スマートテレビ、賢いのはテレビではなく「ユーザ」

1月8日から米国で開催される、CESではスマートフォンの新機種は勿論、スマートフォンと連携する家電が注目を集めると予想されるが、スマートテレビも家電業界が期待する商品だ。既にスマートテレビでリーダの風格を見せるサムスンは、CESで前例の無いテレビを発表すると宣言している。

昨年は、中国家電大手のハイアールが脳波で操作するテレビを出展し話題を集めたがそれを上回る驚きを与えてくれることを期待したい。

しかし、そんなスマートテレビだが、これを操作するには、どうやら視聴者が賢くなければいけないようだ。

乱立する無線規格

テレビをスマートにするために、テレビが「有線」から「ワイヤレス」で音響機器やパソコンと繋がる動きがある。しかし、この規格が乱立してるのだ。ざっと簡単に紹介しよう。

 ・WiHD(WirelessHD)
  WirelessHDコンソーシアムが策定。テレビやDVDプレーヤーなどのAV機器でデータを無線伝送する技術。Intel、サムスン、LG電子、パナソニック、ソニー、東芝、NEC、SiBEAMによって結成された。2008年1月にWireless HD Version 1.0が策定された。

 ・DLNA(Digital Living Network Alliance)
  最も古くから存在する、異機種間コンテンツ共有サービス。2003年6月に結成された業界団体。家電、モバイル、パソコン業界と幅広い業界から成り立っている。

 ・WHDI(wireless home digital interface)
  イスラエルの企業AMIMONが開発。2008年7月にWHDI SIGが設立された。パソコンやタブレット端末に表示している内容を無線技術を利用してテレビに表示する。韓国サムスン電子、韓国LG電子、シャープ、ソニー、日立製作所、米モトローラといった家電メーカーが参加している。

 ・WiDi
  2010年にインテルがCESで発表した、パソコンの画面を無線LANで転送し、テレビなどで表示する技術。

 ・Miracast
 2012年9月19日Wi-Fi Allianceが発表。無線によるデバイス間での動画や画像の送信を可能にするWiFi業界標準技術。LGとサムスンの両社からサポートを受けている。Wi-Fi Allianceは2016年までに15億台のデバイスがMiracastを使用すると予測している。

誰も使いこなせないスマートテレビ

様々な機器とケーブルレスで接続出来る筈のスマートテレビだが、使いこなすには、自分が持っている機器がどんな無線規格を利用して、自分のテレビがサポートしているかを理解しておく必要がある。しかし、前述した通り、無線規格は乱立していて何を選べば最適なのかを判断するのは非常に難しい状態になっている。

それでは、機器を繋がずに何かが出来るかというと、TwitterやFacebookがテレビの画面で利用出来ると言われても、誰も利用していないのが現状だ。
NPDの調査によるとスマートテレビ購入者が良く利用するアプリはNetflixやHuluといった動画サービスであり、それ以外のアプリは殆ど利用されていない。ようは、様々な機能が付与されたが、購入者の大半はスマートテレビで「テレビ」を見ることに留まっている。

コンシューマにとってのスマートとは何か?

初めてiPhoneを手にした時、「うーん、ウェブを見てる時は縦画面が良いんだけど、動画見る時は横画面の方がいいなぁ」と思ってiPhoneを縦から横置きに変えると、何もしなくても画像がiPhoneの向きを検地して縦や横に変化した。今では珍しくも何とも無い動きだが、この時「スマートデバイス」とはこういうことかと感じた。

「ユーザが何も考えなくても、最適な状態を機械が賢く判断して、わずらわしいことをしなくても、機械が追随してくれる」のだ。

ところが、今のスマートテレビはどうだろうか?様々なアプリが動作し、様々な機器とワイヤレスでクールに接続することが出来る。確かに昔のテレビと比べて数倍賢い。まるでパソコンのように何でも出来そうに感じる。しかし、それを使いこなすには、購入する側は、自分の買うスマートテレビがどんな「派閥」の機械が接続出来るのかを調べなければいけないし、どのメーカ規格が勝つのか市場予測をしなければ、無駄になってしまうかもしれない。機械よりもユーザに賢さを求めている。

これでは、結局の所、使いこなせるのはホンの一部のユーザと、頻繁に買い換えるマニア位しかスマートテレビの賢さを体験することは出来なさそうだ。

何でも出来るスマートテレビより、誰でも簡単に使えるスマートテレビが本当に求められている物では無いだろうか。



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    大元隆志(おおもと たかし) 通信事業者のインフラ設計、提案、企画を12年経験。異なるレイヤーの経験を活かし、技術者、経営層、 顧客の三つの包括的な視点で経営とITを融合するITビジネスアナリスト。業界動向、競合分析を得意とする。Yahoo!ニュース講談社 現代ビジネスCNET翔泳社EntepriseZineITmedia マーケティングITイニシアティブ、等、様々なIT系メディアで活躍する。SNSビジネス特集でNHK教育テレビに出演。ソーシャルメディア系イベントしては国内最大級となるソーシャルカンファレンス主催者。著書に「ビッグデータ・アナリティクス時代の日本企業の挑戦」「ソーシャルメディア実践の書」、「IPv4アドレス枯渇対策とIPv6導入」がある。所有資格 米国PMI認定PMP、シニアモバイルコンサルタント等。