ソーシャルメディアで不幸になる人達 ソーシャルゲーム編

ソーシャルメディアを使って「人脈が拡がった」、「仕事の依頼が来た」、「恋人が出来た」。国内でもTwiterブームが始まった2008年以降、ソーシャルメディアを絶賛する報道が後を絶たない。中東ではアラブの春が起こり、国内でも東北大震災時の活躍で、すっかり「正義のメディア」として定着しているように感じる。

しかし、ソーシャルメディアは光の部分だけではなく、闇の側面も持っている。ソーシャルメディアとは単なる道具であり、使い方によっては、毒にも薬にもなるのだ。
 
「ソーシャルメディア」を楽しく使っていた筈なのに、いつのまにか人生を踏み外すことになった人たちの「生の声」を紹介していきたい。今回紹介するのは、ソーシャルゲームにはまった人に話を聞いてみた。
 

無料という宣伝文句に釣られて…

 「初めは単なる暇つぶしのつもりでした。」そう語るのは、都内の会社に勤めるシステムエンジニアの柳利光さん(仮名)。柳さんは、テレビのCMで携帯電話で無料で遊べるゲームがあることを知り会員登録をした。「確かに、会員登録をしてゲームを遊ぶのは無料でした。でも、あと一歩でコンプリートと言う所で、宝が盗まれてしまって、カッとなったら、あとはもう夢中になっていました。」

 柳さんが遊んでいたのは、DeNA社が提供する「怪盗ロワイヤル」というゲームだ。プレイヤーは怪盗となって世界に散らばる「お宝」を集める。このお宝を、プレイヤー同士で奪い合う。各お宝には特定のテーマがあり、特定のテーマに関連するお宝を全て集めると「コンプリートした」と言う。プレイヤーはコンピュータでは無く全員人間であり、人間同士でお宝を奪い合う。人対人で叡智を絞りあって宝を奪い合う、まさに「怪盗」さながらの気分を味わうことが出来るのだ。
 
 「初めて数日は無料で遊んでいたんです。でも、無料だと中々「手下」が回復しなくて、次の行動に移れないんです。武器も弱いから、すぐカモにされてしまう。何より、みんな人間じゃないですか。盗まれると馬鹿にされたような気分になって、悔しくって。それで少しだけならいいかと思って、回復アイテムを購入しました。」怪盗ロワイヤルでは、プレイヤーの行動回数には制限が有る。プレイヤーには当初10人の「手下」が存在し、この手下がプレイヤーに変わってミッションをこなして行く。何か行動を起こすと「手下」の数が減り、3分経過毎に一人ずつ回復していく。自分の手下がゼロの時にお宝を奪われると、反撃することが出来ず、奪われ放題になってしまう。そういった時に役に立つのが「全手下回復ツール」だ。通常だと数時間経過しないと回復しない手下だが、有料(100円)で販売されているこのアイテムを購入すると、即座に回復し反撃に移ることが出来るのだ。

 「一度有料アイテムに手を出してしまうと、これ位なら良いかなって思うようになって、武器とかも買うようになりました。」怪盗ロワイヤルには回復アイテム以外にも、武器や防具といったプレイヤーを成長させるアイテムも豊富に販売されている。これらのアイテムを購入することで短時間で能力をアップさせることが出来る。通常のプレイなら数ヶ月必要となるレベルに、僅か数分で追いつくことが出来るのだ。
 
 「アバターの服を変えてみたんです。そしたら、女の子からメッセージが来たんですよ。アバターカッコイイって。mixiとかTwitterはやってましたけど、女の子の方からメッセージが来るなんて無かったんです。ある時メッセが来た女の子が怪盗ロワイヤルでお宝コンプリート出来なくて悩んでたんですよ。助けてあげたらもっと仲良くなれるかなって、思って更に強い武器買って、彼女のお宝コンプリートを手伝ってあげました。そしたら、すっごい喜んでくれて。なんだか嬉しくて、その後も結構サポートしてあげました。まぁ、下心ですよね。」

 モバゲーに限らずソーシャルゲームは人と協力することでより面白くなる。そこには必然的に男女の出会いが発生する。勿論、DeNAなど運営会社側は出会いの場にならないように、対策を行なっているが、そこで遊ぶ側の人間にとっては、そこでの出会いを利用したいと考えるようになるのも頷ける。アバターとは、自分の分身となるキャラクターであり、このアバター用に髪型や、服が用意されている。このアバターを着飾ることがセックスアピールにも繋がるのだ。

 -最高で幾ら位使うようになったんですか?
 「その彼女と付き合うようになって、彼女にいいところを見せるために、どんどん課金するようになりました。多い時で月10万円位使っていましたね。イベントとかが始まると徹夜も当たり前になって会社の遅刻も多くなったりしましたね。」

 -ゲームを辞めるつもりは無いですか?
 「月10万はきついですよ。外食も辞めて毎日弁当作ってます。モバゲーで知り合った友達も14万位使ってるんで、上には上が居るって感じですね。まだなんとか生きてるんで続けます。最悪もっと家賃の安い所に引っ越すのもありかなって思ってます。」
 
 -何故そこまでして続けるんですか?
 「家に居ても会社の中でも居場所が無いんですよね。そんな自分でも、ゲームの中では頼りにされる。自分を必要としてくれる人や場所があることが嬉しかったんです。多分他の人から見れば馬鹿なことしてるって思われると思うんですけどね。」
 そう語る彼の表情はどことなく悲しそうだった。



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  • プロフィール

    大元隆志(おおもと たかし) 通信事業者のインフラ設計、提案、企画を12年経験。異なるレイヤーの経験を活かし、技術者、経営層、 顧客の三つの包括的な視点で経営とITを融合するITビジネスアナリスト。業界動向、競合分析を得意とする。Yahoo!ニュース講談社 現代ビジネスCNET翔泳社EntepriseZineITmedia マーケティングITイニシアティブ、等、様々なIT系メディアで活躍する。SNSビジネス特集でNHK教育テレビに出演。ソーシャルメディア系イベントしては国内最大級となるソーシャルカンファレンス主催者。著書に「ビッグデータ・アナリティクス時代の日本企業の挑戦」「ソーシャルメディア実践の書」、「IPv4アドレス枯渇対策とIPv6導入」がある。所有資格 米国PMI認定PMP、シニアモバイルコンサルタント等。