ハリーポッター祭りが挑戦する、テレビ局にとっての番組ホームページのあり方とは?

日本テレビが「ハリー・ポッター」全8作品を春、夏、秋にかけて放送する「ハリー・ポッター祭り」を開催する。春のキャンペーンとして、まず3月15日に「ハリー・ポッターと賢者の石」、3月22日に「ハリー・ポッターと秘密の部屋」を2週連続で放送する。

このキャンペーンの舞台となる「金曜ロードSHOW!」は日本テレビがスマートデバイスや外部媒体と連動する「JoinTV」を積極的に展開している。これまでにもエヴァンゲリオンや20世紀少年、サマーウォーズと「テレビをおもちゃにする」を合言葉に常に新しい試みで「テレビの枠」を超えようとしている。

ハリーの世界にチェックインするとバッジが貰える

今回の「ハリー・ポッター祭り」では各放送ごとに「バッジ」を手に入れることが出来る。このバッジは「ハリー・ポッター祭り」用に特別に作成されたものであり、この放送でしか手に入れることが出来ないというファンにはたまらないものになっている。ファンにとってはこれだけでも嬉しい仕掛けだが、更にこのバッジを八個集めると、4泊6日ロンドンの旅「ハリー・ポッター スタジオツアー」がペア二組四名に当たるという。

ハリーポッター祭り用バッジ

でも「テレビを見てどうやってバッジを貰うの?」と誰もが疑問に感じるところだが、バッジは「ハリーの世界にチェックイン」することで入手出来る。チェックインの方法は下記二種類のどちらかの方法でチェックインすることが出来る。

 ①放送中に地デジ対応テレビのリモコンのdボタンを押す
  放送中に地デジ対応テレビには必ずついているdボタンを押すとチェックインすることが出来る。テレビがインターネットに接続されている必要は無い。
dボタンによるチェックイン

 ②放送中にスマートフォンをかざす
  放送中に、日本テレビの「wiztv」というアプリを起動したままテレビに近づけるとアプリがテレビの「音」に反応しチェックインが完了する。
wiztv

ポイントはどちらの方法であってもテレビがインターネットに接続されている必要は無い点だ。最近のテレビはインターネット接続機能は大半装備されているが「接続されていない」ことが、テレビとネットの連動のネックになっているが、今回の方法ならインターネットに接続されている必要は無い。こういった細かい配慮は他社がどうようのキャンペーンを展開するときに参考になるだろう。

チェックインが終了すればバッジが貰えるが、それ以外にも「魔法ポイント」を貯めるゲームが楽しめる。放送中に「魔法の杖」が光だし、「赤」「緑」と書かれた文字が点灯する。「魔法の杖」が光っている間にタイミング良くリモコンの色ボタンを押すと魔法ポイントがゲット出来る。
魔法でPON

この魔法ポイントを40000ポイント貯めた魔法使いだけが、ロンドンプレゼントの応募資格を手に入れることが出来る。

長期間のキャンペーンを継続する「仕掛け」

冒頭で述べたように「ハリー・ポッター祭り」は春、夏、秋という長期間に渡って継続する。今週バッジを貰っても「夏」には忘れているかもしれないし、「秋」には熱も冷めているかもしれない。それにバッジを手に入れても放送中にしか見れないのはファンにとっては残念だろう。

そんな長期間のキャンペーンで放送以外の時にも視聴者が「ハリーの世界」を堪能できるように「OFFAIR」時の場所が提供されている。
放送していない時でもハリーに会える

バッジや魔法ポイントの累計は自動的にこのサイトへ送信されているので、放送されていない時でもいつでも確認することが出来る。このサイトはインターネット上に公開されているので、スマートフォンやパソコンがあればいつでも友達にバッジを見せることが出来る。プレゼントの応募なども全てのこのサイトから行える。

この公式サイトでは、ハリーポッタークイズやハリー杉山氏による英会話教室など独自コンテンツも展開され、キャンペーン期間を通して公式サイト自体も楽しめる工夫がなされている。
ONもOFFも楽しめる

番組ホームページが変わる

今回の記者会見は「ハリーポッター祭り」が主題であったわけだが、興味深いと感じたのは「番組ホームページの活用」という点だ。今までテレビ局が用意している番組ホームページを訪れた人はどれ位いるだろう?あるいはテレビ局の公式サイトを訪問したことのある人は?

テレビとは言わずと知れた「最大のリーチ力」のあるメディアである。しかし、それに関連する公式サイトに訪れる人は少ない。あくまでも番組は番組、公式サイトは公式サイトと分けて作られていることが多いため、番組宣伝やキャストの紹介程度しか無く、視聴者がわざわざ訪れる理由は多くない。

しかし、今回のハリーポッター祭りは「公式サイト」がある前提でキャンペーンが仕組まれている。そもそも公式サイトに訪れなければロンドンツアーに申し込むことが出来ないのは勿論だが、放送期間外の視聴者とハリーポッターの関係を補完する役割を担っている。

日本テレビの試みが上手く行けば、従来までは番組放送中しかハリーポッターに接しなかった視聴者が、春から秋の期間までハリーポッターを話題にするかもしれない。僅か三時間程度の接触時間がOFFAIRの時も継続することで接触時間とマインドシェアは飛躍的に向上する。

テレビのリーチ力とインターネットのアクセシビリティを上手く組み合わせた意欲的な試みだと感じた。

また、テレビを見ている人、スマートフォンを操作している人、ホームページを見ている人を「一人の個人」として認識している点も見逃せない。クロスデバイス、クロスプラットフォームを共通IDで結ぶ本キャンペーンはビッグデータの取り組みの第一歩としても多くの企業にとって参考になるだろう。

バランス感覚に優れた日本テレビ製作陣

日本のテレビ業界で新しいテクノロジーとの連携では他局と比べて十馬身位先を走っている日本テレビだが今回の発表で、さらに感心したことがあった。会場の質問者から「魔法ポイントをゲットするスマートフォンアプリの展開は無いのか?」との問いに「スマートフォンアプリではまだ楽しめる人が少ない」と答えていた。

新しいテクノロジーを先進的に導入する企業が陥りやすい落とし穴に「先を行き過ぎて、大多数の人の視点を見失う」ことにあると思うが、先を走りつつも、自分たちが「マスメディア」であること、多くの人に番組を楽しんで貰うことという「バランス感覚」を失っていない点に非常に感心させられた。

また、細かいながらもセカンドスクリーンでの連動では映画に集中出来ないなどといった課題も認識し、今回のハリーポッターでは改善を試みている点でも、様々なターゲットを想定しながら着実に前進していると感じた。

テレビを見なくなって久しいが、私も今週末は「ハリーポッター」になってみよう。



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    大元隆志(おおもと たかし) 通信事業者のインフラ設計、提案、企画を12年経験。異なるレイヤーの経験を活かし、技術者、経営層、 顧客の三つの包括的な視点で経営とITを融合するITビジネスアナリスト。業界動向、競合分析を得意とする。Yahoo!ニュース講談社 現代ビジネスCNET翔泳社EntepriseZineITmedia マーケティングITイニシアティブ、等、様々なIT系メディアで活躍する。SNSビジネス特集でNHK教育テレビに出演。ソーシャルメディア系イベントしては国内最大級となるソーシャルカンファレンス主催者。著書に「ビッグデータ・アナリティクス時代の日本企業の挑戦」「ソーシャルメディア実践の書」、「IPv4アドレス枯渇対策とIPv6導入」がある。所有資格 米国PMI認定PMP、シニアモバイルコンサルタント等。