ソーシャルメディアが晩婚化を助長する?

「リクルート ブライダル総研」が発表した恋愛感調査が興味深い。

本調査の調査概要は以下の通り。20代から40代未婚男女の約3割りが「今まで恋人が出来たことが無い」という。

恋人がいる人:27.5% 今まで付き合ったことのない人:29.6% ※20代から40代未婚男女において
I「積極的な行動」と「柔軟なコミュニケーション」に違いあり。恋人をつくるための大きなポイントに

Ⅱ 約10人に1人以上がインターネットがきっかけで恋人と出会っており、恋人をつくる主要な方法の
一つと言える

Ⅲ 目立つ20代の消極性。年代が若くなるにつれて『草食化』の自覚が高まる。「異性との友情」への
考え方の違いが背景に

Ⅳ 「男性よりも自己評価が高く、自信がある女性」(自己採点)
「異性に対し、女性よりも外見重視の男性、男性よりも内面重視の女性」(異性に求める点数)

20代男性の44.3%が「今まで恋人を作ったことが無い」

特に驚いたのが、20代男性の数値だ。約半数に当たる44.3%もの男性が「今まで恋人が一度も出来たことがない」という。この結果について同レポートでは、20代は恋愛に対して「理想が高い」にも関わらず、草食系の自覚があり消極的であると判断しているようだ。

当初このレポートを読んだ時、草食化の進んだ男女が異性に積極的にアプローチすることが出来ず「恋人が出来ない」のかと思っていた。しかし、内容を良く見てみると、実態は「恋人が出来ない」のでは無く、「恋人を作らない」という表現の方が適切なのではないかと思うようになった。

「若者が恋人を作らなくなった」とすれば、そこには「ソーシャルメディア」が関係しているのではないかと推測している。その視点から同レポートの内容を見てみよう。

出会いの多さが「青い鳥症候群」を招く

もはや生活にすっかり浸透したスマートフォンとソーシャルメディア。10代、20代の若者の間では最早携帯キャリアのメールアドレスを交換するよりLINEやFacebookのIDを交換しあうのが一般的になっている。

ソーシャルメディアを利用すると、格段に出会いの機会は増える。イベントの誘い、TL上の交流、SNS上の知人の紹介等、SNSを運営するプラットフォームがあの手この手で人と人を繋げ自社サービスの滞在時間を向上させようと画策しているからだ。

恐らく10年前の20才と、今の20才なら「出会い」の頻度や関係性が大きく異なっているだろう。学校の中の友人関係に疲れたら、SNS上の友人と交流する。SNS上の特定のグループとの関係に疲れたら、また別のグループへと渡り歩くことが出来る。

若い人は刺激を求めがちだ。特に居心地が悪くなったという理由で無くても「新たな出会い」を求めて、ソーシャルメディア上の繋がりを辿ったとしても不思議では無い。

そんな時、素敵だと思う異性がいたとしたらどうするだろうか?出会いの少なかった昔ならその人にアプローチしたことだろう。しかし、今や出会いは無数に溢れている。「もっと素敵な人が現れるかもしれない」そう思ってしまっているのでは無いだろうか。

ブライダル総研のレポートからも「青い鳥」を探し求めている節が見て取れる。20代は男女共に「理想の異性」を探し求める傾向が他の年代より遥かに高い。
理想の異性を探し求める20代

友達の関係を続けたい

出会いの数が多く「理想の異性」を追い求めているからなのか、恋人というより友人関係で居ることを望む傾向があるように見える。

異性との関係性について、男女間の友情は成り立つとの考えが多く、特に20代女性は過半数を超えている。
男女の友情が成り立つと考える20代

友情は成り立つとの関係が根底にあるからなのか、恋人と別れた後も友人関係を望む人が男女共に約三割も存在する。一昔前までは男性は別れた後も相手を思い続け、女性はすぐに切り替えると言われた時代もあったが、今は男女共に別れても「友達の関係に戻る」ことはさほど珍しくないようだ。
別れたあとも友人関係を望む20代

昔「恋人が出来ない」、今「恋人を作らない」

ソーシャルメディアが普及してい無かった時代、出会いは貴重な物だった。その時代には恋人を作りたくても「出会いが無い」という人も少なくなかっただろう。しかし、今の時代は出会いに溢れている。そして一度繋がった人間関係はどこかでまた再開する可能性も高くなった。

「理想的な異性」が何時か現れるかもしれないし、妥協して付き合う位ならあえて「恋人」という関係にならず「友達のままで良い」と考える。別れた後もコミュニティを離れたくないので友達という関係を維持したい。

出会いが多くなった時代が、若者の恋愛に対する考え方を変えてしまったのでは無いだろうか。しかし、これは私の周辺を観測した感想だが、ソーシャルで活発な男女より、リアルの交友関係を大切にしている男女の方が「結婚」に至る年齢は早いように思う。

ソーシャル上の出会いの多くは希薄なものになりがちで、何か嫌なことがあれば途端に距離が離れてしまうことは少なくない。しかし、リアル中心の交友関係は職場や学校など簡単に環境を変えることが出来ない場所で育まれることが多い。こういった状況では何かトラブルがあっても互いに関係を修復しようとする。

結果として「結婚」という人生の一大イベントを考える時には、「互いに向き合った」仲の人同士の方が早く結婚に至るのではないかと思う。

ソーシャルメディアは多くの出会いをもたらしてくれる。しかし、それは特定のパートナを作るという観点では「目移りする機会」が増えることを意味する。ソーシャルメディアはもしかすると、晩婚化を助長し少子化を加速する原因にも繋がるかもしれない。それとも「出会いの多い時代」には「パートナは一人のみ」という制度や価値観自体がそぐわなくなってきているのかもしれない。

数多くの繋がりを作ることの方が幸せに繋がるのか、少ない絆を大切にする方が幸せになるのか。技術の進化によって私達は大きな岐路に立っているのでは無いだろうか。



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  • プロフィール

    大元隆志(おおもと たかし) 通信事業者のインフラ設計、提案、企画を12年経験。異なるレイヤーの経験を活かし、技術者、経営層、 顧客の三つの包括的な視点で経営とITを融合するITビジネスアナリスト。業界動向、競合分析を得意とする。Yahoo!ニュース講談社 現代ビジネスCNET翔泳社EntepriseZineITmedia マーケティングITイニシアティブ、等、様々なIT系メディアで活躍する。SNSビジネス特集でNHK教育テレビに出演。ソーシャルメディア系イベントしては国内最大級となるソーシャルカンファレンス主催者。著書に「ビッグデータ・アナリティクス時代の日本企業の挑戦」「ソーシャルメディア実践の書」、「IPv4アドレス枯渇対策とIPv6導入」がある。所有資格 米国PMI認定PMP、シニアモバイルコンサルタント等。