SIMロック解除という名のiPhone争奪戦

本日ドコモが2011年4月から発売される携帯電話について、全てSIMロックを解除する機能を搭載する方針である事を発表しました。
SIMロックが解除されれば、ドコモが発売する携帯電話でも、他社のSIMカードを入れ替えれば他社回線が利用できるようになります。

但し、SIMロック解除の前提条件として「国内携帯4社が歩調を合わせること」との方針も示しており、他社が追随しなければ実施されない可能性もあります。このため、来年4月以降にSIMカードの入れ替えが普及するかどうかは不透明な状況です。

SIMロック解除という名の、iPhone/iPad争奪戦

最近のモバイル事情に詳しい方なら、ご存知の通り、現段階でSIMロックが解除されたとしても、周波数、無線規格、通信事業者独自のサービス等が共通化されていないため、殆どの携帯電話では恩恵を受ける事が出来ません。※詳しく知りたい方はこちらをご参照下さい。

SIMロック解除の恩恵を受ける端末があるとしたならば、周波数、無線規格の問題をクリアー可能で、通信事業者独自のサービスに依存していない端末。そう、スマートフォンとiPad位しかありません。

スマートフォンと言っても、通信キャリアの回線を選択してまで欲しい端末と言えば、現在の日本国内の状況ではiPhone位しか存在しないでしょう。事実上のApple端末争奪戦に違いありません。

識者に言わせれば、SIMロックを解除する事で、ガラケーから脱出し、世界と闘う携帯電話を作る土壌を作るべし!との声が叫ばれる一方で、いざSIMロックが解除されれば、国内携帯メーカの海外進出どころか、国内携帯メーカを無視して、海外製品を国内キャリアで奪い合うなんとも情けない状況に発展しそうです。

私自身はSIMロック解除に反対とは思いません。国民の方々が便利になると言うのならばSIMロック解除は実施すべきだと思います。しかし、SIMロックを解除した後の、国の携帯電話戦略が不透明であり、この不透明な状態のままで、本当に解除してしまって良いのか、疑問に感じています。

世界最大の携帯電話販売台数を誇るNokiaでさえ、iPhone/Android勢の攻勢に苦戦しています。日本の携帯電話メーカがこれら海外勢に勝てる見込みが全くと言っていい程、見当たらない現在の状況で、SIMロック解除で火蓋を切る、黒船の襲来。

iPhone争奪戦としてしか殆ど機能しないSIMロック解除を実施し、日本の携帯電話メーカが携帯電話市場から総撤退となったら、一体誰が責任取るんだろう?そういう状況が来た時に、当然税収は減るわけですが、皆さんは笑っていられますか?

しかし、「iPhone/iPadをソフトバンク以外のキャリアで使いたい」という一部のユーザの声が、まるで国民の総意のように語られ、国内携帯電話メーカ撤退の危険性もある中で、黒船を招き入れようとしているように感じて不安でなりません。

SIMロック解除の議論と合わせて、国内携帯電話産業を支援する戦略も合わせて議論して欲しいと願うばかりです。

注目は、CDMA対応のiPhoneの発売

ここからは、仮に、2011年4月にSIMロック解除が全キャリアで実施されたら、という前提で話を進めます。

海の向こう米国では、かねてから噂のあった、Verizon Wirelessが2011年1月からiPhoneを発売するかもしれないと、報じられています。

この報道の通りの自体となれば、Verizon WirelessからiPhone登場となるのですが、Verizon Wirelessの無線規格はCDMA2000と呼ばれる無線規格を使用しています。そう、CDMA2000とはAuが使用している無線規格と同じです。

つまり、iPhone争奪戦において、Auは蚊帳の外とよく表現されますが、Verizon Wireless対応iPhoneが登場すれば、SIMロック解除と共に、ドコモ、ソフトバンク、AuでiPhone争奪戦が始まります。

もし、VerizonがiPhoneを発売したら、AT&Tは100万人の加入者を失うだろうと、海外のアナリストは予想していますが、国内通信事業者の三つ巴のiPhone争奪戦は果たして、どこに軍配があがるのでしょうか。

コンシューマ向けはソフトバンク、法人向け獲得を残り二社で競いあう

現在のソフトバンクの勢いはiphone/iPadによる物が大きい。これは疑いようの無い事実でしょう。しかし、CMによるイメージ戦略の成功、孫さんのメディアへの露出、ソフトバンクグループ全体のソーシャルメディアの活用によって、コンシューマのハートを最も握っているのもソフトバンクではないかと、私は思います。

通信品質を重視して、ドコモ、auに移るユーザは存在すると思いますが、ソフトバンクは価格勝負に出るでしょう。iPhone/iPad/携帯電話の三台を保有すれば、一ヶ月の通信代は馬鹿になりません。多少の通信品質の差よりも、価格を重視するユーザが多いのでは無いかと予想します。

メディア戦略のウマさ、価格攻勢でコンシューマについてはソフトバンクがリードするのでは無いかと予想します。

法人向け拡大の鍵は「個人情報 過保護法」の改善

メディアの影響の受けやすさ、価格に敏感なコンシューマより、ドコモ、Auの狙うべきは法人ユーザでは無いかと思います。しかし、残念な事に、日本企業はスマートフォンやiPadのような優れたデバイスが普及しにくい状況にあります。

それは、時折、「個人情報 過保護 法」とも表現される、過剰な個人情報保護法の厳守にあります。

スマートフォンやiPadのようなデバイスは、どこにでも持ち運べる携帯性を活かし、外出先や移動中等で場所を選ばずに仕事が行えるようになる事で、生産性を向上します。また、ワイヤレスで仕事が行えるため、ケーブル配線等のレイアウト費削減にも寄与します。

しかし、「個人情報保護法」を厳守すめため、もしもの時の端末の紛失やセキュリティ事故等に配慮し、こういった携帯性の高い端末を採用しない企業が多いのも現実です。

海外に比べて日本でスマートフォンが普及しない理由の一つに、法人でのビジネス利用が少ないのが原因の一つとも言われています。

個人情報保護法は、個人の情報を預かる企業にとって、当然厳守しなければならない法律ではあり、撤廃する必要は無いと思います。しかし、今後、日本の企業が海外と闘うための生産性向上を行うためには、個人情報を守る手段を検討しなおす必要があるのではないかと思います。

法人ユーザのスマートフォン利用が拡大すれば、品質や安全性の担保、その他サービスとの連携を得意とする、ドコモ、Auが有利になるのではないかと予想します。



この記事のタグ:


関連する記事

関連する記事は見当たりません…

プロフィール

大元隆志(おおもと たかし) 通信事業者のインフラ設計、提案、企画を12年経験。異なるレイヤーの経験を活かし、技術者、経営層、 顧客の三つの包括的な視点で経営とITを融合するITビジネスアナリスト。業界動向、競合分析を得意とする。Yahoo!ニュース講談社 現代ビジネスCNET翔泳社EntepriseZineITmedia マーケティングITイニシアティブ、等、様々なIT系メディアで活躍する。SNSビジネス特集でNHK教育テレビに出演。ソーシャルメディア系イベントしては国内最大級となるソーシャルカンファレンス主催者。著書に「ビッグデータ・アナリティクス時代の日本企業の挑戦」「ソーシャルメディア実践の書」、「IPv4アドレス枯渇対策とIPv6導入」がある。所有資格 米国PMI認定PMP、シニアモバイルコンサルタント等。