ヒトラーの贋札から学ぶ「働くこと」の意味

第二次世界大戦にて、ドイツ政府が行った史上最大の偽札事件「ベルンハルト作戦」。この作戦で造られた偽札は、まずポンド紙幣が標的となり1億3200万ポンド以上(現在の価値で約一兆円)もの偽札が流通し、イギリス経済の混乱を巻き起こした。この「ベルンハルト作戦」を題材にした映画が「ヒトラーの贋札」である。

なお、タイトルにヒトラーとあるが、ヒトラーは一切登場しない。

働くことの意味とは

主人公のサリーはパスポートや偽札を偽造するユダヤ系の贋作師。定職に就かず、時折趣味の絵画を楽しみながら街を転々と渡り歩いていた。絵を描くことは楽しい、だがこれでは食えないから、贋作師の道を選んだ。彼にはそんなポリシーがあった。

ある日、サリーが逮捕された所から物語りは急激に動き始める。収容所に連行されたサリーは、そこで美術の腕を見込まれ、ベルンハルト作戦に参加することを強要される。皮肉なことに逮捕前は政府から追われる「犯罪」だった偽札作りが、「国益」のために貢献する崇高な使命となる。しかし、サリー達偽札偽造団が偽札を造れば造るほど、ドイツ軍の武装やスパイ活動が強化され、同胞である筈のユダヤ人が迫害される。自分の命を守るため、同胞を犠牲にする行為に悩む偽札偽造団。彼らは自分自身だけでなく家族も人質に取られており、家族のためにも働かざるを得なかった。

そんな状況に印刷工のアドルフ・ブルガーは「印刷機は真実を刷るものだ」として、偽札製造の中止を画策する。仕事とは、人間の尊厳を守るものなのか、社会の発展のためなのか、自分たちの社会の発展のためなら他の社会は破壊しても許されるのか、生きるための手段でしか無いのか。作中の様々なエピソードが見る人の心へと訴えかけてくる。

思えば人類の歴史とは大半が戦争に費やされ、現代のように「生死ではなく働くこと」に悩めるということは実はとても贅沢なことなのかもしれない。本作は、戦争映画としても評価は高いが、それだけで片付けるには惜しい。働くことの意味に悩む現代人にもお勧めしたい一本だ。



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    大元隆志(おおもと たかし) 通信事業者のインフラ設計、提案、企画を12年経験。異なるレイヤーの経験を活かし、技術者、経営層、 顧客の三つの包括的な視点で経営とITを融合するITビジネスアナリスト。業界動向、競合分析を得意とする。Yahoo!ニュース講談社 現代ビジネスCNET翔泳社EntepriseZineITmedia マーケティングITイニシアティブ、等、様々なIT系メディアで活躍する。SNSビジネス特集でNHK教育テレビに出演。ソーシャルメディア系イベントしては国内最大級となるソーシャルカンファレンス主催者。著書に「ビッグデータ・アナリティクス時代の日本企業の挑戦」「ソーシャルメディア実践の書」、「IPv4アドレス枯渇対策とIPv6導入」がある。所有資格 米国PMI認定PMP、シニアモバイルコンサルタント等。