通信業界トピック 2013年第二週

先週は米国でCES 2013が開催されていたため、メディアの報道はCES一色だった。通信業界のイベントと言えば、MWC(Mobile World Congress)がある。CESは家電メーカ中心のイベントなのだが、近年、通信業界という観点からもCESは目が離せないものとなっている。

現在の通信業界は「Device is King」であり、人気のある端末を確保したキャリアが有利になる。そのため今やCESの中心的存在であるサムスンらアジア系家電メーカの動向を知る上で重要なイベントになっているのだ。

そんなCESだが、CESについては既に多くのメディアが取り上げているのでそちらに譲りたい。

一点だけ印象に残ったのは「Verizon Wireless at CES:We’re not just a phone company」と題した記事だった。「もう電話会社ではない」音声からデータARPUへと急速にシフトしつつある米国キャリアならではの発言であり、2020年へ向けた「スマートフォンの次」を見据えた「キャリアが起こすイノベーション」に期待したい。

車がWiFiホットスポットに

BMWAudiが4G LTEを使用して車をWiFiスポットにし、移動するための道具から移動する生活空間へとシフトしようとしている。

モバイルの普及している韓国等では既にタクシーでもWiFiが使えるのが当たり前なのだとか。高速に移動する乗り物で安定してストリーミング映像や音楽が途切れず再生出来る技術が求められるようになってくるだろう。

iPhonを巡る観測

日経新聞、WSJによると、アップルがiPhone5の部品注文数を削減し、ディスプレイ等の一部の部品では当初の半分程度になった発注もあるという。iPhone5自体の評価は高い。この陰りはiPhone5単体のものなのか、それとも「iPhone」というブランドに対する価値に陰りの兆しなのか。

iPhoneを扱うためにはキャリアはアップルに対して、相当なコミットをしなければならないが、もし「iPhone」自体の人気に陰りが見えてきたということであれば、今後のキャリアにおけるスマートフォン販売戦略に変化が現れるかもしれない。

一方で、中国市場向けに安価なiPhoneが登場するかもしれないという噂も飛び交い始めた。莫大な人口を抱える中国だがその所得はまだまだ低い。iPhoneを持つことはステータスにもなると言う。安価版を出せば中国市場を開拓出来るかもしれないが、アップルプレミアムを低下させることにも繋がっていく。数を取るために廉価版を出すか、ブランドイメージを貫き「ヴィトン」路線で行くか。どちらに舵を切るのか注目したい。

そんな中、アップルにとって最大のライバルであるサムスン電子のモバイル部門戦略マーケティング担当副社長ブライアン・ウォレス氏をグーグルがヘッドハントしたと、AllThingsDが報じている。マーケティング戦略ではアップルがリードしていたが、グーグルは強力な助っ人を得ることになりそうだ。

ドコモ通年131万人流出のインパクト

2012年通年でのキャリアの加入者動向が各社から発表された。

ドコモのみ年間でマイナス131万3200件の大幅な加入者減少となっている。これがどの程度経営にインパクトを与えるかといえば、単純にドコモのARPUをこの数値に掛けただけでも、年間約772億の収入を失うことになる。

勢いに陰りも見え隠れするiPhone。ドコモにとっては悩ましい一年になりそうだ。

無料アクセス提供を虎視眈々と進めるグーグル

米グーグルは米ニューヨーク地区の、チェルシー全域で無料のWiFiスポットを開始した。
インドネシアではインドネシアのキャリアTelkomselと協力し、フィリピンに続いて無料モバイルサービス「Free Zone」の提供を開始した。

先進国ではキャリアが値上げ傾向に有り、新興国ではそもそも所得に対して通信料が高い。通信料の高騰はグーグルやコンテンツプロバイダーにとっては好ましくない傾向。そう簡単にグーグルがキャリアの仕事を取ってかわるわけはないが、じょじょにではあるがユーザにアクセス手段を提供しはじめているグーグルの動きは非常に興味深い。



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  • プロフィール

    大元隆志(おおもと たかし) 通信事業者のインフラ設計、提案、企画を12年経験。異なるレイヤーの経験を活かし、技術者、経営層、 顧客の三つの包括的な視点で経営とITを融合するITビジネスアナリスト。業界動向、競合分析を得意とする。Yahoo!ニュース講談社 現代ビジネスCNET翔泳社EntepriseZineITmedia マーケティングITイニシアティブ、等、様々なIT系メディアで活躍する。SNSビジネス特集でNHK教育テレビに出演。ソーシャルメディア系イベントしては国内最大級となるソーシャルカンファレンス主催者。著書に「ビッグデータ・アナリティクス時代の日本企業の挑戦」「ソーシャルメディア実践の書」、「IPv4アドレス枯渇対策とIPv6導入」がある。所有資格 米国PMI認定PMP、シニアモバイルコンサルタント等。