グーグルの節税策 ダブルアイリッシュ、ダッチ・サンドウィッチとは?

この所グーグルやアマゾン、フェイスブックといったインターネットの「ハイパー・ジャイアンツ」に対する新たな課税問題が欧州を中心に賑わっている。先日、インドでもGoogle Indiaが当局より税収について76万ルピーの罰金を課せられた。

その根底にあるのは、グーグルやアマゾンが用いる、複雑だが「合法」の節税策によって、グーグルに至っては2.4%程度しか法人税を支払っていない状況がある。

節税の秘密はタックスヘイブン

ブルームバーグの調査によると、グーグルはバミューダ諸島にあるシェル・カンパニーに98億ドルの資産を移すことで、全世界の税金20億ドルを回避しているという。

バミューダ諸島は有名なタックスヘイブン(税金避難地)と呼ばれる地域のひとつ。タックスヘイブンとは資源や人口に乏しい国が税収入を諦め富裕層を誘致することで国を潤す戦略の一つである。有名な成功例に「モナコ」があげられる。モナコは税収を諦める代わりに世界中から富裕層を誘致することに成功し、世界有数のリゾート地として憧れの土地になった。
 
タックスヘイブンの中でもバミューダ諸島はモナコ同様の「完全無税国」であり、法人所得や特定の所得に対して完全に無税となる。また、銀行取引の内容は法律によって秘匿される。

グーグルはこのバミューダ諸島のような「タックスヘイブン」を節税に利用することで世界各国からの納税を回避している。

グーグルが用いるダッチサンドイッチ&ダブルアイリッシュ

グーグルが用いる「ダブルアイリッシュ」や「ダッチサンドイッチ」と呼ばれる節税対策は以下のように行われる。

 1) 米国のグーグル本社がアイルランドのGoogle Ireland Holdings に海外でのビジネスライセンスを与える

 2) Google Ireland Holdingsはライセンス利用料として米国本社に利用料を支払う。
   ※Google Ireland Holdingsはタックスヘイブンのバミューダ諸島が管理会社になっているため、アイルランドでの法人税が免除される。

 3) Google Ireland Holdingsは、更にアイルランドの子会社Google Ireland Ltd.にサブライセンスを付与する。
   これにより、Google Ireland Ltd.には日本等を含む米国外事業の収入の殆どが計上される。

 4) ここで、Google Ireland Ltd.はGoogle Ireland Holdingsに直接ライセンス料を支払わず、オランダのGoogle
Netherlands Holdings BVにライセンス料を支払う。
   ※アイルランド-オランダ間の租税条約によって、アイルランドからオランダに対するロイヤルティ支払には源泉税が徴収されない。オランダを経由することでバミューダ諸島への支払いに関して源泉税が非課税となる。

 5) 更に、オランダのGoogle Netherlands Holdings BVから、Google Ireland Holdingsにライセンス料が支払われる。

このようにタックスヘイブンを上手く利用することでグーグルは大幅な節税に成功している。アイルランドに二つの会社を持つ節税策を「ダブルアイリッシュ」、途中にオランダを経由させることを「ダッチサンドイッチ」と呼ぶ。

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多くのハイテク企業が活用

こういった節税策を取っているのはグーグルだけでは無い。フェイスブックもアップルも利用している。アップルは1980年代から「ダブルアイリッシュ」を活用し、世界中から生まれる利益をタックスヘイブンの地域に作った企業へ移していた。

フェイスブックやアマゾンも同様の租税策をとっている。ここ最近の大手ハイパー・ジャイアンツに対する、税の議論の根本はこういった本来納められるべき自国内で発生した利益があるべき所に収められるべきという所が発端となっている。

新たな税の形?

しかしながらグーグルは、ヨーロッパ本社で約2500人を雇用し、数十万の企業がオンラインで成長する手助けをすることで、アイルランド経済に大きく貢献している。とブルームバーグに回答している。

欧州の政府には税金として納めていないが、グーグルが自力で富を各地域に分配し、公益性のある事業で各国の発展に貢献しているという持論だ。確かに、これには一理ある側面もあるように思う。

政府に税金として納めた方が有効活用されるのか、経営手腕が高く公益性のある企業が利益を獲得し、それを地域に再分配する。どちらが良いかと言われると中々難しい問題だ。これからの「富の分配」という観点と、インターネットの普及で世界中がボーダレスになりつつある過渡期では、グーグルの主張は新たな税金の形なのかもしれない。

しかし、「今」の世界の有り方で国民から国の運営を任せられている「政府」にとっては、この新しい形をそのまま迎合するわけにはいかない。さらに、グーグルが雇用を生み出しているとはいっても製造業等と比べれば僅かなものでしかない。現状ではグーグルの節税策は違法では無いので、どちらが勝つのかまだ当面決着は付かないだろうが、欧州やグーグルだけの問題ではなく、これからのボーダレス社会において共通の課題とも言えるだろう。



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プロフィール

大元隆志(おおもと たかし) 通信事業者のインフラ設計、提案、企画を12年経験。異なるレイヤーの経験を活かし、技術者、経営層、 顧客の三つの包括的な視点で経営とITを融合するITビジネスアナリスト。業界動向、競合分析を得意とする。Yahoo!ニュース講談社 現代ビジネスCNET翔泳社EntepriseZineITmedia マーケティングITイニシアティブ、等、様々なIT系メディアで活躍する。SNSビジネス特集でNHK教育テレビに出演。ソーシャルメディア系イベントしては国内最大級となるソーシャルカンファレンス主催者。著書に「ビッグデータ・アナリティクス時代の日本企業の挑戦」「ソーシャルメディア実践の書」、「IPv4アドレス枯渇対策とIPv6導入」がある。所有資格 米国PMI認定PMP、シニアモバイルコンサルタント等。