将来、大学の必要性は低下する

大学奨学金について時折議論している光景を見かける。個人的には「借りたものは返す」のが当たり前だと思っているし、奨学金制度があるおかげで家庭環境に左右されずに進学できるのは良い制度だと思う。「ローン」であることを批判する意見を見るが、もしこの制度が無くなってしまったら、生まれた環境で人生を左右されてしまう人も出てくるだろう。

そういうやりとりを見ていると、むしろ私は「そもそも大学が今後必要なのだろうか?」、いや、「誰にでも必要なものなのだろうか?」という疑問を感じてしまう。

人との対話能力を持ったコンピュータ秘書がいずれ現れる

もちろん、今現在大学が重要であることは間違いないし、就職するにはまず進学しておいた方が無難だ。しかし、一方でコンピュータは進化し続ける。現在米国の一部のコールセンタ等ではIBMが人の言葉を理解するコンピュータワトソンにコールセンターの業務を代替させることを検証中だ。今年の春頃にクラウド上でSaaSとして提供されることが検討されている。

2025年前後には人と自然に対話するコンピュータがオフィスに導入されているのではないかと、私は考えている(実際はクラウドで提供されるだろうし、もう少し早いかもしれない)。そのコンピュータは今より人の自然な会話を理解し、スケジュールの管理や資料の保管場所を検索して適切なものをピックアップしてくれる。簡単な秘書的な仕事を代替してくれる。もしかすると、単純な表計算位なら、部下に指示を与えるように口頭で指示を出せばあとは、コンピュータ秘書が処理してくれる。

まるでSFの世界のように感じるかもしれないが、IT業界の方向性は確実にその方向へと舵が切られている。既にその原型は皆さんの手元に存在する。iPhoneのSiriである。今アップルもグーグルもIBMもより対話を理解出来るコンピュティングの研究が進められている。既にグーグルは「日本の総理大臣は?」と聞けば、正しい総理大臣を答えてくれる。もちろん「アメリカの大統領」と聞いても教えてくれる。

そもそも、今から30年前のオフィスにはパソコンも無く手作業で書類作りや、プレゼン資料作りが行われていた。これから10年、20年先の未来で「人の言葉を理解するコンピュータ秘書」が一人一台与えられていたとしても、それほど不思議なことではない。

大学で何を学ぶのか?

一般的な社会人がこなす、演算や国語力程度ならコンピュータ秘書がこなしてくれる。今日起きた事件や、過去の歴史も瞬時に答えてくれる。そんなコンピュータ秘書が会社に導入されていたとしたら、私たちは大学まで進学して何を学ぶべきか?誰でも入学出来るレベルの大学に通い得られる知識は、コンピュータ秘書より高度なものなのだろうか?

大学に通う理由は「良い教育を受けるため」か、「良い就職先を獲得するため」か。前者の必要性は一部を除いて後退し、後者の理由で大学を選択する人が大半になる。前者の大学としては東大などの一部の超難関校や、専門的な研究が盛んな大学の価値は存続するだろう。しかし、「一般的な学力の大学」は存在価値を疑問視されるようになるのではないかと思う。「一般的な学力の大学」については大学に入学出来る学力があることが分かればよく、四年間通う必要性については疑問を抱くようになるのではないだろうか。むしろ、義務教育を終了し大学入学レベルの学力があると判断されれば、若いうちから社会へ進出し、社会人になってから都度必要な知識をクラウド型の学習塾などで取得する、そんな教育の有り方が議論されるようになると想像する。

汎用的な教育は、汎用的なコンピュータ秘書の能力で代替されるようになる。自分が社会で勝ち抜くために個別最適された教育プログラムを編成する、そんな学び方が「未来」には必要になるのではないだろうか。



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プロフィール

大元隆志(おおもと たかし) 通信事業者のインフラ設計、提案、企画を12年経験。異なるレイヤーの経験を活かし、技術者、経営層、 顧客の三つの包括的な視点で経営とITを融合するITビジネスアナリスト。業界動向、競合分析を得意とする。Yahoo!ニュース講談社 現代ビジネスCNET翔泳社EntepriseZineITmedia マーケティングITイニシアティブ、等、様々なIT系メディアで活躍する。SNSビジネス特集でNHK教育テレビに出演。ソーシャルメディア系イベントしては国内最大級となるソーシャルカンファレンス主催者。著書に「ビッグデータ・アナリティクス時代の日本企業の挑戦」「ソーシャルメディア実践の書」、「IPv4アドレス枯渇対策とIPv6導入」がある。所有資格 米国PMI認定PMP、シニアモバイルコンサルタント等。