NFV ホワイトペーパ翻訳 Executive Summary

通信業界において今もっとも話題を集めているSDN。主にクラウドデータセンタの話題が中心だったSDNだが、昨年よりモバイルオペレータを中心にNFV(Network Functions Virtualisation)というキーワードが話題を集めるようになってきた。

SDNはOpenFlowを用いた新たな通信プロトコルの議論が中心だが、NFVはネットワーク機能の仮想化が議論の中心となっている。(SDNについては厳密にはアプリケーションも含めた全体像だと筆者は認識しているが、現時点ではプロトコルと対応スイッチの議論に終始していると感じている。)

このNFVに関するホワイトペーパが公開されている。本文書はNetwork Functions Virtualisation – Introductory White PaperのExecutive Summaryを翻訳した物だ。内容の精度について保証するものでは無いので注意頂きたい。

もし、誤訳等お気づきの点があればコンタクトフォームからご連絡頂きたい。

Executive Summary

通信事業者のネットワークは、多種多様であり、なおかつ、増え続けるハードウェア・アプライアンスで溢れている。ネットワーク・サービスを新しく立ち上げるために、新たなハードウェアが必要になる場合が多いし、その新たな筐体を設置するための場所や電力を探すことは、ますます困難になってきており、下記の問題が生じている。

  • エネルギーコストの増大
  • 資本投資の問題
  • より複雑性を増すハードウェアベース・アプライアンスの設計・統合・オペレーションを行えるスキル所持者の欠乏

更に、ハードウェアベース・アプライアンスのEoL(End Of Life)は、期間が急速に短くなってきており、設備購入、設計、統合、展開といったサイクルを繰り返すと、事業者は殆ど利益を得られない。より悪いことに、サービスのイノベーションが加速するに従って、ハードウェアのライフサイクルが短くなってきている。

こういった負のスパイラルが、収入を得るための新しいネットワーク・サービスの誕生を阻害し、ネットワークを中心として繋がっている世界のイノベーションを抑制している。

NFV(Network Functions Virtualization)の目標は、標準的な仮想化技術を利用することによって、これらの問題に取り組み、いろいろな形のネットワーク装置を、データセンタやネットワーク・ノード、そして、エンドユーザの施設にある、業界標準の高容量サーバ、スイッチ、そして、ストレージへと統合することにある。

NFVは、固定やモバイルのネットワーク・インフラストラクチャにおける、いかなるデータプレーン・パケット処理、コントロールプレーン機能に対しても適応可能で有ると考えている。NFVは、Software Defined Networking (SDN)を高度に補うものと考えていることを強調しておこう。これらは、お互いに利益をもたらすものであるが、依存しあうものではない。ネットワーク機能は仮想化することが可能だが、SDN無しでも利用することが可能で、また逆も可能である。

NFVは、下記のものに限定されず、将来的に多くの恩恵をもたらすかもしれない。

 ・機器を統合し、IT産業のスケールメリットを生かすことによって、機器にかかるコストが減り、消費電力が減ることになる。
 ・通信事業者独特のイノベーション・サイクルを最小化し、市場への提供スピードを増す。ハードウェアベースな機能への投資をカバーするのに必要だったスケールメリットの考え方は、機能進化を実現し続けているソフトウェアベースな開発には、もはや適用できない。NFVによって、通信事業者は、マチュレーション・サイクルの期間を大幅に削減することができるのである。

 ・ネットワーク・アプライアンスの持つマルチバージョン、マルチテナンシーといったものの可用性によって、シングルプラットフォームに対して、複数のアプリケーション、ユーザ、テナントを使用することができるようになる。これによって、通信事業者は、サービスや異なるカスタマに渡るリソースの共有を行うことができるようになる。

 ・場所や顧客の組み合わせに基づくサービス導入をターゲットとすることが可能となり、必要に応じて、速やかにスケールアップ/ダウンできる。
 ・多種多様なエコシステム構築が可能になりオープン化を推進することが出来る。仮想アプライアンス市場に対して、単なるソフトウェアによる参加も可能になるし、弱小プレーヤーやアカデミアの参加も可能になる。イノベーションがより進められ、低リスクでクイックな、新規サービス、新規収入源をもたらす。

これらの恩恵を利用するためには、取り組まなければならない、いくつもの技術的課題がある。

 ・ハードウェア・ベンダが異なったり、ハイパーバイザーが異なったりしていても、移植することが可能な、ハイパフォーマンスな仮想ネットワーク・アプライアンスを実現しなければならない。

 ・通信事業者のOSS/BSSを再利用した、フルに仮想化されたネットワーク・プラットフォームへのマイグレーション・パスの効率を上げながら、カスタムメイドのハードウェアベース・ネットワークプラットフォームとの共存を実現しなければならない。OSS/BSSの開発は、NFVと一緒になって、一つのモデルを作り上げることにあり、これにこそがSDNの役割だろう。

 ・サイバーアタックや設定ミスからシステムを守りながら、多くの仮想ネットワーク・アプライアンスを(特に、レガシー管理システムによって)オーケストレーションし管理出来なければならない。

 ・NFVは、全ての機能を自動化するこが出来て、ようやくスケールできる。
 ・ハードウェア、ソフトウェアの障害からの回復レベルを適切にすること。
 ・異なるベンダからの仮想アプライアンスを複数統合しなければならない。通信事業者は、異なるベンダのハードウェア・ハイパーバイザー・仮想アプライアンスを、特別なコストをかけることなく、また、ベンダーロックインを避けながら、「mix & match」する必要がある。

この白書の執筆者は、これらの技術的問題の解決は可能、もしくは、可能になるだろうと考えている。そして、IT、ネットワーク産業は、互いを補う知識やリソースを合わせて、ともに協力して標準化アプローチや共通アーキテクチャへと幅広く手を組み、こうした技術的問題に対処して、相互運用を可能にし、スケールメリットを得る。

話の進展を加速するために、通信事業者主導のIndustry Specification Group (ISG)は、ETSIの力を借りて、メンバーシップを公開性のものとし、この白書で説明しているNFVへの技術的問題を解決しようとしている。ETSI ISGの活動はすでに始まっており、2012年の11月中旬までに完了する予定である。NFV推進のために、より多くの業界に対して、この白書への詳細フィードバックをお願いしている。

★NFV関連のドキュメント★
1.Executive Summary
2.イントロダクション
3.応用分野とユースケース
4.NFVの利点
5.NFVの実現手段
6.NFVの課題
7.NFV 推奨活動



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  • NFV ホワイトペーパ和訳 Network Functions Virtualizationの利点

  • NFV ホワイトペーパ和訳 応用分野とユースケース


  • プロフィール

    大元隆志(おおもと たかし) 通信事業者のインフラ設計、提案、企画を12年経験。異なるレイヤーの経験を活かし、技術者、経営層、 顧客の三つの包括的な視点で経営とITを融合するITビジネスアナリスト。業界動向、競合分析を得意とする。Yahoo!ニュース講談社 現代ビジネスCNET翔泳社EntepriseZineITmedia マーケティングITイニシアティブ、等、様々なIT系メディアで活躍する。SNSビジネス特集でNHK教育テレビに出演。ソーシャルメディア系イベントしては国内最大級となるソーシャルカンファレンス主催者。著書に「ビッグデータ・アナリティクス時代の日本企業の挑戦」「ソーシャルメディア実践の書」、「IPv4アドレス枯渇対策とIPv6導入」がある。所有資格 米国PMI認定PMP、シニアモバイルコンサルタント等。