イノベーションを生み出すスマートオフィス

2013年5月23日に株式会社沖データ主催「OKIプリンコム2013」にて「2015年のスマートオフィス」というテーマで講演致しました。その講演内容の一部を紹介したいと思います。

特定のテーマについて講演や執筆依頼があると、自分の想像力を働かせ考えることはとても刺激になります。「スマートな働き方を可能にするスマートオフィス」。それを実現するには何が必要だろうか?ITの世界のトレンドで言えば「スマートデバイス」を利用したモバイルワークスペースがまず頭に浮かびます。BYODやシンクライアント、ユニファイドコミュニケーションは定番の旬なネタですね。勿論講演ではその辺りにも触れました。

しかし、本当にそれだけだろうか?どうもそれだけでは不十分だと思いました。今のオフィスに欠けているもの、そう考えた時に定型業務や商談のための執務室と会議室しか無い、「イノベーションやコラボレーションを促進する仕組みが欠けている」のでは無いか。もし今のテクノロジーを活用すれば、これらを補うことが出来るのでは無いだろうか。そう考えたのです。

イノベーションを生む七つの空間

スタンフォード大学集中講義、未来を発明するためにいまできることという、イノベーションをテーマにした本があります。この本の中にイノベーションを活性化させるには場所の役割はとても大きく、7つの空間がイノベーションを作り出すとしています。この7つの空間について今のITを組み合わせると、こんな空間が出来上がるんじゃないかという考えをまとめてみました。

①プライベート空間
一つ目はプライベート空間です。一人で集中する空間ですね。実はオフィスに求められている重要な機能の一つに「集中」というキーワードがあるように思います。モバイルの普及で仕事はオフィスでも家でも、カフェでも出来るようになりました。しかし、一方で「集中」出来る場所が少なくなってきているように思います。会社の中では電話やメールがひっきりなしに入りますし、家でパソコンで仕事をしようとするとSNSからお知らせが入る。メールも電話もSNSも使えない「強制的に集中出来る場所」が、オフィスの機能として求められているのではないでしょうか。
プライベート空間

②グループ空間
二つ目はグループで作業するための空間です。このスタイルは今の日本のオフィスには一般的なのではないでしょうか。長机があり、チームメンバーが密集して作業する。これはチーム作りの科学の例から考えても共同作業に適したスタイルといえます。バーチャルの空間でもグループウェアやリアルタイムチャットを活用することができます。最近スタートアップの企業の方とお話していると、LINE等のリアルタイムチャットを使って情報共有するケースが増えてきていると聞きます。メンバー全員がチャットを活用することで、メンバー間の意思決定が早くなるそうです。
グループ空間

③宣伝空間
三つ目は宣伝空間です。今起きていることを見せる空間ですね。オフィスの中では応接間や共通の掲示板がこれにあたります。これにバーチャルの世界を加えると、ソーシャルメディアのタイムラインやブログが該当します。これらのバーチャル空間を使うとリアルの空間より多くの人に認知してもらうことが可能になります。
宣伝空間

④パフォーマンス空間
四つ目の空間は自分の考えを行動で示すパフォーマンス空間です。リアルのオフィスではプレゼンテーションルームがこれにあたります。また、スマートデバイスの映像をプロジェクターに簡単に表示するなどの対応が求めらるでしょう。
バーチャルの空間では、YoutubeやUstreamを使ってLIVE配信すれば、多くの人からフィードバックを得ることでがてきます。またクラウドファンディングで自分の考えを話せば、資金を募ることも可能です。
パフォーマンス空間

⑤データ空間
五つ目の空間はデータ空間です。リアルの世界で資料室やキャビネットがこれに該当します。バーチャルの世界では社内のファイルサーバや、クラウドのオンラインストレージがこれに該当します。バーチャルの世界を上手く活用することが出来れば、時と場所を選ばずに、何時でも資料を参照することが出来るようになります。
データ空間

⑥参加空間
六つ目は参加空間です。この空間は少しわかりにくいかもしれませんね。この空間の狙いは、「帰属意識」をもたせることにあります。リアルの世界で自分の机のまわりを綺麗にする、電気の使用量がわかるようにしていると、その空間に「関与」している気持ちが芽生えます。バーチャルの空間では「イイネ」や「コメント」を付けることで、各プロジェクトに「参加」している気持ちを高めます。「場所」に愛着をもってもらうことで、チームワークの向上や成果物のクオリティがアップすることが期待出来ます。
参加空間

⑦鑑賞空間
七つ目は鑑賞空間です。これは今までの6つの空間を客観的に眺める空間を指します。幾つかの空間で自分達の取り組みをソーシャルメディア上で発信していたら、外部の人からのフィードバックによって、自分達の取り組みを客観的にみることが出来ます。
過去の行いや取組を客観的に眺めることでアイデアがよりブラッシュされることはよくありますし、過去のできごとからインスピレーションを受けることもあります。

2015年のスマートオフィス

ここまでの話を抽象的に表現するとこのようになります。2015年のスマートオフィスとは、単に集団作業を行う場所という存在ではなく、場所ごとに意味を持たせる。そうすることでイノベーションを促進し、社外の人材、パートナとも繋がり、企業の俊敏性や協業を向上させる。そんな「賢さ」が求められているのではないでしょうか。

2015年のスマートオフィス

スマートデバイス、ソーシャルメディア、クラウドで作り出す仮想空間のオフィス。アトム(物質)だけの空間から仮想空間も時には利用する。アトムとビットが融合した世界観をオフィスにも適用する時代がすぐそこまで訪れています。

★紹介書籍★
スタンフォード大学集中講義、未来を発明するためにいまできること



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  • プロフィール

    大元隆志(おおもと たかし) 通信事業者のインフラ設計、提案、企画を12年経験。異なるレイヤーの経験を活かし、技術者、経営層、 顧客の三つの包括的な視点で経営とITを融合するITビジネスアナリスト。業界動向、競合分析を得意とする。Yahoo!ニュース講談社 現代ビジネスCNET翔泳社EntepriseZineITmedia マーケティングITイニシアティブ、等、様々なIT系メディアで活躍する。SNSビジネス特集でNHK教育テレビに出演。ソーシャルメディア系イベントしては国内最大級となるソーシャルカンファレンス主催者。著書に「ビッグデータ・アナリティクス時代の日本企業の挑戦」「ソーシャルメディア実践の書」、「IPv4アドレス枯渇対策とIPv6導入」がある。所有資格 米国PMI認定PMP、シニアモバイルコンサルタント等。