クリエイターになるということ

今日は色々と考えせられる一日だった。まず目に飛び込んできたのは、ユニクロ柳井会長の「年収100万円も仕方ない」という記事だ。グローバルリズムによって、新興国も先進国も賃金体系をフラットにするというもの。柳井会長によれば、今後グローバル化が進めば年収1億円の人と、年収100万円の層へと二極化が進むという。

「それはグローバル化の問題だ。10年前から社員にもいってきた。将来は、年収1億円か100万円に分かれて、中間層が減っていく。仕事を通じて付加価値がつけられないと、低賃金で働く途上国の人の賃金にフラット化するので、年収100万円のほうになっていくのは仕方がない」

次に目にしたのは、家入さんの未払いの件に関するホリエモンのコメントだ。

ホ「すごいよね、いまロゴとかだとさネットで頼んだら5000円とか」
家「そうですね、クラウドソーシング的なサービスで」
ホ「5000円とか1万円でやってくれる人いるでしょなんか」
家「そうですね」
ホ「ルーマニア人とかやってくれたり」

この二つに共通することは、グローバル化しインターネットが発達した現在、クリエイターや労働者は世界中に居るので「労働力を確保したい」と思う人間からすれば賃金は限りなくフラットになり、先進国の人間にとっては厳しい賃金体系になるというものだ。

文字で食えなくなった

最近「文」で食べている人たちが悩んでいる。作家の橋本紡さんが「転がる石のように。」と題したブログで作家業の引退をほのめかしていた。理由は「ビジネスとしてのエンタメ小説は終わった」というシンプルな理由だ。もはやエンタメ小説は小説家として生計をたてられるジャンルでは無いという。

現役ライターの安田理央さんの書いた「ライターになりたいという若者がいたら」という記事でもこう述べている。

今はライターになりたいという若者がいたら、「悪いことは言わないからやめておきなさい。文章書きたいなら、別に本職を持ってBlogとかで書けばいい」とアドバイスするでしょうね。

先日、Googleの及川さんが「セミプロに駆逐されるプロという構図」と題したオフ会を開いていた。残念ながら私は参加することが出来なかったが、現役ライター等が熱い議論を交わしたそうだ。ようは、私のような本業を持ちつつ執筆業を営む「兼業ライター」に「本業のライター」の食い扶持が侵食されているという「問題提起」の場だったようだ。

クリエイターという職業

言語が介在しないビジュアルの世界では、インターネットの発達と共に「クリエイター」は世界中に存在するようになり、新興国のクリエイターと給料を競うことになる。

言語に守られた文章の世界も、ソーシャルメディアの普及で限られたパイを「セミプロ」と分け合わなければならない。音楽の世界もCDは売れず、握手券を売るビジネスへと変化してしまっている。

描いても駄目、書いても駄目、歌っても駄目。そうだ、もはや「クリエイティブ」で食える時代では無いのだ。社会環境の変化、技術の進化を考えればこの状況が今後かわるとは思えない。

しかし、それでも私は「クリエイター」になりたいと思う若者が居たら止めはしない。むしろ、描きたい、歌いたい、綴りたいという人が居たら応援してあげたい気分だ。しかし、「それだけ」では食えなくなっているという現状は理解しておいた方が良いと思う。「クリエティブ+α」が必要なのだ。

例えば「執筆」を生業とするのなら、ソーシャルメディアやマスメディア、あらゆるチャネルに露出し、知名度を上げ、講演やイベントを主催するといった活動も合わせて行わなければ食えなくなってきている。音楽もCDは売れないがライブやライブでのグッズ販売は最近活況になってきている。

もし、「クリエイター」になりたいと思う若者が居たら、まずは他に「本業を持ち」自分の力がどれだけ世間的に評価されるか試してみることをお勧めする。幸いにも技術の進化は本業を持ちながらでも世界へ向けて自分の「クリエイティブ」を発表出来るようになった。クラウドソーシングで空いた時間に仕事を受注してみるのも良いだろう。昔と異なりライターになりたければメディアに入社するといった決まった進路は既に無くなっている。ブログ一個と才能があれば、どこからともなく声がかかる、そんな時代が訪れている。

クリエイターとなるための間口は広がり、食っていくことは難しくなった。良いことなのか悪いことなのかはわからない。しかし、これが現実だ。

★関連書籍★
フラット化する世界 [増補改訂版] (上)
ソクラテスはネットの「無料」に抗議する (日経プレミアシリーズ)



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    大元隆志(おおもと たかし) 通信事業者のインフラ設計、提案、企画を12年経験。異なるレイヤーの経験を活かし、技術者、経営層、 顧客の三つの包括的な視点で経営とITを融合するITビジネスアナリスト。業界動向、競合分析を得意とする。Yahoo!ニュース講談社 現代ビジネスCNET翔泳社EntepriseZineITmedia マーケティングITイニシアティブ、等、様々なIT系メディアで活躍する。SNSビジネス特集でNHK教育テレビに出演。ソーシャルメディア系イベントしては国内最大級となるソーシャルカンファレンス主催者。著書に「ビッグデータ・アナリティクス時代の日本企業の挑戦」「ソーシャルメディア実践の書」、「IPv4アドレス枯渇対策とIPv6導入」がある。所有資格 米国PMI認定PMP、シニアモバイルコンサルタント等。