ヤフーeコマース革命への期待

Yahoo! JAPANがEC事業における新戦略を発表し、話題を集めている。eコマース革命を掲げ、Yahoo!ショッピングのビジネスモデルを大きく転換し、国内eコマース市場の流通総額No.1を目指すという。実現のためには三ステップあり、まずは「売り手の数No.1」を目指す。

ヤフーEC革命

「売り手の数No.1」実現のための施策は下記の通り、「手数料無料」へと舵を切る。
Yahoo!ショッピング
 ・出店資格 法人、個人(Yahoo!プレミアム会員であること)
 ・月額出店料 無料
 ・ロイヤルティ 無料
 ・カード決済手数料 業界最安値
 ・ポイント費用 実費

ヤフオク!
 ・B2C出店資格 法人のみ
 ・B2C月額出店料 無料
 ・ロイヤリティ 5.25%(特別カテゴリを除く)
 ・C2C出店制限 プレミアム会員のみ
 ・C2C出店料 無料(特別カテゴリを除く)

今回の施策により、二桁億の減収が見込まれるとしているが、決算への影響は軽微だとした。
経営への影響

なぜ「今」なのか

筆者が今回の発表で気になったのは「なぜ、今eコマース」のテコ入れに乗り出したのかだった。国内市場を見渡せばこの分野では、アマゾン、楽天が既に浸透しており、幾ら知名度とポータルサイトの集客力があるとはいえ、現状を打破するのはそれほど簡単とは思えない。

しかし、孫正義氏が登場して「革命」と宣言したのだから何か勝算があるに違いない。Yahoo! JAPANという勝負よりは、ソフトバンクグループとしてのeコマース戦略として意味があるのではないかと筆者は捉えた。

 ・リアル店舗のオンライン店舗併設アシスト
 国内のスマートフォン市場は既に「必要」とする大半の人には行き渡り、成熟市場となっている。ソフトバンクの収益の要である通信業界は、ドコモがiPhone取り扱いを開始したこともあり「次の一手」となる、新たな収益の柱を模索しているのは間違いない。

 スマホ普及率が過半数を超える米国のリアル店舗のトレンドとして「オンラインストアの併設」が挙げられる。もはやデパート等もオンラインストアを持っているのが当たり前の時代だ。米国のトレンドを持ち込むタイムマシン商法が得意な孫正義氏の目にもこの流れが目に付いているのでは無いだろうか。国内の小売大手をYahoo!ショッピングに引き込むことが出来れば、アマゾン、楽天とも品揃えの面で大きな差別化が行えるようになるだろう。

 また、リアル店舗側にとってもYahoo!ショッピングと提携するメリットはある。楽天、アマゾンとの大きな違いはソフトバンクは「携帯キャリア」である点だ。Yahoo!ショッピングのアプリがホーム画面に事前に登録された端末が販売されるとなれば、ネットに足場を持たないリアル店舗にとっては大きな味方となる。割賦販売方式でタブレットを実質無料で配ることすら夢物語では無い。

 更に、ヤフーは既にO2Oによる送客サービスを展開しているが、Yahoo!ショッピングに出店している店舗は、こういったO2Oサービスを利用しやすくなるなどのメリットを享受する可能性も期待できる。

 ・接客中心のリアル店舗改装のアシスト
リアル店舗の潮流として代官山蔦谷書店のような訪れる価値のある店舗作りがある。小売大手に対して店舗改装&店舗のIT化提案を行い、ネット部分をYahoo!ショッピングに開設させるといった案も考えられなくはない。

 これらは筆者の推測にすぎないが、スマートデバイスが今より普及していくであろう未来において「今のEC市場」だけを見据えて、今回の施策に踊りでたわけではないだろう。むしろ、アマゾンや楽天の市場だけではない領域を拡大してくれることを期待したい。日本は超高齢化社会となり、シニアに対する通販需要の拡大も期待できる。今後の展開が楽しみだ。



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  • プロフィール

    大元隆志(おおもと たかし) 通信事業者のインフラ設計、提案、企画を12年経験。異なるレイヤーの経験を活かし、技術者、経営層、 顧客の三つの包括的な視点で経営とITを融合するITビジネスアナリスト。業界動向、競合分析を得意とする。Yahoo!ニュース講談社 現代ビジネスCNET翔泳社EntepriseZineITmedia マーケティングITイニシアティブ、等、様々なIT系メディアで活躍する。SNSビジネス特集でNHK教育テレビに出演。ソーシャルメディア系イベントしては国内最大級となるソーシャルカンファレンス主催者。著書に「ビッグデータ・アナリティクス時代の日本企業の挑戦」「ソーシャルメディア実践の書」、「IPv4アドレス枯渇対策とIPv6導入」がある。所有資格 米国PMI認定PMP、シニアモバイルコンサルタント等。