのが好き
     長時間読んでても目が疲れませんし、軽いのでどこにでも持っていけます。この用途の人にとっては、まさに最適なデバイス。

  3) 安くて実用的なドキュメントビューアを探していた
     私はこれに該当します。少し見づらい部分はありますが、充電を気にせず、重さも気にせず、どこでもPDFを閲覧出来るのは便利です。この機能のためだけに三万円は出せませんが、$139+円高を考慮すれば、十分満足の行く製品です。

■iPadとKindleは全く別物
良く電子書籍を引き合いに出して、KindleはiPadと比較されますが、実際に両方を自分で触ってみた感想からすると、この二つを比較するなんてナンセンスだと言う事がわかりました。

そもそも、この二つの製品が解決しようとした課題が異なるという事に気付きます。

 ・紙の本の課題を解決するために開発されたKindle
  紙の本の課題とは何でしょうか?私が思う紙の本の課題とは以下の通りです。
   ・一冊が重い
   ・複数の本を持ち運びたくてもカバンの中に入りきらない
   ・一冊の価格が高い
   ・購入するには、本屋に足を運ばなくてはならない
   ・URL等が埋め込まれていても、アクセスできない。

  上記にあげた課題をKindleは全て解決しています。勿論、紙の本の以下のような良い所も受け継いでいます。
   ・パソコンの画面とは異なり、長時間見ていても目が疲れない
   ・文字が読みやすい

  Kindleは「紙の書籍」の進化系と呼べるでしょう。

 ・パソコンの課題を解決されるために開発されたiPad
  従来のパソコンの課題
   ・起動に時間がかかる
   ・配線等が必要で、買ってすぐに利用出来る状態になっていない
   ・マウスやキーボード等を利用した操作が複雑
   ・自由にアプリケーションが選択出来る一方で、ウィルスが蔓延
   ・重くて、バッテリーの持ちが悪いため携帯性が悪い

  iPadは上記の古くから続いてきたパソコンの課題を見事に解決し、パソコンを利用していた層は勿論、今までパソコンを利用していなかった人にも、受け入れられて大ヒットしているのでは無いでしょうか。

   iPadは「パソコン」の進化系と呼べるでしょう。

全く思想も、製品の作りも違う二つの製品。案外、比較されて一番困惑しているのは、メーカ自身では無いでしょうか。

■iPadがあればKindleは不要か?
現時点では、私はそう思いません。価格と重量と、Kindleは目に優しいというのが大きな理由です。

将来的にiPadが2万円代になり、重量もKindleの倍程度になれば話は別ですが、今は価格的にも四倍近い差がありますから「Kindleで十分」という人も多いのでは無いでしょうか。

「じっくり読書したい」と考える人には、私はKindleが現時点ではベストだと思います。iPadとの価格差を考慮すれば、その価格差で何冊本が買えるかという事を考えた方が良いでしょう。

■Kindleに感じた、「物作り」とは
一度使ってみると、わかりますが、KindleのUIは本当に貧弱です。画面表示やキー入力のレスポンスの遅さにイライラします。恐らく、このレベルの製品は、日本のメーカからは登場しないような気がします。

では、それが駄目なのか?と言われると、そうでは無いと思います。実際、このKindle3は注文してから2~3週間待た無いと手に入らない大ヒット商品です。世界的にヒットしています。

こんな貧弱なUIで、何故ここまで売れたのでしょうか?色んな要素があると思いますが、私が感じたのは、「製品に何が求められているかを追求して、求められている部分を伸ばして、そうで無い部分は、思い切って妥協した」という物作りの姿勢では無いかと思います。

「紙の本の進化系のKindle3に求められていた事」とは、文字の視認性と、バッテリーと、携帯性と、手頃な価格でしょう。コストをかける所は、文字の読みやすさと、目が疲れない、電源を気にする必要が無い、という紙の本ならではの特徴を追求する部分。それ以外の所にコストをかけて、一台数万円で、紙の書籍が何冊も買える値段になってしまったら本末転倒。

そういう判断の元に、貧弱なUIがあるのではないかと思います。UIのレスポンスを早くするなんて簡単な事です、良いCPUを採用すれば良いだけです。勿論良いCPUを採用すれば、貧弱なウェブブラウザも軽快に動作するようになったでしょう。しかし、そうする事によって、バッテリーの消費が悪くなり、価格が高くなります。

商品に本質的に求められている部分を正確に把握し、そこには力を入れるけれど、そうでない所は極力削る。

何が無駄で、何が無駄では無いか?恐らく今の日本のメーカは、「多機能、高性能」を追求してきて、何でも満点になる製品作りを目指してきた結果、物作りの最も大切な部分、「何が求められているの?」という部分がわからなくなってしまったのではないでしょうか?

日本で物作りに携わって居る方に、是非Kindle3を触って欲しいと思います。「全てが満点である事が、ヒットの条件では無い」という事を実感させてくれるでしょう。



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  • プロフィール

    大元隆志(おおもと たかし) 通信事業者のインフラ設計、提案、企画を12年経験。異なるレイヤーの経験を活かし、技術者、経営層、 顧客の三つの包括的な視点で経営とITを融合するITビジネスアナリスト。業界動向、競合分析を得意とする。Yahoo!ニュース講談社 現代ビジネスCNET翔泳社EntepriseZineITmedia マーケティングITイニシアティブ、等、様々なIT系メディアで活躍する。SNSビジネス特集でNHK教育テレビに出演。ソーシャルメディア系イベントしては国内最大級となるソーシャルカンファレンス主催者。著書に「ビッグデータ・アナリティクス時代の日本企業の挑戦」「ソーシャルメディア実践の書」、「IPv4アドレス枯渇対策とIPv6導入」がある。所有資格 米国PMI認定PMP、シニアモバイルコンサルタント等。