国内クラウドソーシングはワーキングプアを量産する

クラウドワークスとランサーズのどちらが優れているか?という記事が話題を呼んでいる。この二つの企業はクラウドソーシングと呼ばれるカテゴリに分類される。簡単に言ってしまえばタスクを振りたい発注主と、仕事を探している受注者を仲介するサービスだ。

海外ではクラウドソーシングがそれなりの規模に育ってきているため、例のごとく日本でも「クラウドソーシングで日本の雇用環境が激変する」と騒ぎ始めている人たちが現れている。日本国内では、クラウドワークスとランサーズが幾分目立っていたため、今回の論争に繋がったと思われるのだが、客観的な立場から見れば「どちらのサービスも、生活を依存するようになればワーキングプアになる」ようにしか見えない(勿論今後状況が改善されるかもしれないが)。

どちらを利用しても「単価」が安すぎる

私はライターの相場なら、その仕事の内容が高いのか安いのか判断出来るので、ライティング周りの仕事募集にどのようなものがあるのかを覗いてみた。こういう比較系サイトは必然的に「相場」が形成されていくので、それほど調査したわけではないが、他の仕事も同程度ではないかと思う。一件幾らあたりのタスク系の仕事と、まとまったボリュームで仕事が発注されるプロジェクト型の仕事を見てみた。

■ランサーズ
・「【200文字以上@30円】ブログ用日記記事の募集。テーマは自由。の仕事

・「無料ブログ取得50個+50記事投稿 納期3週間以内

 ■ 報酬
 15000円+ランサーズ手数料3725円=18725円
 1ブログ取得100円×50個=5000円
 1記事450文字200円×50個=10000円
 ランサーズ手数料=3725円
 合計18725円となっております。

■クラウドワークス
・「【400文字以上@40円】恋愛、結婚、離婚、不倫などについての記事を作成してください。
・「【女性向け/ファッション好き歓迎】女性ファッションに関するまとめ記事作成のお仕事の依頼詳細

 ■報酬について
 1記事に付き450円、1発注あたり2,250円になります。
 (システム料込みでの提案でお願いします)

記事を一つ書いて30円から始まり、450円で「高報酬」に見える世界。

収入も低く、キャリアアップも望めない

私が相場と仕事内容を判断出来るのは、ライティングに限った分野であるためそのカテゴリを見た限りではあるが、一般的なライターが受け取る相場の十分一程度であり、プロのライターからすればとても「仕事」と呼べるようなものではない。

ただ、これは当然だ。「記事の募集」とはあるが、実際には「アフィリエイトブログ」もしくは「口コミ」用コンテンツの作成の肩代わりをさせられるにすぎない。そもそも雑誌や専門誌を手がける「プロ」向けの仕事募集ではない。

当たり前のことだが、アフィリエイトブログ用の記事を何千個作成した所で、ライティングのスキルは向上しないし、実績として認められることもない。一記事数百円の報酬を得るために、時間だけが過ぎていく。仕事はないが時間だけはある、もしくは、隙間時間に少しこなす程度なら良いかもしれないが、これに生活を依存するようなことになってしまっては、「働いても働いても、収入も増えないし、キャリアアップも望めない」まさに「ワーキングプア」の道へ進み、抜け出せなくなる可能性がある。

フリーランス市場を食い合ってるのではないか?

他のウェブデザイン等の仕事も簡単に見てみたが、サイト構築10万円~30万円程度のものが散見され、ライティングより報酬は良いようだ。しかし、これも企業が企業に発注する規模の金額ではなく、印象としては従来フリーランスに発注していた仕事が、クラウドソーシング系のサイトに集まり、価格の叩き合いになっているように思える。

英語圏で展開し規模の経済と通貨格差が見込める海外のクラウドソーシングはスキルの高いエンジニアやクリエイターも数多く存在するようだが、日本語の壁に守られた国内のクラウドソーシング市場。ライティングの状況だけを見ればとても「企業の発注に耐えうるプロ」が登録するような市場では無いように思う。

その昔スキルをマッチングさせるSNSの「Linkedin」が注目を集めたが、日本の特殊な雇用環境によって日本ではブレイクするには至っていない。海外では確かに一ジャンルとして定着しているクラウドソーシングだが、果たして日本でブレイクすることはあるのだろうか。もし、今の状況でブレイクすることがあれば、「ワーキングプア」が量産されるということなのかもしれない。

余談:ジャーナリズムとは何か

冒頭で紹介したブログに「ジャーナリズム」とあったのだが、今やジャーナリストとは誰でも名乗れるものになってしまっていると思う。テクノロジーをジャーナスリト視点で伝えるなら、ウェブサービスの比較を行うことがジャーナリストの役割では無いと思う。その技術やサービスが社会に与える影響を考え、世の中に伝えることが「ジャーナスリズム」では無いだろうか。



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  • プロフィール

    大元隆志(おおもと たかし) 通信事業者のインフラ設計、提案、企画を12年経験。異なるレイヤーの経験を活かし、技術者、経営層、 顧客の三つの包括的な視点で経営とITを融合するITビジネスアナリスト。業界動向、競合分析を得意とする。Yahoo!ニュース講談社 現代ビジネスCNET翔泳社EntepriseZineITmedia マーケティングITイニシアティブ、等、様々なIT系メディアで活躍する。SNSビジネス特集でNHK教育テレビに出演。ソーシャルメディア系イベントしては国内最大級となるソーシャルカンファレンス主催者。著書に「ビッグデータ・アナリティクス時代の日本企業の挑戦」「ソーシャルメディア実践の書」、「IPv4アドレス枯渇対策とIPv6導入」がある。所有資格 米国PMI認定PMP、シニアモバイルコンサルタント等。