光の道は「将来の子供たち」へ贈る道

通信業界で今もっとも注目を浴びている話題と言えば、「光の道論争」に違い無い。ソフトバンク孫社長は「大政奉還」という言葉を借りて「NTT」に立ち向かおうとしている。しかし、戦局はNTTに有利であり、孫社長は世論に訴えかけようとしている

動き出したノアの方舟

旧約聖書の中の創世記に、ノアの方舟という話がある。

ある昼下がりの午後、野良仕事をしていたノアという信心深い老人は、神の声を耳にする。その声は、ノアにこう語りかけた。「近い将来に大洪水が起き、全ての人間が滅びるだろう」と。しかし、神は、善人で信心深いノアとその家族だけは助けてやるつもりだと言い、大きな箱舟を作ることを命じたのである。

もし、現在の日本に、ノアが存在したなら、きっと神はこう語りかけるだろう。
「近い将来に日本の国力は低下し、日本人の大半が貧困にあえぐだろう、そうなる前に大きな方舟を作って、海外に逃げなさい」と。

そんな、声を聞いた大企業は、海外進出を粛々と進めている。先月、NTTが、南アフリカの情報システム大手、ディメンション・データを TOBで最大2860億円で買収成立というニュースが話題になった。

また、今月もNTTデータが米キーンを同社過去最高額で買収した事が話題になった。
海外戦略を指揮する、グローバルITサービスカンパニー長の榎本隆 代表取締役副社長執行役員は、NTTデータの危機感をこう話す。

「国内市場は先細る。ユーザー企業はどんどん海外に出ている。日本企業の海外拠点のサポートを勝ち取るという意味だけでなく、海外市場そのものを開拓する上でも、海外拠点の整備は重要」。

そもそも、海外輸出依存度の高い製造業と異なり、内需依存度の高い電気通信事業者が海外展開を積極的に推し進めている点に注目すべきだろう。

既に、体力のある大企業は、沈みかかった日本から脱出しようとしている。この沈みかかった日本で助かるためにはどうすれば良いか?方法は二つ。海外進出を展開する大企業というノアの方舟に乗るか、海外でも闘える人財となるか。

21世紀「高度情報化社会」を生き抜くための人財とは

大卒の就職率が57.6%と報道される厳しい就職戦線を勝ち抜いて運良く大企業に就職出来たとしてしても、決して安泰とは言えない。今の世の中「定年まで、年功序列で安定した人生」を送れるとは限らない。

グローバリゼーションが進んだ現代では、どこの企業、どこの国でも働ける人財になっている事が、これからの若い世代に必要な生き方では無いだろうか。

こんな時代に生き残れる人財とは?様々な考えがあるだろうが、資源も乏しく、今後人口が衰退していく日本において、私が考える21世紀に求められる人物像とは、海外を相手に戦う事が可能で、一人辺りの生産性を劇的に高める事の出来る人財だ。

そういった人財とは一体どういう人財か?色々な答えはあるかもしれないが、一つの答えとして「情報産業で成功出来る人財」では無いかと思う。とはいえ、情報産業と言っても、現在の日本の情報産業の得意とするインフラ構築や受託型システム開発では無く、自由な発想で世界の人々を虜にする事の出来るサービスを創造する事の出来る人財。

そう、Googleや、Apple、マイクロソフトのような自らのアイデアと技術で「新しいサービス」を創造出来る人物だ。

日本の出版業界と肩を並べるGoogle

$23,651 million これは、2009年度のGoogleの売上高。日本円に換算すると約二兆円。日本国内で二兆円産業と言うと出版業界に相当する。Google一社で日本の出版業界全てを合計した売上高と同じというのだから驚異的だ。

Googleの社員数は約2万人であり、一人辺り一億円の売上高がある計算になる。もし、日本でもこのように生産性の高い企業を多く輩出する事が可能になれば、少子化が進行していく日本でも、経済大国としての威厳を維持して行くことが出来るだろう。

そんな、企業を数多く輩出するために、これからの日本はどうあるべきか?

IT立国日本

Googleに肩を並べる企業を輩出するために、日本がどうあるべきか?そんな事を考えた時に、孫正義氏の唱える「IT立国日本」に夢を託したいと私は考える。

「光の道」に寄せられている批判の多くに、「光の道」の実現性に疑問を抱く考えと、「光の道」が実現しただけで、人々の生活が変わるとは思えないという意見を多く見る。

私の考えを述べるなら、実現性については、日本の将来の事を考えての行動であるならば、「夢」に掛けてみたいと思う。そう思う考えは単純だ。日本という国の考える国策で、これ程胸が熱くなる案は無いからだ。それに長らく通信業界を見てきた人間にとって、孫さんならやってくれるかもしれないと感じさせる力がある。もし、孫さんが居なかったら?

日本はもしかすると、未だにISDNやATMという高価な通信規格を用いて毎月一万円程度の高額な通信量を請求されていたかもしれない。日本国内にADSLを持ち込みブロードバンドの価格破壊を行い、スマートフォンなんて流行らないと言われていた携帯業界をiPhone一色に染めてしまった孫さんなら、「非現実的」と言われる事も可能にするかもしれない。少なくとも「出来ない」と言っている人達が行動に移すより、実現する可能性は高いだろう。

そして、もう一つ、光の道が実現して、人々の生活が変わるか?という点だが、これについては「Yes」とも言えるし「No」とも言える。極論すれば多くの識者が指摘しているように、「光の道」が完成しただけでは何も変わらないだろう。光の道を活用出来る機器と教育も併せて配備する必要はあるだろう。なお、インドでは教育用に一台$35のタブレット端末を配備しようとしている。

もし、全世帯に光の道が配備され、それを活用するための教育と機器が行き届き、国民だれもがインターネットに接続する権利を得る事が出来たなら、国のあり方を大きく変える礎になると私は考える。

考えてみて欲しい、生まれた時からパソコンが有り、インターネットを利用する事が出来、更に学校で英語が学べたとしたら?そして、それは経済的事情によって阻害される事なく、日本人であるならば全員が平等にそれを享受出来る。そんな時代が来れば日本は人財という面に置いて、他国を大きくリード出来るのでは無いだろうか。

インターネットが存在する時代で、英語が使えれば、もはやどこに住んでいるかは関係無い。自分達のアイデアと技術力次第で、誰でも「Google」になれるチャンスを手にする事が出来る。四つの机と、社長一人とアルバイト三人という状態でスタートした「foursquare」もインターネットがあったから成功した。そして彼らは今全米で最も注目を集めている企業の一つになった。

「光の道」は将来の子供たちへ贈る道

光の道が実現した所で、現在の私達の生活には大きな影響は与えないだろう。「光の道」を活かすための、教育や、法制度が整うまでには更に時間がかかるだろう。しかし、その道の向こうには、未来の日本の子供たちが進む道があると思う。

今を生きる人々のために、コンクリートの道を造り、未来の子供達に借金を残してきた時代があった。そろそろ、未来の子供達が歩いて行くための道を創ってあげる「国造り」を熱く語る大人が現れても良いのでは無いだろうか?

そんな「未来の子供たちの歩く道」となる「光の道」を実行に移すにあたって最も大切な事は、消費者を中心とした第三者機関による監視組織の設立だろう。光の道実現にあたって新たに設立される事業会社が、特定企業のみに利益を享受するための行動をとらず、全国民にとって利益のある行動を取っているかを監視する米国の「FCC」のような組織の設立が必須だと思う。

そのような組織と、「光の道」と教育が実現出来たなら、きっと、ノアの方舟に乗る前に、日本が沈没する事を回避出来るだろう。



この記事のタグ: ,


関連する記事

  • SDN Japan 2013 Juniper SDNコントローラ Contrail を無償提供

  • SDNはフランス料理、従来ネットワークは寿司職人

  • NTT Com SDN技術を利用したクラウドマイグレーションサービスを提供開始

  • SDN/OpenCloud時代のアーキテクチャと運用を考える

  • NFVへ向けた布石 A10 DDoS WAF等を強化

  • NFV ホワイトペーパ和訳 推奨活動要望

  • NFV NFVホワイトペーパ和訳 NFVの課題

  • NFV ホワイトペーパ和訳 NFVの実現手段

  • NFV ホワイトペーパ和訳 Network Functions Virtualizationの利点

  • NFV ホワイトペーパ和訳 応用分野とユースケース


  • プロフィール

    大元隆志(おおもと たかし) 通信事業者のインフラ設計、提案、企画を12年経験。異なるレイヤーの経験を活かし、技術者、経営層、 顧客の三つの包括的な視点で経営とITを融合するITビジネスアナリスト。業界動向、競合分析を得意とする。Yahoo!ニュース講談社 現代ビジネスCNET翔泳社EntepriseZineITmedia マーケティングITイニシアティブ、等、様々なIT系メディアで活躍する。SNSビジネス特集でNHK教育テレビに出演。ソーシャルメディア系イベントしては国内最大級となるソーシャルカンファレンス主催者。著書に「ビッグデータ・アナリティクス時代の日本企業の挑戦」「ソーシャルメディア実践の書」、「IPv4アドレス枯渇対策とIPv6導入」がある。所有資格 米国PMI認定PMP、シニアモバイルコンサルタント等。