体罰と耐罰

2013年1月31日、AKB48の「峯岸みなみ」さんが、週刊文春に「お泊まり」の様子をスクープされ、YouTubeのAKB48公式チャンネルに「丸刈り」姿の動画を投稿した。古めかしい「坊主頭による反省」とAKB48の戒律の厳しさ、AKB48のメンバーが坊主姿になったというインパクトもありメディア各社はこぞって報道している。

一方で、メディア各社はここ最近、大阪市立桜宮高や全日本柔道連盟の体罰問題に関して批判的な報道が目立つ。

ネットの普及で身体より、精神へ危害を加える

私は最近仕事柄、ネットイジメに関して調査することが多いのだが、スマートフォンやソーシャルメディアの普及によって「イジメ」は身体に対する暴力より、隠し撮りを行った写真を勝手にSNSに投稿し笑いものにしたり、本人の断りなく写真を使用しSNSでなりすます、「精神」にダメージを与えるイジメが増えてきている。

今回の件で、体罰という行為もネットの普及で少し形を変えてきているように感じた。聴衆に晒し者にされることで罪をつぐなう「”’耐罰”’」だ。

「耐罰」はメディアと聴衆によって制裁が加えられる

峯岸みなみさんは自主的に頭を丸めたという。もし、これが事実なら、誰に指示されることなく、精神的に追い詰められて「頭」を丸めたということになる。

20歳の女性が恋人と一夜を共にする。人間として何ら恥じることの無い行為だが、メディアによる隠し撮りという行為によって、まず第1回目の「メディアによる耐罰」が執行された。そして、AKB48の戒律「恋愛禁止」を破ったことによる自責の念から、頭を丸める。頭を丸めた根本原因は、AKB48の戒律が問題だったのか、メディアの隠し撮りが問題だったのか、本当に峯岸みなみさんの行為が問題だったのか、「体罰」を批判するなら、「メディアによる耐罰」の影響も考えるべきでは無いだろうか。

峯岸みなみさんがYoutubeを使って坊主頭を発表したことで、ソーシャルメディアの力で瞬く間に拡散した。そしてあっというまに「峯岸みなみさん」の坊主頭を利用したコラが出回り、彼女は笑いものになっている。これが第二段階の「聴衆による耐罰」だ。

一度出回ったデジタルのデータは半永久的にネットを彷徨い続ける。「体罰」は多くの場合一時的なものだが「耐罰」は永遠につきまとう。そして、ソーシャルメディアの普及で「耐罰」は誰でも参加できるようになった。

スマートフォンやソーシャルメディアは単にハイテクの進化だけでなく、人の行動や価値観にも大きな影響を与えてきている。連日のように「体罰」を批判し、自分達が晒し者にする「耐罰」には無頓着な社会の現状に違和感を感じざるを得ない。



この記事のタグ:


関連する記事

  • URLフィルターでは十分な対策となり得ないネットいじめの実態

  • ある一人の少女の死に学ぶ、ネットイジメの実態。逃げ場を失う子供達。

  • 米NY州 「ネットいじめ防止法」成立。深刻化するハイテク・イジメ。


  • プロフィール

    大元隆志(おおもと たかし) 通信事業者のインフラ設計、提案、企画を12年経験。異なるレイヤーの経験を活かし、技術者、経営層、 顧客の三つの包括的な視点で経営とITを融合するITビジネスアナリスト。業界動向、競合分析を得意とする。Yahoo!ニュース講談社 現代ビジネスCNET翔泳社EntepriseZineITmedia マーケティングITイニシアティブ、等、様々なIT系メディアで活躍する。SNSビジネス特集でNHK教育テレビに出演。ソーシャルメディア系イベントしては国内最大級となるソーシャルカンファレンス主催者。著書に「ビッグデータ・アナリティクス時代の日本企業の挑戦」「ソーシャルメディア実践の書」、「IPv4アドレス枯渇対策とIPv6導入」がある。所有資格 米国PMI認定PMP、シニアモバイルコンサルタント等。