IT業界で今年一番世の中を動かしたのは「普通の人」

Wikipedia、Youtube、MySpace、これらCGM(Consumer Generated Media)の台頭が進んだ2006年、Times誌が選んだ「今年の人」は”You”だった。

Person of the Year: You

Web2.0の到来で、誰もが主役になり、メディアとなる時代がやってきた、そんなメッセージが込められていたのだが、それでも「世の中の流行を作り出すのは俺達だ」とTimes誌の編集部は自負していたに違いない。

「メディア主導」で流行が作られたTwitter、Facebook

 2009年からTwitterブームが始まり、2010年、2011年とFacebookがそれに続いた。この二つがヒットした要因には様々な物が挙げられている、承認欲求を満たす、マスメディアへの不信、自由への憧れ、革命のツール、、、当時語られていた高尚なヒットの理由は今読み返して見ればとても「チープ」に思えてくる。一部のオピニオンは確かにそういった目的で利用していたかもしれないが、大多数の人にとっては「話題になっていたから」というのが正直なとこだろう。

 Twitterはソフトバンクの孫社長という実業界の大物が利用したことで、社会全体に大きなインパクトを与えることに成功した。Facebookは映画「ソーシャルネットワーク」の公開や、IPOイベントで若くして億万長者となったザッカーバーグのカリスマ性とメディアに取り上げられる要素も数多く揃っていた。スマートデバイスの普及も追い風になっていた部分はあると思うが「メディアが作り出した流行」に乗っかった人は少なくなかっただろう。

 ここ最近のソーシャルメディアの流行を作り出していたのは、弱くなったと言われるが「メディア」の影響力を感じさせるものだった。

2012年、流行を作り出したのは「普通の人達」

 しかし、それ以降SNSブームに続けとGoogle+、Linkedin、Pinterest、Pathと「オピニオンリーダ達」や「メディア」は次なる金脈を当てようと、あの手この手で流行を作り上げようとしていたが、どれも日本ではパッとしていないのが現状だ。

 そんな中で2012年大ヒットしたアプリがあった、NHNが提供する「LINE」だ。2012年最も成功したアプリと言っても過言では無いのでは無いだろうか。他の様々なソーシャルメディアのサービスが登場したにも関わらず、なぜ「LINE」はここまで普及したのだろうか。勿論LINEが普及した理由はテレビCMによる広告は大きいが、アカウントを獲得させるだけでは継続利用には繋がらない、ある程度利用が「継続」しなければアプリの世界では「流行」は生まれない。

 私は、スタンプの「可愛い」が女性層を獲得し、そういった女性とのコミュニケーション手段として利用する男性という最も手堅い集客に成功したと考えている。勿論同姓間のコミュニケーションであっても携帯メールより動作が軽くて利便性も高く使い勝手が良いという基本的な性能の高さもヒットの要因であることは間違いないが。

 「オピニオンリーダ達」が「ソーシャル疲れ」や「広がり過ぎた世界が苦痛になった」などLINEのヒットを分析する機会を目にするが、それは極々一部のマニアの思考回路にすぎない。FacebookやTwitterのIDを持っていない人でもLINEのIDは持っている。居酒屋で携帯メールの変わりにLINEのID交換をする人達は「この子とデートしたい」という単純な思考で利用しているだろう。

流行の作り手が「普通の人」へとシフトし始めた

 個人が情報を交換しあう仕組みが無く、何かをするには「購入」する必要があった時代には、メディアが起点となりメディア主導でブームは作り出されていた。その時代には「買わせる」までがゴールであり、買った後に購入者が利用しているかいないかは関係無かったのだ。売り上げさえ取れれば「今年のヒット商品」として、取り上げられ、それにつられて流行が継続していく。

 しかし、Twitter、Facebookが情報流通網を作りあげ、スマートデバイスの普及は「まずはお試し体験」のコンテンツ提供を当たり前にした。これによって、メディアが起点となり流行のきっかけを作ることはあるかもしれないが「継続」するかは「普通の人」へと選択権が渡ったのだ。

 存在しないニーズをまるで存在するかのように煽り、一部の高尚な人間の使い方を声高に宣伝した所で「普通の人は継続利用」を行わない。「普通の人」が本当に利用するものだけが「流行」を作り出す。

 LINEの成功は「流行」を作り出す力が、メディアからコンシューマへシフトしつつある「兆し」を感じる現象であった。



この記事のタグ:


関連する記事

関連する記事は見当たりません…

プロフィール

大元隆志(おおもと たかし) 通信事業者のインフラ設計、提案、企画を12年経験。異なるレイヤーの経験を活かし、技術者、経営層、 顧客の三つの包括的な視点で経営とITを融合するITビジネスアナリスト。業界動向、競合分析を得意とする。Yahoo!ニュース講談社 現代ビジネスCNET翔泳社EntepriseZineITmedia マーケティングITイニシアティブ、等、様々なIT系メディアで活躍する。SNSビジネス特集でNHK教育テレビに出演。ソーシャルメディア系イベントしては国内最大級となるソーシャルカンファレンス主催者。著書に「ビッグデータ・アナリティクス時代の日本企業の挑戦」「ソーシャルメディア実践の書」、「IPv4アドレス枯渇対策とIPv6導入」がある。所有資格 米国PMI認定PMP、シニアモバイルコンサルタント等。