仕事ハッケン伝 「明日ちょっと頑張ろう」

「働く人」にフォーカスした「仕事ハッケン伝」というNHKの番組がある。2011年にファーストシーズンが始まり、いよいよ4月4日からサードシーズンが始まる。今回、NHKの新しい取り組み「番組ファン&ブロガーのための収録見学会」にお招き頂いたので、参加した。

働くみんながちょっと前を向ける番組にしたい

収録見学会冒頭で番組プロデューサの河瀬氏は、このサードシーズンにかける思いをこう語った。

“仕事が難しい時代。私が入社した頃のバブルの時期は何もかもがイケイケだった。しかし、今はどうだろう。就職難やブラック企業という言葉が流行り、働くことに意義を見出せず、まるで行き場を失ったように戸惑う人たち。

そんな時代だから「ほんの少し元気になれる番組が必要だと思った。ほんの些細な”ありがとう”を大切にする人たちにスポットライトを充てる番組が作りたかった。

確かにそうだ。ネット世論の一部では「会社勤め」をまるで悪いことのように語る人も居る。コピー取りなんてやらなくて良い、満員電車の通勤なんて人生の無駄、サラリーマンなんてATM、社蓄。「頑張ることが評価されない時代」と言えるのかもしれない。

でも、実際には「頑張って働いている人」に、私たちは支えられて生きている。いや、「頑張って働いている人達が支えあって生きている」のが社会なのだ。

人間は人の頑張る姿に感動する

収録見学会ということだったので、公開前の番組を見せていただくことが出来た。

第一回目の放送はタレントの「吉木りさ」さんが「ハトバス」に一週間社員として派遣され、自分で企画を考え、添乗員をこなすというもの。

番組の詳細は放送前なので避けるが、印象に残ったワンシーンに吉木さんが一生懸命考えた企画がボツになるシーンがある。この時「学生は努力で認められるけど、社会人は努力しましたじゃ認められないんだよ」と一喝される。学生から社会人へと変わる時、誰でも一度は通る道かもしれない。悔しい気持ちをグッと抑え、より良い企画にするためにアイデアをブラッシュアップする吉木さん。

グラビアアイドルという華やかなイメージのある世界の人とは思えないひたむきさで懸命に仕事をこなしていく姿に、番組に引き込まれてしまった。この番組を見るまでは吉木さんのことは知らなかったが、番組を見終わる頃にはすっかりファンになっていた。

番組が見終わったあとで感じたことは「社会人が認められるには努力では無く成果」それは痛いほど良く分かっている。でも、人間は「ひたむきに努力する人の姿に感動する」ということだった。

そして、そういう姿を見ると「自分も頑張ろう」と勇気を貰えることだった。

視聴率で測れない番組の価値

正直なところ、今回NHKの方にお招き頂いて、こうしてブログを書く行為が視聴率に貢献出来るとは思えない。わずか数人の新たな視聴者が増えるだけだろう。しかし、一視聴者としてこの番組の素晴らしさを書き留めることは出来る。

例えば、一千万人の人間が見たけど半年後には忘れられている番組と、百万人しか見ていないけれど十年後に「あの番組良かったよね」と語られる番組。十万人しか見ていないけど、その番組を見たことで「働くことに生き甲斐を見失っていた人が”頑張ろう”と価値観を揺さぶられた番組」。

この番組は明らかに「価値観を揺さぶる」番組だ。もし、今仕事につまずいて、頑張ることに意義を見失っている人が居たら、ほんの少しだけ時間を作ってこの番組を見て欲しいと思う。「頑張ってる自分をちょと誉めてあげたくなる」はずだ。

そして、これから社会人になる人にも見て貰いたい。この番組に出てくる吉木さんは、皆さんのちょっと先の未来の自分になる筈だ。学生から社会人になる不安と期待。でもこの番組を見れば少し不安は和らぐだろう。社会に出れば試験問題と違って決められた正解なんてない。その道がわからなくて、しかられることもある。でも、それをサポートしてくれる先輩達が居るってことが見えるからだ。

バラエティでも無いし、派手な宣伝が展開されているわけでもないから視聴率が20%も行くなんてことは無いだろう。でも、この番組には「視聴率」では測れない価値がある。もし、お金を払ってまで見たいテレビ番組があるとすればこういう番組だ。

「ブラウン管を隔てると全てが嘘になる」という課題

今回の収録見学会でテレビの大きな課題を感じた。「ブラウン管を隔ててると全てが作り物に見えてしまう」という事象だ。これは広告にも同じことが言える。「広告」と認識して見てしまうとどれだけ美麗な言葉で埋められていても所詮は宣伝と感じ心にフィルターがかかってしまう。

今回の収録見学会は、放送を見る前に、あらかじめ収録セットを見せて貰えたのだがこの時、吉木りささん、中山秀征さん、首藤 奈知子といった出演者の人を間近で見ることが出来た。生身の人を見た後で放送を見たせいか、普段以上に出演者を身近に感じることが出来た。その後収録が終わると収録セットに戻り、出演者の方たちへのインタビューの場が設けられた。

生身の方々はとても魅力に溢れていた。芸能界という場で成功する人には「人としての魅力」が備わっているのだろう。その場に居るだけで周囲を和やかにさせる。

しかし、これがブラウン管を隔てると、饒舌に語り、いくら愛想の良い顔を振舞っていても全てが「作り物」に見えてしまう自分が居た。テレビという媒体自体が長い年月をかけて「テレビの世界は作り物の世界」というブランディングを確立してしまったのかもしれない。

インタビューの時に中山秀征さんが「今は嘘で塗り固めてしまっても、必ずバレてしまう時代。視聴者との関係性も変わっていくだろうし、変えていかなくてはいけない」と語っていた。当の芸能人も「嘘」を押し通すことは出来ないと理解している。私たちブロガーを招いたNHKの製作陣もブロガーに期待していることの一つに、テレビが作り上げてきてしまった「悪いブランディング」を少しずつ、払拭して貰いたいとの思いもあるのかもしれない。

少なくとも私は、今回収録の裏側、そこで働く多くの人を見ることが出来たお陰で、華やかな舞台の裏側にある「視聴者のために良い物を作りたい」と懸命に働く人達を見ることが出来た。だから、私はこの製作陣のファンになった。

テレビの裏側を全ての人に伝えることは難しいが、今回のような企画で視聴者にその裏側を見せることは「ブラウン管の向こう側も案外真実だ」ということを知って貰うには良い企画だと思う。

出世や評価が全てでは無い「働く」ということ

働き始めて2~3年の人はこんなことを思っていないだろうか。満員の電車に揺られて、疲れた顔が窓ガラスに映る日々。「今、自分のしていることは何の役にたっているんだろう」「私ここに居ることに意味なんてあるんだろうか」と。

働き始めて10年も経っている人には、この番組は子供っぽく映るかもしれない。しかし「お客さんの"ありがとう"という言葉」を励みに働いていた頃の淡い気持ちを思い出して、明日は後輩に奢ってあげたくなるかもしれない。

10年先の未来なんて誰も予想出来ずに不安を抱えている現代。そんな時代に自分達に出来ることって何だろうとふと考える。ずっと考えて結局、今を頑張るしかないと気づく。そんな頑張ってる人たちが「みんな笑顔」になれる番組「仕事ハッケン伝 サードシーズン」は4月4日から。見終わったあとにきっと多くの人が「前を向く自身」を持つことが出来るだろう。

こんな素敵な番組を出演者と共有する機会を提供頂いたNHKの皆さん有難うございました。



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  • プロフィール

    大元隆志(おおもと たかし) 通信事業者のインフラ設計、提案、企画を12年経験。異なるレイヤーの経験を活かし、技術者、経営層、 顧客の三つの包括的な視点で経営とITを融合するITビジネスアナリスト。業界動向、競合分析を得意とする。Yahoo!ニュース講談社 現代ビジネスCNET翔泳社EntepriseZineITmedia マーケティングITイニシアティブ、等、様々なIT系メディアで活躍する。SNSビジネス特集でNHK教育テレビに出演。ソーシャルメディア系イベントしては国内最大級となるソーシャルカンファレンス主催者。著書に「ビッグデータ・アナリティクス時代の日本企業の挑戦」「ソーシャルメディア実践の書」、「IPv4アドレス枯渇対策とIPv6導入」がある。所有資格 米国PMI認定PMP、シニアモバイルコンサルタント等。