「変質したセルフブランディング」特集で感じたソーシャルメディアの変化

PRESIDENT Online スペシャルで「変質したセルフブランディング」という記事が掲載されており、現代の自己啓発ブーム、セルフブランディングについて考察がなされている。

検証方法として2003年以降に発売された「ブランディング本」の内容を抽出し、年代毎に著者がどのような点を重要視しているのか、ブランディングが必要とされる時代背景などが記載されている。こうやって抽出してみると確かに年代毎に「訴えている」ポイントは変化しているようで非常に興味深い特集となっている。

この書籍の中に光栄にも私の著作「ソーシャルメディア実践の書」も含まれていたのだが、この書籍が発売されたのが2011年6月だから執筆していたのは2011年1月から2011年5月位までだったように思う。書籍の企画が始まったのは2010年末だった。今から二年前の状況に基づいて書いているので、今読み返すと当時と私のソーシャルメディアに対する考え方が違っている部分がいくつかあることに気づいたので、当時と少しことなる状況を書いてみたい。

個人が活躍できた2009年~2011年上期まで

企画が始まった当初はTwitterが大ヒットし、続いてFacebookと「ソーシャルメディアが一番ビジネス抜きで楽しかった」時期だったと記憶している。この頃はまだソーシャルメディアを利用したマルチ商法や寄付金詐欺のようなことも耳にすることなく「純粋につながり」を楽しめたほのぼのとした時代だった。

また、大手のメディア、特にマスメディアはそれほどソーシャルメディアを意識していなかった時代であったため、純粋に情報発信力でTwitter、Facebook、ブログで注目を集める個人が多く輩出された時期だったのでは無いだろうか。東日本大震災でマスメディアが信頼を失い、ソーシャルメディアを活用したジャーナリズムが日本で注目されたのもこの時期だ。少なくともソーシャルメディアの中では「企業」よりも「個人」の方が「信頼」があり「発信力」があった。そういった情報発信力のある個人の繋がりで「同好会的なイベント」が頻繁に企画されていた時期もこの頃だった。私もソーシャルカンファレンスの第一回を開催したりもした。

つまり、書籍を書いていた当時は「個人」がソーシャルメディアを使って「有名になることが出来る、社会に影響力を持つことが出来る」そんなことを純粋に信じていた時代だった。

2011年下期~ソーシャルメディアにもマスの手法が及びだす

しかし、2011年後半辺りからメディアがバックについてプロモーションを行い、スターダムに駆け上がっていく人が現れだした。2012年にはソーシャルメディアは市場にしっかり認知され、企業が数千人規模の大規模イベント等を行うようになっていった。そして、ソーシャルメディアを使って「非社会的」な行動を取る「個人」も現れだした。ソーシャルメディアの中で「企業」のプレゼンスが高まり「個人」より「企業」がソーシャルメディアでも「信頼」される傾向が出てきた。こうなってくると、「個人」の力では「企業」の発信力には敵わなくなってきたように思う。

実際、2012年以降にTwitterやFacebookを開始して、「炎上芸」以外でフォロワーが一万人を超えるほどに注目された「素人」は殆ど存在しないのではないだろうか。いや、五千人と考えても難しいだろう。

なので「無名の個人」がたやすく世間の注目を集めることが出来ると考えるのは、昔ほど容易ではなくなったことを理解しておいて欲しい。

それでも「ブランディング」を意識することは重要だと思う

そもそも「ソーシャルメディア実践の書」の私が希望したタイトルは「ソーシャルメディアリテラシー」だった。「認知の獲得」を目的にするのではなく、「他者にどう見られているか」を理解し「信頼される」方法論を書いている。

「ブランディング」とは「世間の目(ソーシャルメディア上の聴衆)」が「決める」ものであり、「当人」にはコントロール出来ない。コントロール出来るのは「見せ方」だけであり、「イメージ」は作り上げられ一人歩きする。ソーシャルメディアにアカウントを作るということは誰でも「世間の目」にさらされることになる。従来世間の目にさらされることは「芸能人の役割」だったが、「素人」も同じようにさらされるようになってしまった。

ソーシャルメディア上での振る舞いがどんな影響があるのかを理解し、上手に振舞うことは「自分を守る」「自分の所属する組織を守る」ことに繋がると考えている。

そのため「ソーシャルメディアで有名になる」という可能性は2010年の頃と比べて可能性は大きく低下したと思うが、「ブランディング」を意識することは今でも変わらず大切だと思っている。

こういった「筆者自身」の考え方の変化が起きている点を踏まえて、特集を読んで頂ければ幸いだ。

最後に、PRESIDENT Onlineで紹介された本書の従来型ブランディングと、ソーシャルブランディングの違いの記載部分全文を本書から抜粋する。

ノン・バーバル・コミュニケーション重視の従来型パーソナルブランディング論

「メラビアンの法則」という言葉を聞いた事がある方も多いのでは無いでしょうか?

これは、米国の心理学者アルバート・メラビアンが1971年に提唱した概念であり、人が第一印象を決定するために、視覚、聴覚、言語の三要素のうち、どの要素にどの程度、左右されるのかを実験した結果から導き出された法則です。

この実験によって、以下の結果が提唱されました。
・視覚情報 (Visual) – 見た目・身だしなみ・しぐさ・表情・視線 … 55%
・聴覚情報 (Vocal) – 声の質(高低)・速さ・大きさ・テンポ … 38%
・言語情報 (Verbal) – 話す言葉そのものの意味、会話の内容 … 7%

「メラビアンの法則」によると、人は誰かの印象を決定する判断材料として、話の内容、すなわちバーバル・コミュニケーション(言語によるコミュニケーション)による影響は僅か7%にすぎず、外見や、しぐさ、声のトーンといった、ノン・バーバル・コミュニケーション(非言語によるコミュニケーション)が93%も占めており、印象の大半は会話以外の部分で決定してしまうという事です。

そのため、従来型パーソナルブランディングでは「人の第一印象を決めるのは見た目である」と説き、如何にノン・バーバル・コミュニケーションによって、初対面の第一印象を良くするかという事に、重点を置いた物が多く存在します。

※この実験の本来の目的は「発信者が曖昧な態度を取っている場合の、受け手側の判断基準は何か」を調査するための物であり、通常のコミュニケーション時には、当てはまらないとされています。また、話の内容よりボディランゲージが大事と説いているわけでもありません。

■ソーシャルメディアの台頭で代わる新パーソナルブランディング論

しかし、Twitter、Facebookに代表されるソーシャルメディアが急速に台頭してきた現代において、メラビアンの法則を重視した、パーソナルブランディングは時代遅れになろうとしています。何故なら、TwitterやFacebookが普及してきた現在のコミュニケーションでは「実際に会う」前に、人々の出会いはソーシャルメディアで訪れるからです。

ソーシャルメディアの時代、皆さんの第一印象を決定づけるのは「生身のあなたを見た第一印象」ではありません。オンライン上での、あなたの言動や活動です。あなたがこれから会おうとしている人物は、あなたに会う前に、あなたがどういった経験を積んできた人物か?どの程度の知識量を持っているのか?それは机上の空論では無く、具体的な活動に繋がっているのか?といった事を、あなた以上に「あなたを知っている」時代が訪れたのです。

このような時代において重視する事は、「第一印象」ではなく、「あなた自身の魅力」を向上させる事です。ノン・バーバル重視のパーソナルブランディングが「メッキを磨くテクニック」重視だったのに対して、これからのパーソナルブランディングは「あなた自身」が重要な要素となります。いわば、メラビアンの法則で軽視されていた7%の部分が重視される時代が来たという事です。

幾ら「メッキ」を磨いてもソーシャルメディアの時代には、あなたの魅力は口コミによってあっという間に広がり、永遠にオンラインの上に記録される事になります。反対にソーシャルメディアで魅力を上手く伝えることが出来れば、年齢や性別、肩書きに関係なく、誰でも平等に自分の才能を世界に知って貰うチャンスが訪れたとも言えます。

本書では、自身のポテンシャルを向上させる方法と、ソーシャルメディアを活用して、魅力を伝える方法の二つを体系立てて解説します。しかし、本書に目を通してすぐに効果が出ることを約束する物ではありません。全ての内容を理解し、実践し、効果が出るようになるには早くても半年程は必要とするでしょう。しかし、その努力の後に、あなたのブランドが確立している事を約束します。

ソーシャルメディア実践の書



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    大元隆志(おおもと たかし) 通信事業者のインフラ設計、提案、企画を12年経験。異なるレイヤーの経験を活かし、技術者、経営層、 顧客の三つの包括的な視点で経営とITを融合するITビジネスアナリスト。業界動向、競合分析を得意とする。Yahoo!ニュース講談社 現代ビジネスCNET翔泳社EntepriseZineITmedia マーケティングITイニシアティブ、等、様々なIT系メディアで活躍する。SNSビジネス特集でNHK教育テレビに出演。ソーシャルメディア系イベントしては国内最大級となるソーシャルカンファレンス主催者。著書に「ビッグデータ・アナリティクス時代の日本企業の挑戦」「ソーシャルメディア実践の書」、「IPv4アドレス枯渇対策とIPv6導入」がある。所有資格 米国PMI認定PMP、シニアモバイルコンサルタント等。