成長領域を売却し、衰退産業を買収するパナソニック

にわかに信じ難いニュースだった。「パナソニックが出版社買収検討 電子書籍を強化 ヘルスケア事業は売却へ

スマホを含めた携帯電話など、システム関連機器事業は営業赤字となっており、「製品の性能で勝負するよりも、コンテンツを向上させることが最優先」(同社幹部)

と、言うのがコンテンツ事業買収の意向らしい。確かにスマートフォンに限らず家電製品はクラウドとの連携が鍵になっている。グーグルやアマゾン、アップルもコンテンツを自社のプラットフォームへ集めようと必死だ。

なるべきはコンテンツアグリゲータ

しかし、グーグルやアマゾンはコンテンツアグリゲータを目指しているわけで、コンテンツホルダーを目指しているわけではない。コンテンツホルダーであるソニーはコンテンツを持っているが故のしがらみでネットへの対応が後手後手になりウォークマンというブランドをアップルに明け渡した。今の時期にコンテンツホルダーになろうとするなんて、まるで2000年頃のような感覚に襲われる。

それに出版社自体が本が売れなくて誰もが頭を抱えているこの時期に出版業を買収するとは、出版社自体が一番驚くかもしれない。

モバイルヘルスは今後の成長領域

デバイスの世界で注目を集めるウェアラブルコンピュータだが、その応用領域としてのモバイルヘルス事業への期待は高い。しかし、これも売却するという。

血糖値測定センサーや補聴器、電子カルテ作成システムなどを手掛ける「ヘルスケア事業」は売却する方向で、すでに複数の企業などに打診している

第二次世界大戦以降、紛争による死亡は激減し、老衰による自然死を除けば癌や心筋梗塞、脳卒中が死因のトップ5を占める。これは先進国全てに共通する傾向であり、高齢化社会に突入している先進国では今後は「ヘルスモニタリング」の必要性は増すと考えられている。ウェアラブルコンピュータで血糖値や心拍数、歩行距離を定期的にモニタリングし、生活習慣の改善や予防に繋がれば医療費の削減になり、ひいては国家予算の支出を抑えることにもつながるからだ。

こういった精密性や信頼性が求められる領域では日本メーカは海外に対するブランド力は十分だろう。現にパナソニックでもヘルスケア事業は黒字部門だったという。

研究費が嵩むヘルスケアより、出版業の買収は短期的には利益率の向上が見込めるかもしれないが、大切な成長領域への足がかりを失ったように思う。私の予想が外れ、2015年位にはパナソニックのコンテンツ事業が功を奏していることを願いたい。



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プロフィール

大元隆志(おおもと たかし) 通信事業者のインフラ設計、提案、企画を12年経験。異なるレイヤーの経験を活かし、技術者、経営層、 顧客の三つの包括的な視点で経営とITを融合するITビジネスアナリスト。業界動向、競合分析を得意とする。Yahoo!ニュース講談社 現代ビジネスCNET翔泳社EntepriseZineITmedia マーケティングITイニシアティブ、等、様々なIT系メディアで活躍する。SNSビジネス特集でNHK教育テレビに出演。ソーシャルメディア系イベントしては国内最大級となるソーシャルカンファレンス主催者。著書に「ビッグデータ・アナリティクス時代の日本企業の挑戦」「ソーシャルメディア実践の書」、「IPv4アドレス枯渇対策とIPv6導入」がある。所有資格 米国PMI認定PMP、シニアモバイルコンサルタント等。