google+の挑戦はソーシャルグラフでは無く、リレーショングラフの可視化。リーチ力より、より狭い範囲へのレコメンド合戦が始まった

Google+に関するレビューを多く目にするようになってきました。多くのレビュアーがそのUIや、機能については触れているので、Google+によって、Googleが実現しようと考えているのでは無いか?という点について、私なりの考えを記述してみたいと思います。

■Google+は単なるTwitter、Facebook対抗馬では無い
Google+がGoogleのソーシャルメディア戦略の一貫であり、FacebookやTwitterを意識している事は疑いようも無い事実です。しかし、Google+をそれらの先行するソーシャルメディア系サービスの単なる対抗馬として捉え、そのUIや提供する機能だけに目を奪われていては、その本当の狙いから遠ざかってしまうのでは無いでしょうか。

Google+が実現しようとしていること、それは、「繋がり(ソーシャルグラフ)の可視化」の先にある、「関連性(リレーショングラフ)の可視化」を可能にするという点に着目すべきでは無いかと私は考えます。

Googleのリサーチャー、Paul Adams氏によって、作成された興味深い資料があります。このスライドは以前にGoogleがFacebook対抗馬として「Google Me」と呼ばれるサービスを開発していると噂された時に、度々紹介されたものであり、既にご存知の方も多いでしょう。

The Real Life Social Network v2

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この224ページに及ぶスライドは非常に興味深い内容が多く散りばめられており、人間の集団形成や大脳皮質との関係等について詳しく説明されています。その中で、Google+が実現しようとしているものを表す、最も良いスライドがこちらの図です。

Google+の特徴でもあるサークルの初期インターフェースを見た瞬間に、私の頭によぎったのは、「
「関係性」の可視化です。

家族・親戚がStrong Tiesに入り、知人がWeak Ties、フォロー中の人達がTemporary Tiesに分類される。なお、友人がStrong Tiesに入るかどうかは、友人同士が親友にお互いを組み込んでいるか、又は友達同士に入れているかで、Strong Tiesに分けられるかといった判断が成されるのでは無いかと推測しています。

私も自著、ソーシャルメディア実践の書で、ソーシャルメディア時代には四つの絆で構成された社会の中で私達は生きて行くと述べ、現在はこの四つの絆に適したソーシャルメディアのプラットフォームを利用者が使い分けなくてはならない現状があると考えていました。

■単純な順序の違いが大きな違いを産む
FacebookやTwitterは、人と人との繋がりを可視化し、繋がった後に、任意で関係性を定義します。

Google+は、まず関係性を定義させた上で、人をその中に組み込みます。単純なようで、この順序の逆転は大きな違いを産みます。例えば、Facebookで友達承認をしたとしましょう。しかし、それは本当に友達でしょうか?親友でしょうか?単なる知人でしょうか?繋がりだけでは、その違いはわかりません。

しかし、Google+は親友というサークルにあなたは友達を追加するかもしれない、しかし、その親友はあなたを単なる「知人」のサークルに追加するかもしれない。Google+を通して互いに「サークル」に追加した事は相手に連絡が行きますが、どのサークルに追加されたかは、当人同士は知らず、「Google」だけが知っているのです。

繋がった後で関係性を任意で定義する、関係性を定義した上で繋がる。単なる順序の違いは、単純な繋がりだけを示した「ソーシャルグラフ」から、本当に意味のある繋がりかを判断する「リレーショングラフ」へ、その繋がりの意味を深化させます。

■Klout Scoreだけでは判断出来ない関係性
ソーシャルメディア上での影響力を判定するためにKlout Scoreと呼ばれるサービスが良く利用されます。一般的にはこのKlout Scoreが高い人がインフルエンサーであり、その発言は多くの人々に影響力を与えるとされています。しかし、それは、あくまでも一般的な考え方であり、全てのことにおいてあてはめる事は出来ないと、私は考えています。

少し、私の親友の話をしましょう。

自分にとって親友と思える友人とTwitterで繋がっていますが、基本殆どオンライン上でのコミュニケーションは発生していません。もう10年以上の付き合いのある間柄では、別にTwitter上で会話等しなくても、自分の中で特別なポジションを築いているので、特にコミュニケーションを必要としないのですね。

そして、その親友はそれほどTwitterを駆使しているわけでは無いから、Klout Scoreは非常に低い。多くの人はこの私の親友の発言には耳を貸さないでしょう。しかし、私はこの親友の発言に誰よりも耳を傾けるでしょう。何故なら、その人は私にとって、かけがえのない親友だからです。例えKlout Score 80の有名人がお薦めしてくれた商品より、私はKlout Score 30の親友の薦めた商品を手に取るでしょう。

Klout Scoreはその人物の声がどの程度の人に影響を与えるのかというリーチ力を測るツールであり、マス的な発想に近いものがあると感じます。そこにソーシャルの要素が加わる事で、マスメディアより効果があるケースは勿論あるでしょう。しかし、Klout Scoreからでは、親友も、恋人同士も、険悪な仲なのかは判断する事は出来ません。

そして、多くの場合、人はTwitterや、Facebook上の有名人より、親友や恋人の意見に耳を傾けるでしょう。そして、大嫌いな人間が「Like」しているものなら、むしろ買いたくないという気持ちが働くこともあるでしょう。

■繋がりだけでは多くの効果は期待出来ない
この「関係性の可視化」は多くの利用用途が考えられますが、ソーシャルグラフで例に出やすい、広告について考えてみましょう。一つ考えてみて下さい。

Q.知人がLikeしているのと、親友がLikeしているケースどちらの製品を選択しますか?

多くの人が、単なる顔見知りの人が「これいいよ!」と言っている物より、親友が「これいいよ!」と言っている方に興味を示すでしょう。そして、単なる親友というのも、片方の人だけが「親友」だと思い、片方は「知人」だと思っている。互いに親友だと認め合っている者同士の方が、より硬い絆で結ばれており、硬い絆で結ばれている者同士の方が「レコメンド」は効果的で有る事は、容易に想像が付くのでは無いでしょうか。

Google+が関係性を可視化する事に成功すれば、単なる繋がりによって手当たり次第に表示数を増やすのでは無く、より関係性の強い人物に、商品が紹介され、険悪な仲の人がLikeしたものは、表示されないといった工夫を施す事が出来るようになるのでは無いでしようか。そして、Facebookも「友人がLikeした広告の広告効果は高い」と発表していますが、google+が成功すれば、より効果の高いレコメンドが行えるようになるでしょう。

■テレビ離れに嘆き、ディスプレイの表示先を探す、国内の広告業界の遥か先を行っている
国内の広告業界は四大メディアの広告収入源に加えて、震災による影響で、新たな収入源を模索しています。そういった状況で、FaebookやTwitterを有力な「表示先」として模索しているように感じます。しかし、マスメディアの方々と話していると、「ソーシャルメディアには期待しているが、リーチ力が弱い」と頭を抱えている方を多く見ます。

海の向こう米国では、広告を単なる「表示先」ではなく、リーチを追求するのでは無く、如何に人の心に刺さるかを検討する段階に入っていると感じます。その1つがSocail-Graphであり、Google+で可視化される事になるであろう、Relation-Graphです。

国内のマスメディアが「リーチ力」に傾倒し、テレビ離れの次に有望な「リーチ力」を探しては見たものの有望な「広告を表示する場所」が見つからない。そんな国内の状況をあざ笑うかのように、海の向こう米国では「リーチ力」の正反対、「より狭く」にヒットする方法を模索しているように感じます。

そのUIと、Facebookの対抗馬としてばかり注目を集めるGoogle+ですが、本当の意味で着目すべきは、関係性の可視化への取り組みであり、リーチ力志向とは正反対の市場を開拓している点に注目すべきでは無いでしょうか。

もっとも、こういった戦略がとれるのは「ネット広告の世界で圧倒的なリーチ力」を誇るGoogleだからこそ、「狭い領域」の開拓を行えるのかもしれませんが。

広告の歴史は、技術の進化の歴史でもあります。Google+で感じた事は、ソーシャルグラフの争いは、その一歩先のリレーショングラフの戦いに発展しようとしているという事です。これらの領域に日本勢で対抗出来る勢力は無く、このままではFacebookが勝つにしろ、Googleが勝つにしろ、「リーチ力」という呪縛が逃れる事の出来ない、日本の広告産業は表示先を探すだけの業界になるのでは無いだろうかと感じました。

今回のエントリーで不快な思いをされる方も多くいらっしゃるかもしれません。ただ、考えて欲しい事は、広告業界の行くすえです。私のような門外漢が心配することでは無いかもしれませんが、四大マスメディアの広告収入に怯え、TwitterやFacebookに新たな商機を追い求める。海の向こうで進む深刻な新聞離れと、テレビ離れは、そう遠く無い未来に日本も巻き込まれることになる。目先の状況だけに振り回され、大局観を失えば、国内の広告産業のプラットフォームは外国勢に全てを奪われる事になるでしょう。

そうならないように、ソーシャルメディアの表面に見えるものに惑わされず、それが可能になった世界をイメージし、次の手を打てる人材を育てる必要があるのでは無いでしょうか。

あまり、まとまりの無い文章になってしまいましたが、一国民として、一産業がその存在を弱めていくことになるのでは無いだろうかと思い、文章にしました。何かを考えるきっかけになって頂ければ幸いです。



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  • プロフィール

    大元隆志(おおもと たかし) 通信事業者のインフラ設計、提案、企画を12年経験。異なるレイヤーの経験を活かし、技術者、経営層、 顧客の三つの包括的な視点で経営とITを融合するITビジネスアナリスト。業界動向、競合分析を得意とする。Yahoo!ニュース講談社 現代ビジネスCNET翔泳社EntepriseZineITmedia マーケティングITイニシアティブ、等、様々なIT系メディアで活躍する。SNSビジネス特集でNHK教育テレビに出演。ソーシャルメディア系イベントしては国内最大級となるソーシャルカンファレンス主催者。著書に「ビッグデータ・アナリティクス時代の日本企業の挑戦」「ソーシャルメディア実践の書」、「IPv4アドレス枯渇対策とIPv6導入」がある。所有資格 米国PMI認定PMP、シニアモバイルコンサルタント等。