ソーシャルCRMでコールセンタのコスト削減

Twitterのフォロワー獲得合戦、Facebookの「いいね」集客、企業内SNSによる社内コミュニケーションの円滑化と「メディア」の報道する企業のソーシャル活用は、大抵失敗する。

ソーシャルメディアは「安価な広告媒体」というイメージが先行してしまったせいか、メディアの報道は認知獲得のためのソーシャル活用にフォーカスしている傾向を感じる。Twitter、Facebook、Lineとプラットフォームが変化することもあり話題性も尽きずPVも稼ぎやすいという側面もあるのかもしれない。しかし、実際には認知獲得は成果の出しずらい分野だと、筆者は感じている。

より成果の予測しやすい分野への適用が進んでいる

ソーシャルメディアの利活用が国内でも進んできたため、メディアの情報を頼りにせず、自分達なりの「使い方」を実践しはじめている企業も出てきている。中でも海外も含めて成功事例が多数出てきているのが、ソーシャルCRMだ。

国内の文脈では、SNSのアカウントをビッグデータ的に活用するCRMが想起されるかもしれないが、成功している事例はコミュニティサイトを運営し顧客間で問題解決を済ませることで、コールセンターへのコール数を削減するというものだ。海外のあるベンチャー系通信キャリアにはコールセンター人員がゼロ人という企業も存在する。

コールセンターの通話時間を3分の1削減

日本国内でもauがQ&AプラスというソーシャルCRMを運用している。auのコールセンターはスマートフォンの台頭によって、問い合わせ内容が多様化し、一件辺りの対応時間が長期化していたという。しかも、基本的には全ての機能を垂直統合で管理していたフィーチャホンと異なり、スマートフォンはアプリによって端末の環境が異なる。全ての問い合わせをマニュアル化することは不可能に近い。

こういった問題解決に対してauは「ユーザの力」を活用している。auはQ&Aプラス内でユーザ間で問題解決がされるようになったことで、コールセンターでの通話時間が従来の3分の1削減することに成功したという。わさわざコールセンターに電話する必要も無いのでユーザにとっても利便性は向上していると言えるだろう。

コールセンタに聞くかどうか躊躇するような質問も

au Q&Aプラスに寄せられた質問を見ていると、問い合わせ対応という直接的なコスト削減効果だけでなく、間接的な効果もあるように見える。

・サードパーティ製アプリの対応

Q.lineって海外でも無料なんですか? フィリピンにこれからいくのですが 無料でメールとかできますかね? 早々ご回答おねがいします。

こういう質問はLINEに関する質問であり、厳密に言えば有料か無料かは各サービス毎によって異なるため、公式な回答としては各アプリベンダーへの問い合わせと、データ料金プランの別々の回答が必要になる。しかし、あくまでもユーザ同士の「民間療法」と言える場であるため、そこまで硬い回答をする必要は無い(この質問に対してはしっかりした回答がなされているが)。質問した側も「返答」が帰ってきたことで安心する。

サードパーティ製のアプリに関する「柔らかい対応」をすることが可能になっている。

・SEO対策
ユーザの書き込みが頻繁になれば、SEO対策にも成りえる。新機種が発売されると口コミを検索するユーザは多いが、この時auサポートサイトへ誘導する効果が高まることが期待出来る

これらは、あくまで副次的な効果だが、従来のコールセンターの機能だけでは対応が難しかった部分だ。まだまだこういった活用事例は少ないが、ソーシャルメディアのユーザ数も増えてきたことで、認知獲得以外の企業利用も進んでいくだろう。



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  • プロフィール

    大元隆志(おおもと たかし) 通信事業者のインフラ設計、提案、企画を12年経験。異なるレイヤーの経験を活かし、技術者、経営層、 顧客の三つの包括的な視点で経営とITを融合するITビジネスアナリスト。業界動向、競合分析を得意とする。Yahoo!ニュース講談社 現代ビジネスCNET翔泳社EntepriseZineITmedia マーケティングITイニシアティブ、等、様々なIT系メディアで活躍する。SNSビジネス特集でNHK教育テレビに出演。ソーシャルメディア系イベントしては国内最大級となるソーシャルカンファレンス主催者。著書に「ビッグデータ・アナリティクス時代の日本企業の挑戦」「ソーシャルメディア実践の書」、「IPv4アドレス枯渇対策とIPv6導入」がある。所有資格 米国PMI認定PMP、シニアモバイルコンサルタント等。