Facebook Wi-Fiの衝撃

ノマドクラスタを中心に「無料でWi-Fiを利用できる「Facebook Wi-Fi」が日本でも本格導入か」という記事が話題になっている。これはFacebookの「チェックイン」を行うだけで無料で無線LANが使えるというもの。

しかし、肝心の店舗側がこの機能を提供しようとなると、ハードルは少し高いかもしれない。この機能を利用するためには現時点では、米シスコ社のWi-Fi APを利用しなければならず、システム構築費や仕切り価格等によって一概には言えないが恐らく一台20~30万円前後のコストが必要になる。Amazonで売ってる一台一万円前後の格安無線ルータで対応出来るというわけではないので注意頂きたい。将来的には対応ルータは増えていくと思われるが、現在はそれなりの資本力がある企業に導入は限られると予想される。

Facebook Wi-Fiは普及するか?

一利用者としては、普及して貰えると有りがたい。自分の生活圏内の店舗が無料Wi-Fi完備になればタブレットやKindleといったコンテンツアクセス閲覧用の機器はWi-Fi版だけを購入すればよく、通信費の節約に繋がるからだ。

しかし、現時点では「何とも言えない」、どちらかと言えば「結構時間がかかりそうだ」というのが正直な感想だ。というのも、前述した通り導入にはある程度の資本力が必要となる。ある程度大きな飲食店でパッと頭に浮かべる企業なら既に「Wi-Fi使えます」のシールが貼ってある所が多い。こういう企業がFacebook-WiFi対応ルータを導入していれば、普及が進む可能性はある。

それに店舗側にとっても、良いことばかりではない。スターバックスのように「安心してくつろげる場所」としてのブランティングが評価されている店舗ではWi-Fiは良質な顧客に対する良いアプローチとなるが、「安さを売り」にしている飲食店が安易に無料Wi-Fiを導入すると百円コーヒ一杯で何時間も居座る人を引き寄せ回転率が低下するという悪循環を招く恐れもある。

店舗側にとっても無料Wi-Fiは毒にも薬にも成り得るのだ。そして、一般的に「無料」で集まってくる人達は店舗側にとって好まざる客層である場合が多い。それ以外の付加価値も高める工夫が大切だ。

本質的にはキャリアWi-Fi vs OTT Wi-Fiの戦いである

が、そんなに簡単な話でもない。現在、「Wi-Fi使えます」とステッカーの貼ってある店舗のWi-Fiルータは通信事業者が設置したものである可能性があるからだ。携帯無線網のトラフィックを迂回するために、通信事業者は商業施設などでのWi-Fiアクセスポイントの展開を進めてきた。通信量の多い場所などでは通信事業者側が費用を負担するケースもあった。

このようにして通信事業者がわざわざ開拓してきた店舗のルータをFacebook Wi-Fi対応に変更するかと言うとコストの関係もあるので簡単ではない。それに通信事業者からすればラストワンマイルの部分までFacebook等のOTTの影響力が及ぶようになることを脅威に感じるだろう。

今回のFacebook Wi-Fiの仕組みだが、特定のサービスへのログイン状態でアクセス許可を判断する「OAuth」認証が利用されていると推測される。よってある程度Facebook Wi-Fiが成功を収めるようであれば、他のOTTも追随する可能性がある、例えば「Yahoo Wi-Fi」や「Line Wi-Fi」といった感じだ。

スマートフォンの普及が一巡し、キャリアWi-Fiもデータオフロードを目的としたWi-Fi設置から、O2Oなどの付加価値サービス提供を目的としたWi-Fi設置へと目的がシフトする兆しがある。キャリア視点で考えればデータオフロードの観点だけならOTTの力を借りてでもトラフィックを迂回させたいと考えたかもしれないが、付加価値サービスを視野にいれるとOTTの影響力は極力抑えたいと考えるだろう。

現時点ではキャリアWi-Fiが優勢であるが、OTT陣営主導のWi-Fi展開がどこまで普及するか。もし、OTT陣営主導型が増えればキャリアのWi-Fi戦略にも見直しが迫られるかもしれない。



この記事のタグ: , ,


関連する記事

  • FBで人に言えない「内緒のコミュニティ」に入るのは気をつけよう

  • オラクルCCO、ボブ・エバンス。「オラクルがクラウドを理解していないという世論は馬鹿げている」

  • Thingbots、あなたの冷蔵庫がボット化する

  • 「通信の中立性は見直されるべき」であるという判決の本質

  • Facebook投稿 「宣伝する」 機能を使ってみた

  • エリクソンの調査データから独自のグラフを作成可能な「Traffic Exploration」

  • ロボットビジネスの開拓を始めた韓国通信事業者

  • DICK’S Sporting Goods が展開する「RUNFOR」が素晴らしい

  • Facebook悪徳活用事例 感動系エピソードを利用した情報商材販売

  • FacebookグループでDropboxとの連携が可能に


  • プロフィール

    大元隆志(おおもと たかし) 通信事業者のインフラ設計、提案、企画を12年経験。異なるレイヤーの経験を活かし、技術者、経営層、 顧客の三つの包括的な視点で経営とITを融合するITビジネスアナリスト。業界動向、競合分析を得意とする。Yahoo!ニュース講談社 現代ビジネスCNET翔泳社EntepriseZineITmedia マーケティングITイニシアティブ、等、様々なIT系メディアで活躍する。SNSビジネス特集でNHK教育テレビに出演。ソーシャルメディア系イベントしては国内最大級となるソーシャルカンファレンス主催者。著書に「ビッグデータ・アナリティクス時代の日本企業の挑戦」「ソーシャルメディア実践の書」、「IPv4アドレス枯渇対策とIPv6導入」がある。所有資格 米国PMI認定PMP、シニアモバイルコンサルタント等。