続・映画ビジネスの未来

TOKYO-FM 40th今日は以前書いた「映画ビジネスの未来」がきっかけで、TOKYO-FMのTIME LINEにて、伊藤洋一さんと一緒に「映画ビジネスのこれから」について対談させて頂きました。

事前にアジェンダを頂いてたので、こんなことを話したいと思って書いていたメモを公開します。(当日は時間も限られていたので、この内容とは異なります)

Q1 まず両巨匠のスピーチについて。絵空事ではない?

はい、そう思います。映画館が今より減るかという所が焦点かと思いますが、少し簡単に日本映画の歴史を述べると日本映画のピークは昭和30年代でした。観客数では昭和33年の11億2,750万人、映画館数では昭和35年の7,457館が日本の映画史上の最盛期です。

娯楽が少なかった時代に映画は国民にとっての娯楽の王様でした。しかし、三種の神器と呼ばれた白黒テレビの登場で事態は急変します。
昭和30年に所有率3%だった白黒テレビですが、昭和36年に東京オリンピックを控え、昭和34年以降年率10%で成長を続け、昭和40年には90%の家庭で所有するに至りました。これにより、庶民の娯楽が増加し、家庭に映像を配信する機器が浸透したことで「映像」は別段珍しいものでは無くなったのです。

白黒テレビの普及と反比例するように、急速に映画産業は縮小し、昭和45年には観客数は2億5,480万人、映画館は3,246館まで激減するに至りました。テレビが家庭に行渡たり娯楽が増えたことで映画に足を運ぶ人が減った、これを今の時代に当てはめてみれば、インターネット、スマートデバイス、ソーシャルメディアの普及で、昭和の時代より無料で遊べる娯楽が溢れています。しかも、Hulu等のストリーミングサービスの普及によって映画館に行かなくても映画を手軽に楽しめるようになりましたから、映画館の数が今より減少する可能性は高いと思います。

更に昭和の時代と異なり、今の娯楽はお金では無く「可処分時間」を奪い合っています。2時間という時間が拘束される映画は「対価を時間で支払う」という観点からは非常に高い娯楽なんです。

これらの要素を考えると、映画館は今の時代にあった価値を生活者に新たに訴求出来ないと、衰退すると私は考えます。

Q2 映画館は衰退し映画ビジネスはコンサートビジネスに近くなる?

そうですね、今でも実はチケットの販売の他にポップコーンやグッズの販売も映画館の売上の重要な売り上げの一部になっています。これがもっと進んで、例えば有名タレントと会えてデイナーショー化したり、シートが揺れたりする、劇場のアトラクション化等、映像以外の劇場に足を運ぶメリットをもっと打ち出すことになるのではないかと思います。

勿論全ての映画館がこんな対応をすることは出来ませんから、出来る所と、出来ない所で自然と淘汰されていくと思います。ただ、今すぐにこんな変化が起きるというわけではなく、10~20年位の時間をかけて徐々に変化していくと思います。

Q3 「最新作」も含め、ストリーミングが定着していく?

これについては、2つの方向に分かれるでしょう。映画ビジネスは大きく分類すると制作、配給、劇場の三つにわけて考えることが出来ます。この三つを全て手がける垂直統合モデルを実現している東宝、松竹、東映等の大手グループ、そうではないその他グループに分類出来ます。大手グループの映画は製作、配給、劇場の三つを食べさせるために稼がないといけませんから、安定した売り上げの期待出来る版権物やシリーズ物で大作指向になり、垂直モデルを守ろうとします。虎の子の劇場を自社製作以外の作品を上映するのを渋る傾向が強まるでしょう。

こういう流れが強まり、スマートデバイスがより普及し、ストリーミングサービスの市場がもっと大きくなれば、劇場を持っていないが故に上映を渋られるグループは配信する先を劇場からHulu等のストリーミングに変えるのではないかと。ニッチなテーマを描いた作品重視のものや、自主制作的な映画はストリーミング中心の配信になっていくように思います。実はこれも過去に同じことが起きています。ビデオデッキとレンタルビデオの普及でビデオだけで流通するレーベルが登場しました。ストリーミング専門レーベルが登場しても不思議ではありませんね。

製作、配給、劇場を束ねる垂直統合モデルの従来通りの大作指向の流れと、製作は「アマチュアイズム」となり、配給はインターネット配信へと変わり、劇場はスマートデバイスへと変化する作品指向の流れの二極化が進むと思います。

このような流れで後者の方で個人的に注目しているのがドワンゴさんです。同社は「夢と狂気の王国」というスタジオジブリを題材とした映画を秋に公開する動きがあります。ドワンゴの子会社、ニワンゴさんはニコ生やニコニコ超会議でクリエイターの活躍する場所作りや権威付けを進めています。ドワンゴさんには映画ビジネスの未来が見えていて、インターネット上のクリエイターを集めて、映画が流通する新たな仕組みを作るのではないかと期待しています。

Q4 映画に限らず一方通行のメディアの今後は?どんな価値転換を求められる?

ソーシャルメディアとスマートデバイスは物事の自分事化を加速する装置です。世の中ごとを伝える「マス指向」ではなく「いかに物語を自分事化するか」そういう施策が必要になると思います。私の新刊「ビッグデータ・アナリティクス時代の日本企業の挑戦」にこの辺りの施策について書きましたが、日本テレビ、ハフィントンポスト等、生活者の価値観の変化にいち早く気づいた先行企業は「視聴者を参加者」へと変える取り組みを実践しています。

視聴者に番組を認知して貰う、拡散して貰うという視点でソーシャルメディアを活用しようとしても徒労に終わるでしょう。視聴者を「拡散要員」として利用しようとしているだけの人達のプラットフォームでは視聴者は傍観者でしかないのです。視聴者も番組を構成する重要なパズルのピースの一部であり、彼らが欠ければ番組が成り立たない、そう考えれば単なる「拡散要員」では無い視聴者との関り方が見えてくるのではないでしょうか。

TOKYO-FMさんのFacebookページにて、私の新刊「ビッグデータ・アナリティクス時代の日本企業の挑戦」が二名の方に当たる抽選が開催されています。本書の発売は7月20日ですが、発売前にいち早く手に入れるチャンスですので、是非お申し込み頂ければと思います。



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  • プロフィール

    大元隆志(おおもと たかし) 通信事業者のインフラ設計、提案、企画を12年経験。異なるレイヤーの経験を活かし、技術者、経営層、 顧客の三つの包括的な視点で経営とITを融合するITビジネスアナリスト。業界動向、競合分析を得意とする。Yahoo!ニュース講談社 現代ビジネスCNET翔泳社EntepriseZineITmedia マーケティングITイニシアティブ、等、様々なIT系メディアで活躍する。SNSビジネス特集でNHK教育テレビに出演。ソーシャルメディア系イベントしては国内最大級となるソーシャルカンファレンス主催者。著書に「ビッグデータ・アナリティクス時代の日本企業の挑戦」「ソーシャルメディア実践の書」、「IPv4アドレス枯渇対策とIPv6導入」がある。所有資格 米国PMI認定PMP、シニアモバイルコンサルタント等。