機械に仕事を奪われるのは本当に不幸なことだろうか?

ZDNetで「ワークシフト論」を連載させて頂いてから、働き方について色々と調べるようになった。現代は激動の時代、だから当然働き方は変わる。しかし、ふと思った。過去にも歴史が大きく動いた時はたくさんある。産業革命や世界大戦の時は今以上に混乱していたかもしれないし、政権の転覆レベル様々な国でしょっちゅう起きて来た。

そう思って過去の「働き方」について色々調べてみると、今良く語られる「機械に仕事を奪われる」ということは、不幸な出来事ではなく、人間にとって幸せなことなのではないか?と思うようになってきた。人間は「不幸」な仕事を「機械」に代替してもらうことで「発展」してきたのだ。

例えばだ、2000年前のローマでは「労働者」といえば「奴隷」だった。この「奴隷」を市場に供給する役割を担っていたのは「海賊」。海賊というと物資を奪うイメージが強いが、当時は船を襲って船員を奴隷として売った方が儲かったそうだ。この奴隷には様々な種類があり、中には「氏名告知奴隷」と呼ばれる奴隷なんていうのも存在したそうだ。氏名告知奴隷は貴族と共にパーティにでかけ貴族の変わりに人の名前や顔を覚えておくという役割、いわば「記憶力」を買われる奴隷だ。他にも当時は科学が発達していなかったので、例えば風呂をわかしたり、部屋を暖めるために暖炉のマキを準備するのも、奴隷の役目だった。

こういう光景はローマだけでなく、中国の歴史ドラマなどを見ていても同様で、機械が存在しない時代には権力者のために多数の奴隷が「人間らしい生活」を奪われていた。そもそも彼らは「人間らしさ」なんて考えたことが無かったかもしれない。

しかし、ITの発達した今となっては、風呂をわかすために奴隷を必要とする人はいないだろう。氏名告知奴隷はFacebookに仕事を奪われた。

機械やITの発達で人間の仕事が失われることは、仕事を奪われる当事者にとっても「不幸」なことかもしれない。しかし、長い人類の歴史から見れば「進化」であり、人間はより創造的な仕事に従事出来るようになり、その結果世界は豊かになってきた。

アマゾンの空飛ぶ輸送機が運転手の仕事を奪うかもしれない。IBMのワトソンがホワイトカラーの仕事を奪うかもしれない。ただ、もしそんな社会が実現し百年たった時、後の世界の人はこういうだろう。「アマゾンで注文すると昔は人が車を運転して商品を届けていたんだよ、長時間運転して交通事故になったりとか、信じられないよね」、「昔はプレゼン資料作るのに徹夜したりしたんだって、今ならワトソンにお願いしとけば一時間後には完成してるのにね」。

思えば30年も昔を想像すれば殆どのオフィスにはパソコンもプリンタも無かっただろう。資料の手直し一つに一日を費やしていたかもしれない。電話交換機の向こう側でオペレータが、通話者同士を手作業で繋いでいた時代があったなんて想像できるだろうか。

機械に仕事を奪われる人は確かに生まれる。しかし、それに対する準備期間はまだ十分にある。ただ、労働の歴史を辿ってみると、機械に仕事を奪われた結果、人類の生産性は高まり、より創造性の高い仕事、挑戦しがいのある仕事が生まれてきたのも事実だ。個人にとっては不幸だが、人類にとっては発展をもたらすのだ。悲観的な思考だけで留まらず、変化を受け止め対応し、この変化を楽しむことが、これからの社会人には必要なのではないだろうか。



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    大元隆志(おおもと たかし) 通信事業者のインフラ設計、提案、企画を12年経験。異なるレイヤーの経験を活かし、技術者、経営層、 顧客の三つの包括的な視点で経営とITを融合するITビジネスアナリスト。業界動向、競合分析を得意とする。Yahoo!ニュース講談社 現代ビジネスCNET翔泳社EntepriseZineITmedia マーケティングITイニシアティブ、等、様々なIT系メディアで活躍する。SNSビジネス特集でNHK教育テレビに出演。ソーシャルメディア系イベントしては国内最大級となるソーシャルカンファレンス主催者。著書に「ビッグデータ・アナリティクス時代の日本企業の挑戦」「ソーシャルメディア実践の書」、「IPv4アドレス枯渇対策とIPv6導入」がある。所有資格 米国PMI認定PMP、シニアモバイルコンサルタント等。