前田敦子は何故卒業発表にソーシャルメディアを活用したか

もう随分昔の話になるが、元AKB48の前田敦子さんが引退するときにGoogle+やYoutubeを活用したことで、TBSの「アッコにおまかせ」から取材があった。そのときの放送は残念ながらボツになったようだが、せっかくなので当時のインタビュー内容と回答を公開したい。

Q1:まずGoogleはどのように収入を得ているのか? Googleの収入の仕組みについて簡単に解説をお願いします

Googleは、インターネットの検索エンジン世界最大手であり、世界で最も訪問者数の多いサイトでもあります。Googleは検索エンジン以外にもGmail、Youtube、Google Mapsといった人気コンテンツを多く保有しています。

Googleの収益源はこれらの人気コンテンツに訪れた人達に広告を表示することで収益を得ています。間近の四半期報告書によればGoogle自らが運営するコンテンツに表示する広告からの収益が69%を占めています。

Google Adsense等によって、Googleのサイト以外で表示された広告からの収益が27%。これら2つの収益比率を合計すると、96%が広告収入となっていることがわかります。

なお、2011通期のRevenue合計は$37905M、$10386M(Network)、$26145M(Google.com)、$1374M(Other)となります。
 
売上高379億5百ドルという売上は、日本国内の2011年の四大マスメディア全体の広告費2兆7千16億円を大きく上回ります。表向きは世界最大の検索エンジンサイトに見えますが、ビジネスモデルではGoogleは世界最大の広告会社と言えます。

Q2:今回は発表が記者会見やイベント上での発表ではなく、「Google+」や「YouTube」での映像の発表だったのですが、その理由とGoogle側のメリットなどはあるのでしょうか? その理由と狙いなどの予想をお願いします。

◆Google側のメリット
Google側としてはGoogle+の知名度向上の効果が見込めます。しかし、Googleのビジネス全体として見れば与える効果は軽微であるため、Google側のメリットはそれほど大きくないと考えられます。

◆「会えるアイドル」としてファンと最も近いメディアを選択
「Google+」と「Youtube」はソーシャルメディアと呼ばれるサービスの一つ。「映像を写す」、「情報を発信する」という意味ではマスメディアと同じ機能を果たしますが、視聴するファンにとって、最も異なるのは「距離感」。

テレビのブラウン管に映る「アイドル」は遠い存在に感じます。ソーシャルメディアの画面の向うには「アイドル本人」が居ます。アイドルを身近に感じることが出来るソーシャルメディアでは「アイドルが側に居る」ように感じることが出来ます。

「会えるアイドル」として始まったAKB48。その初期からのメンバーである前田敦子さんにとって、自分を今まで支えてくれた「ファン」を一番近く感じるメディアとして「ソーシャルメディア」を選択したのでは無いでしょうか。

また、テレビでは「編集」されてしまう恐れがありますが、ソーシャルメディアでは「無編集」の状態をファンに届けることが出来ます。最後を飾る舞台で「生の前田敦子」をファンに直接届けたかったのでは無いでしょうか。

◆ファンの記憶に永遠に最後の舞台を記録する
テレビで放送された映像は、テレビ局には保存されますが、見逃したファンはそれを視聴することは出来ませんし、見ていたファンも録画していなければ、もう一度見る事は出来ません。Youtubeに投稿された映像は何時でも誰でも再生することが出来ます。前田敦子さんが引退する最後のシーンを、永遠に記録することが出来ます。

◆ビジネス的なメリット
ビジネス的なメリットは三つ考えられます。

1.世界へ向けたアプローチ
 ビジネス的なメリットも勿論有ります。国内のマスメディアによる放送では視聴範囲が「国内」に限られます。しかし、YoutubeやGoogle+に公開された情報は、公開した時点で「全世界へ向けて」発信されています。

 なお、「AKB48 on Google+」に投稿された記事は英語、中国語、韓国語、タイ語、インドネシア語に翻訳され世界へ向けて発信されています。

2.口コミ効果
 ソーシャルメディアの特徴として口コミによる拡散効果が期待出来ます。
 
3.低コストでアーカイブを保管できる
映像の記録を行い、数百万人が視聴する状態を準備することは困難です。しかし、Youtubeのようなクラウドサービスを利用することで、「無料」で、何百人が何度でも視聴する環境を利用出来ます。

Q3:今回、前田敦子さんの発表がYouTube上で24時間で約100万回の再生回数になっているのですが、この再生回数はどのぐらいの凄さなのかなど比較できるデータや凄さについての解説をお願いします。

◆2011年のYoutube再生回数
2011年のYoutubeに公開された動画の総再生回数は1兆回を超えています。2011年に全世界で最も視聴された動画は「史上最低の曲」として話題を集めたRebecca Blackで約2700万回。

日本国内で最も再生された動画は、カンヌ国際広告祭で金賞を受賞した「祝!九州九州新幹線全線開CM180秒」が約380万回。この「祝!九州九州新幹線全線開CM180秒」は公開されたのが2011年3月ですので380万回の視聴に1年かかったことになります。これを一ヶ月平均で考えれば31万回の再生回数となりますが、前田敦子さんの会見は投稿から24時間で100万回の再生というのは「祝!九州九州新幹線全線開CM180秒」の勢いを上回ります。これは非常に凄いことだと言えます。
 
なお、野田首相の総理ビデオメッセージ「社会保障と税の一体改革について」の再生回数は8729回であり、100万回の再生が如何に凄いかお分かり頂けると思います。

Q4:もし分かればでよろしいのですが、今後のAKBのネット上での活動についての予測をお伺いしたいと思います。

AKB48は従来からコアなファンに活動を支えられたアイドルグループでした。そのためファン一人一人との「繋がり感」を大切に出来るソーシャルメディアは相性が良いと考えられます。そのためソーシャルメディアを中心としたプロモーションを継続していくと考えられます。

◆世界展開
ソーシャルメディアを活用した世界的に有名なアーティストとして「Lady GaGa」が挙げられますが、AKB48もGaGaのように個々のメンバー自らがメディアとなり、全世界へ向けた展開を行っていくのでは無いかと予想します。ソーシャルメディアを使わずに他国へプロモーションを行うには莫大な費用がかかりますが、ネット上で全世界と繋がっているソーシャルメディアのプロモーションなら低コストで世界へ向けて発信出来ます。
 
◆オウンドメディアの確立
AKB48に限らずマイクロソフトやアップルといった世界のメディアが注目する企業は大規模イベント等には顔を出さず、ソーシャルメディアを中心とした自社所有のオウンドメディアで情報を発信し、それを見た世界のマスメディアがそれを拡散するという構図が出来上がっています。
 
今回のAKB48でも日本のトップアイドルの引退ということもあって日本のメディアがこぞってとりあげましたが、海外の有名企業と同様の構図になっています。
  
この図式が維持出来ればAKB48が何かイベントを行う時にはまずソーシャルメディア→マスメディアという図式となり、何かのイベントを行う際にも報道機関の調整等を行う必要がありません。より柔軟に新ユニットの創造や、ユニットメンバーの組み換え等が行いやすく常に「新陳代謝」する、メディア機能を持った変化するアイドルユニットが誕生するのでは無いでしょうか。

◆ソーシャルゲームによる新たなマネタイズ
国内のビジネスに目を向ければ、メンバー一人一人が個性的であり、一人一人がコアなファンに支えられています。こういった特性を活かして「ソーシャルゲーム」にも進出しています。CD、コンサート以外にも「ソーシャルゲーム」を新たな収益源として活動の幅を拡げて行くと予想されます。

◆ビデオチャットにより「対話権」の販売
Google+にはハングアウト機能と呼ばれる、ビデオチャットを行う機能があります。これを利用して例えばCDに「ハングアウト券」を付けて、AKB48とビデオチャットが出来る権利がファンに与えられるかもしれません。

※インタビューが行われたのは2012年4月5日のことであり、上記の内容は当時の知見、状況に基づいています。



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  • プロフィール

    大元隆志(おおもと たかし) 通信事業者のインフラ設計、提案、企画を12年経験。異なるレイヤーの経験を活かし、技術者、経営層、 顧客の三つの包括的な視点で経営とITを融合するITビジネスアナリスト。業界動向、競合分析を得意とする。Yahoo!ニュース講談社 現代ビジネスCNET翔泳社EntepriseZineITmedia マーケティングITイニシアティブ、等、様々なIT系メディアで活躍する。SNSビジネス特集でNHK教育テレビに出演。ソーシャルメディア系イベントしては国内最大級となるソーシャルカンファレンス主催者。著書に「ビッグデータ・アナリティクス時代の日本企業の挑戦」「ソーシャルメディア実践の書」、「IPv4アドレス枯渇対策とIPv6導入」がある。所有資格 米国PMI認定PMP、シニアモバイルコンサルタント等。