社会貢献ブームとソーシャルメディアが創りだす、善良な下流市民

世の中は決してお金じゃないと思う。しかし、自給自足で生きていくので無いならば、多少なりとも「お金」は必要だ。とはいえ、リーマンショック以降、世の中には「貨幣至上主義」以外の価値観を求める動きは確実に出てきていると感じている。私自身もその流れを感じている一人である事に、否定はしない。

広がりを見せる、若者の社会貢献への意識

特に今の若い世代の間で、自分達の出世や金銭的成功を望むより、社会に対して何かをしたいという意欲が芽生えている事を強く感じる。若い世代を中心とした社会起業家ブームが起きているとも聞くし、私が今月開催した勉強会で「ソーシャルメディアによる地域活性化」を取り扱ったところ、20代の参加が目立った。その後の懇親会でも目を輝かせながら、如何に地域を活性化していくかをディスカッションしている彼らの目はとてもイキイキしており、とても楽しかったと記憶している。(普段はビジネス色が強いため、参加メンバーの世代は30代中盤から40代にかけての中堅層の参加比率が高い)

社会貢献+ソーシャルメディア系のセミナーで二極化する参加者

「世の中を良くしたい」という彼らの想いはとても純粋だ。その考えや行動、志を否定するつもりは全く無い。しかし、そういった流れがあるの中で、少し不安に感じる時もある。

冷静になって、こういったセミナーに参加し、「世の中を良くしたい」と熱く語っている人達を見ていると三パターン程に分類出来る事に気付く。

 1.定職があり、自分の空き時間を利用して社会貢献をしようとしている人
 2.退職し、社会貢献を目的とした事業を立ち上げた人(NPO法人等)
 3.定職が無く、社会貢献をしようとしている人

1の人は、そもそも金銭的に余裕のある人が多い。金銭的満足度がある程度満たされているため、それ以外の充足度を求めるケースだ。
2の人は家庭の事情等で職を退いた人達が多い。子育てや両親の介護といった問題で、定職を離れ、同じような悩みをもつ人達を少しでも減らしたいというような想いにかられる人達だ。

1と2については、少なくとも日本の社会という物がどんな物かを知っている人達だと言える。例え金銭的に余裕が無かったとしても、自分なりの決意があってそういった方向を決定したのだと思う。だから、1と2の人達については何も言う事は無い。問題は3に属する人達だ。

3の人は学生のケースが多いが、彼らは世の中の厳しさを(少なくとも社会人よりかは)体験していない。そんな彼らが社会貢献のみに焦点を充てて突き進んでいこうとする事に危うさを感じる。

幸せというのは、主観であり、本人が満足しているなら周囲の人間がとやかく言うものでは無いと思う。しかし、社会貢献だけで「食べて行く」のは正直難しい。自分がやりたい事と、将来の自分の家族像等も併せ持った上で、活動していって欲しいと願う。

ソーシャルメディアの功罪

ソーシャルメディアには類は友を呼ぶ特性がある。今の時代、ソーシャルメディアを活用して、社会に貢献しようとする人達が、地域や企業の枠を超えて集う事は簡単だ。しかし、ここに落とし穴がある。同じ考えを持った者どうしで、集まっていると、やがて「盲目」となる。

私は「IPv6」というマニアックな技術を三年程前から追っていた。IPv6について研究している団体等にも所属している。その時に感じた事がある。こういった人達と日々会話していると、世の中は明日にでも「IPv6」一色に変わってしまうのでは無いかと錯覚する事がシバシバあった。あれから三年たった今でもまだ世の中は「IPv6」一色にはなっていない。(徐々に変化しつつあるが)

同じ志を持った者同士の時間は楽しい。しかし、世の中がその考えを受け入れてくれるかという事は、全く別問題だと、この時実感した。大切な事は自分達が夢中になっている事と、世間の動向との間で「バランス感覚」を保つ事だ。

ソーシャルメディアと地域活性化という、この美しいテーマに対して夢中になる人が多く現れるのは良くわかる。上述した1~3の人達が一同に集い熱く夢を語る事は素晴らしい。しかし、そこに1と2の人達に混ざって夢中になっている3の人達が将来、定職に就く事が出来ず「下流市民」になって行くような事があってはいけない。

将来の日本を良くしたい、未来の若者に希望を持たせてあげたい、そんな事をイキイキと語る、純粋で未来ある若者が10年経ったときに「下流市民」になっていたのでは、余りにも不幸だと思う。

どれ程、海外ではLinkdInで雇用の流動性が活発化しようとも、雇用に対する考え方や法律の違う、日本と米国を単純に比較する事は出来ない。ソーシャルメディアで活躍していれば、職にありつけるという程、日本の社会は甘くは無い。

私達大人達は、ソーシャルメディアを利用して、世代間を超えて社会を良くしようとする試みに参加する一方で、そんな夢見る若者達に社会の構造も説いてあげて、盲目的に社会貢献の道へ進むのではなく、正しい選択肢を与えてあげた上で、彼らの望む道へ導いてあげる事も、大切な役割では無いだろうか。



この記事のタグ:


関連する記事

  • FBで人に言えない「内緒のコミュニティ」に入るのは気をつけよう

  • 市場原理に従い質低下が危ぶまれる東洋経済オンライン

  • 2013年版 絆の種類

  • ソーシャルCRMでコールセンタのコスト削減

  • ソーシャルメディアが晩婚化を助長する?

  • 「SNSで目立ちたい症候群」に企業はどう対処すべきか

  • イノベーションを生み出すスマートオフィス

  • 差が付きはじめた携帯三社のソーシャル評判

  • クリエイターになるということ

  • 週刊誌を超える発信力を個人に与えるヤフーニュース個人


  • プロフィール

    大元隆志(おおもと たかし) 通信事業者のインフラ設計、提案、企画を12年経験。異なるレイヤーの経験を活かし、技術者、経営層、 顧客の三つの包括的な視点で経営とITを融合するITビジネスアナリスト。業界動向、競合分析を得意とする。Yahoo!ニュース講談社 現代ビジネスCNET翔泳社EntepriseZineITmedia マーケティングITイニシアティブ、等、様々なIT系メディアで活躍する。SNSビジネス特集でNHK教育テレビに出演。ソーシャルメディア系イベントしては国内最大級となるソーシャルカンファレンス主催者。著書に「ビッグデータ・アナリティクス時代の日本企業の挑戦」「ソーシャルメディア実践の書」、「IPv4アドレス枯渇対策とIPv6導入」がある。所有資格 米国PMI認定PMP、シニアモバイルコンサルタント等。