書評:データサイエンティスト データ分析で会社を動かす知的仕事人

「今後10年で最も魅力的(セクシー)な仕事」と呼ばれ、将来25万人が不足という予想が物議を醸し出した、「データサイエンティスト」。

この現在IT業界で、最も注目を集めているであろう職業にフォーカスした書籍、その名もずばり「データサイエンティスト」をソフトバンククリエイティブ様から献本頂いたので紹介したい。

■データサイエンティストの定義

現在の所、明確な定義は無いが、本書では下記の能力を持つ人材であると定義している。

 1) 統計とITの能力
 2) ビジネスの問題を発見し解決する能力
 3) 創造的な提案を行う能力

本書の中ではエクセルを利用して、統計予測を行う幾つかの事例が記載されている。例えばエクセルの近似曲線を用いて2013年の10月待つにLINEユーザ三億人突破といった予測結果が紹介されている。身近なツールを用いてデータサイエンティストを身近に感じさせてくれている。

■現実的な解説のされた良書
エクセルによるデータ解析から、ヤフーのビッグデータを用いた選挙予測、有名なマネーボールの事例や、ワインの公式の話など、データサイエンティストとはどんなものなのかの実態を知ることが出来る。新書にありがちな「煽り」的な要素は殆ど感じられない。しかし、現実的に書いてしまったが故に「データサイエンティスト」に対する幻想が無くなってしまうかもしれない。自社サイトのアクセス解析もデータ解析であり、そういった地道な姿も書いているので、そういった印象を受ける人もいるかもしれない。

ただ、それが現実なのだ。国内の識者達と話していても、国内のデータサイエンティストには、広義にはSEOやソーシャルページの運用担当者も含まれると見ている人間が多く、全ての人が経営層の意思決定に関与するような華やかな仕事が与えらわけではないとの考え方が多い。華やかな部分だけでなく、そういった側面も隠す事無く紹介している本書は、現在の国内のデータサイエンティストを取り巻く現状を正直に書いていると思う。
(とはいえ、本書に書かれていないコアなデータサイエンティストも存在することは事実である)

■データ筋トレが大切

ソフトバンクのインタビューの中に興味深い部分があった。ソフトバンクにデータサイエンティストという職業は無いが、「データ重視の企業文化」であり、数字に最も細かいのは、孫正義氏だとある。「データ重視の企業文化」とは、データを眺めることが仕事ではなく、全ての物事において「なぜ」それが起きたのかをデータで実証する習慣があることなのだという。

例えば、ある新商品が発売された時に、キャンペーンを実施したとする。当然、他社より良い成果が出たのか、負けたのかはどこの企業でもチェックする。しかし、それにおいて「キャンペーンの効果」はどの程度あったのかまでチェックする企業は少ない。ソフトバンクでは、勝った、負けたの結果に対して、それに影響を及ぼすであろう事象に対して出来うる限り効果を測定し、次につなげていくのだという。

何気ない記述のようで実はとても重要なことだ。たとえどんな分析ツールを導入したとしても、誰も使わないのなら効果は出ない。勝った負けたの結果しか見ない文化でも必要はない。あらゆることに説明を求め、それを証明するデータを欲する企業文化、それがあり、それに応える社員が居るということは重要だ。

実際、ソフトバンクはこの「データ重視の企業文化」が根付いてるおかけで、リサーチ業務は社内のリソースで完結出来るのだという。データサイエンティストを知りたいかたへの入門書として本書はお勧めできる一冊だ。

私も本書を読んで、データサイエンティストのKPIをどう設定すべきかなどについて、疑問が出てきた。このあたりの疑問は、9月25日に現在第一線で活躍されているソフトバンクモバイルを接続率No.1に導いたデータサイエンティスト柴山さんにお話をうかがってみたいと思う。興味のある方は参加無料なので、来場頂ければ幸いだ。



この記事のタグ: , ,


関連する記事

  • ザ・アドテクノロジー 現代広告に携わる全ての人の教科書として

  • オラクルCCO、ボブ・エバンス。「オラクルがクラウドを理解していないという世論は馬鹿げている」

  • 変化するコンシューマという定義

  • データ・サイエンティストの実像についてAgoop柴山さんと対談します

  • ヤフーのビッグデータによる選挙予測から学ぶこと

  • 「組織の壁」を越えた日本企業達。新刊「ビッグデータ・アナリティクス時代の日本企業の挑戦」

  • 国民所得によってスマートデバイスの普及OSが異なっている

  • 孫正義氏が語った、ビッグデータが生み出す新たな収益源

  • ノマド論では無い キャリア未来地図の描き方

  • サイボウズ式編集部流 オウンドメディア運営の流儀


  • プロフィール

    大元隆志(おおもと たかし) 通信事業者のインフラ設計、提案、企画を12年経験。異なるレイヤーの経験を活かし、技術者、経営層、 顧客の三つの包括的な視点で経営とITを融合するITビジネスアナリスト。業界動向、競合分析を得意とする。Yahoo!ニュース講談社 現代ビジネスCNET翔泳社EntepriseZineITmedia マーケティングITイニシアティブ、等、様々なIT系メディアで活躍する。SNSビジネス特集でNHK教育テレビに出演。ソーシャルメディア系イベントしては国内最大級となるソーシャルカンファレンス主催者。著書に「ビッグデータ・アナリティクス時代の日本企業の挑戦」「ソーシャルメディア実践の書」、「IPv4アドレス枯渇対策とIPv6導入」がある。所有資格 米国PMI認定PMP、シニアモバイルコンサルタント等。