素人でもプロに仕立て上げるスタジオジブリの底力

今日は久しぶりにNHKの「仕事ハッケン伝」を見た。今回はオリエンタルラジオの中田敦彦氏が、スタジオジブリに潜入し鈴木敏夫氏の下で映画宣伝プロデューサを担当するというもの。

個人的にスタジオジブリの広報誌「熱風」に記事を寄稿させて頂いた時に、スタジオジブリの仕事に対する熱意は体感していたことと、私はキャッチコピーの仕事を手がけてみたいと思っていたので、スタジオジブリが「どうやって”言葉”」を生み出すのか、非常に興味を持って拝見させて頂いた。

・アイデアは対話から生まれる
まず、印象に残ったのが「アイデアは自分の中からは生まれない」という言葉だった。「自分一人で考えてても何も出てこない、常に雑談や対話の中から生まれる」と鈴木氏は語る。スティーブ・ジョブスも「イノベーションは会議からは生まれない、何気ない雑談をしている時に生まれる」と語っていたことを思い出した。

この言葉に従い、収録スタッフと対話を重ねながらキャッチコピーを百個作り、鈴木氏にプレゼンを挑んだ中田氏。中田氏の出した幾つかのキーワードに鈴木氏が反応する。「人間、宮崎駿」、「72歳の覚醒」、身近に宮崎駿という人間を感じていては生まれて来なかった、言葉が「対話」から創り出された。

・人を使うということ
鈴木氏から「人間、宮崎駿」というコピーは採用され、その後に続く言葉を考えて欲しいと言われる中田氏。懸命に鈴木氏の頭の中にある言葉を引き出そうと、考えに考えて作った渾身のコピー「人間、宮崎駿の美しい夢が、時代を射つ」。自信を持ってプレゼンに挑むが、このコピーは却下される。

最後に鈴木氏が出したキャッチコピーは「人間、宮崎駿、72歳の覚悟」だった。鈴木氏の頭の中の言葉を創造して生み出したコピー。しかし、正解は自分の頭の中にあった。

ここで、鈴木氏が種明かしをする。そもそも初めから中田氏の出した言葉を紡ぎ合わせるつもりだった、と。そこで、中田氏が「僕の出す言葉の中に、光るものが一つも無かったらどうするつもりだったのか?そもそも素人ですよ」と切り替えす。

この時、返した鈴木氏の言葉がとても印象深かった。

「どんな人にも必ず1つはある。それを引き出せなかったら僕の負け。一緒にやる意味なんて初めから無い」と。

素人でもプロに仕立て上げるジブリの底力

思えば、私もスタジオジブリから寄稿依頼があった時、正直戸惑った。私みたいな人間が寄稿しても良いのだろうかと。しかし、その心配は無用だった。ジブリの方の編集魂によって、今まで経験したことのない校正と修正が加えられた。「面白い」と感じた人間に声をかけ、その人間が出してきた成果物が例え三流であったとしても、世に出す時には「一流」へと変えてしまう。

ジブリ最新作の「風立ちぬ」では、「ヱヴァンゲリヲン」シリーズで知られる庵野秀明監督が声優に加わっていることでネット上では「素人」と揶揄されていた。しかし、今回の放送と、自分自身の経験から、「一流の作品」として仕上がって来るのだろうと、映画館に足を運ぶのが楽しみになった。

スタジオジブリがファンタジーを捨てて、初めて人のリアリズムに挑んだ、「人間・宮崎駿の覚悟 “風立ちぬ”」。7月の劇場公開が楽しみだ。



この記事のタグ: , , ,


関連する記事

  • ホビット 竜に奪われた王国 3DHFRで映像はバーチャルリアリティになる

  • かぐや姫の物語 姫の犯した罪と罰

  • ヒトラーの贋札から学ぶ「働くこと」の意味

  • 風立ちぬ、消えない情熱と、避暑地で生まれたはかない愛の物語

  • NHK 仕事ハッケン伝に学ぶ ファンを意識した番組作り

  • ハーブ&ドロシー お金で買えない幸せの見つけ方

  • クラウドアトラス 自由を渇望する人々の戦い

  • 仕事ハッケン伝 「明日ちょっと頑張ろう」


  • プロフィール

    大元隆志(おおもと たかし) 通信事業者のインフラ設計、提案、企画を12年経験。異なるレイヤーの経験を活かし、技術者、経営層、 顧客の三つの包括的な視点で経営とITを融合するITビジネスアナリスト。業界動向、競合分析を得意とする。Yahoo!ニュース講談社 現代ビジネスCNET翔泳社EntepriseZineITmedia マーケティングITイニシアティブ、等、様々なIT系メディアで活躍する。SNSビジネス特集でNHK教育テレビに出演。ソーシャルメディア系イベントしては国内最大級となるソーシャルカンファレンス主催者。著書に「ビッグデータ・アナリティクス時代の日本企業の挑戦」「ソーシャルメディア実践の書」、「IPv4アドレス枯渇対策とIPv6導入」がある。所有資格 米国PMI認定PMP、シニアモバイルコンサルタント等。