2013年振り返り 通信業界のゲームチェンジが始まった

今年の最大のニュースは勿論、ドコモのiPhone取り扱い開始である。これによってiPhoneはどのキャリアからでも購入出来るようになり「魅力的なスマートデバイスを扱うキャリアが新規加入者獲得を牽引する」という状況に「ゲームチェンジ」をもたらした。

ゲームチェンジ

■「高止まり」する通信料金
低価格を武器にしていたソフトバンクもLTE開始時から通信料金を徐々に値上げし、NTTドコモ、au、ソフトバンクの三社の通信料金は横並び、いや「高止まり」状態になった。まるで「三国志」のような睨み合い状態となっており、どこかが「低価格戦略」で頭一つ飛び出して値下げする気配を感じない。

「iPhone」以外の強力な「武器」が出現するまではこの価格帯を維持し、キャッシュを増やしたいという思いがあるのではないかと筆者は見ている。ソフトバンクは海外進出が最も大きな目標、日本は「キャッシュ」を産み出す地域であり当然現在の収益力をアテにしているのは間違いない、むやみに値下げ合戦に持ち込むことはしたくないだろう。auやドコモについても新たな事業領域開拓のために現在は内部留保を増やすべき時期であると判断しているのではないかと私は推測している。

そのため、当面は三キャリア主導で「値下げ競争」が起きることはないのではないかと読んでいる。

■「ユーザアカウント数」の勝負へシフト
通信費の競争が現状維持となり、市場では「通信品質」の競争へとシフトしたという見方が多いように。確かにこれは正しいが「加入者ビジネス」に限っていえばと注記したい。既に通信事業者の戦い場は「加入者向け」ビジネスではない領域へとコマを進めている。例えば、NTTドコモのNOTTVや、KDDIのJ:COM、JCNの統合などは映像方面への事業領域拡大を意味している。これらが2020年にはお茶間のテレビに置き換わっている可能性もある。

そういった新たな収益源の模索の中で注目しているのがauのスマートパスだ。auのスマートパスは会員数が800万人を超え、来春には1000万人にすることを目標としている。auはYahooの有料会員900万人を意識しており、「携帯加入者数」ではなく「ユーザアカウント数」で競いあっている。

なぜ「ユーザアカウント数」にこだわるのか?その答えは「O2O」にある。キャリアの提供するキラーアプリといえば「音声通話」「キャリアメール」であったが、この二つは「LINE」に脅かされている。この二つを事業から奪われるとキャリアはデータを運ぶ「土管ビジネス」となってしまう。新たな収益源として企業の五兆円を超える広告費を多くのIT企業が狙っているが、「土管屋」になってしまったら手も足もでなくなってしまう。

そこで未来の五兆円にむけて足場を作るために「O2O」を手始めにデジタルマーケティング領域に進出したいと考えるならば、「ユーザアカウント」を獲得しリアル店舗への送客力をアピールしなければならない。

LINE等のOTTプレイヤーの存在に左右されない「自社のユーザアカウントの獲得」。「携帯加入者数」の競争から「ユーザアカウント数」の競争へ、未来を賭けた戦いが実は既に始まっている。

2014年は格安スマホ、格安SIM陣営との価格競争が注目

スマートフォン需要は一巡し、既に必要とする人には行き渡っていると考えられている。まだフィーチャホンを使っているユーザはスマホの機能を必要としていないか、あるいは、通信費高騰を嫌がって乗り換えていないといった人たちだろう。この乗り換えを渋っている人たちを巡って、新たな動きが活発になると予想している。

来年、携帯三キャリアが自ら価格を下げこの層を積極的に開拓していくとは考えにくい。ある特定の業界の競争が停滞すれば、それを破壊するプレイヤーが台頭するのも事実。注目株は月額2100円で端末代+パケット無制限という従来の三分の一の料金体系を打ち出したfreebit

格安SIMは従来からも存在していたが「SIMと利用可能な端末」を個別に買う必要があったので、ある程度知識のある人でなければ購入に踏み切れなかった。しかし、freebitのように端末とセットであれば悩む必要はない。iPhoneや、Nexusといった人気機種のSIMフリー版も登場したので、家電量販店を中心に「人気機種+格安SIM」というセット販売の認知度が上昇する可能性がある。

これらの陣営が低価格を希望する層から支持を集めるのか、それとも失敗するか。成否によっては新たな勢力が登場する可能性もある。来年は「携帯三キャリアむ以外の勢力に要注目だ。



この記事のタグ:


関連する記事

  • 2013年振り返り ライフスタイル


  • プロフィール

    大元隆志(おおもと たかし) 通信事業者のインフラ設計、提案、企画を12年経験。異なるレイヤーの経験を活かし、技術者、経営層、 顧客の三つの包括的な視点で経営とITを融合するITビジネスアナリスト。業界動向、競合分析を得意とする。Yahoo!ニュース講談社 現代ビジネスCNET翔泳社EntepriseZineITmedia マーケティングITイニシアティブ、等、様々なIT系メディアで活躍する。SNSビジネス特集でNHK教育テレビに出演。ソーシャルメディア系イベントしては国内最大級となるソーシャルカンファレンス主催者。著書に「ビッグデータ・アナリティクス時代の日本企業の挑戦」「ソーシャルメディア実践の書」、「IPv4アドレス枯渇対策とIPv6導入」がある。所有資格 米国PMI認定PMP、シニアモバイルコンサルタント等。