不動産仲介業者の言葉を信じてはいけない

ここ一週間程、一戸建てを購入しようかと思い色々と不動産仲介業の方とやりとりをしていた。まず、住宅購入の動機に至った背景だが、低金利、住宅借入金等特別控除の存在だ。住宅借入金等特別控除を利用すれば最大で四千万円までのローンに対して十年間の減税措置が行われる。最大額のローンなら十年間で四百万税金が帰ってくる計算になる。これらを考慮して、頭金を多少入れればの話だが、賃貸で一つの場所に20年住むことと、購入して住んでもそれほど月々の支払いが変わらないからだ。かつ、最近は東京都内でも3千万から4千万円代で購入出来る3階建ての物件が出てきており、土地は狭くて縦の空間を上手に活かし快適な居住空間を造っている。

これらを考慮すると、もちろん災害のリスクもあるが、購入してみるのも「有り」ではないかと思うようになった。しかし、いざ不動産について調べだすと不動産業界、特に不動産仲介業者に対する不信感が募りだした。

「不動産仲介料は値引きしない」は嘘

 不動産に限らずだが、基本的に何か大きな買い物をする時には、必ず複数の業者から見積もりを取るようにした方が良い。今回、一つの物件に対して不動産仲介業者二社に相談を持ちかけた。不動産購入の際に大きな手数料を取られるのが不動産仲介料。4千万の物件なら仲介手数料は136万円になる。不動産仲介業者はこの不動産仲介料が収益となる。

 A社はこの仲介手数料を半額にしてくれるという。B社は手数料は「不動産仲介業は不動産仲介料で食っているので、これを値引くなんてとんでもない」という。確かにB社の言い分にも一理あるような気がする。

 しかし、最近は「不動産仲介手数料の値引き」は当たり前だとか。理由は二点ある。一点目はインターネットの発展によって他の業界と同じくコスト削減を行う業者が台頭しているからだ。Suumo等で物件を誰でも検索出来るようになり、インターネットを中心に活動を行う不動産仲介業者も出てきており、彼らは仲介手数料の50%以上の値引きをすることを売りにしている。

 二点目はビジネスモデルの変化だ。仲介手数料無料にしている不動産仲介業者は、実は物件の売主から広告料などの名目で手数料を貰っている。売主から手数料を取れるなら、購入者からは貰わなくても収入は入ってくることになる。

 これら二つによって「ビジネスモデルを工夫」している業者は仲介手数料を半額、無料にすることで業績を伸ばしている。こういう背景もあり、他の業者も仲介手数料の値引きに追随しなければならない状態になっており「減額無し」で買ってくれる購入者は「カモ」と言えるかもしれない。

 なお、一般的にSuumo等で検索可能な物件は、大半がどこの不動産業者仲介業者でも取り扱える。そのため、仲介手数料半額を売り文句にしている仲介業者に行ってSuumoの画面を見せればそこの業者から購入することが出来る。中には出来ない場合もあるかもしれないが、大半は可能だ。

不動産仲介業者はアフターサポート力も大切は半分嘘

 値引きをしないと言った、B社は「不動産にはトラブルは付き物。購入後にも何かとトラブルが起きる、不動産仲介料はその時のための活動資金。最近はネットで仲介料無料なんていう業者もあるようですが、そんなとこに頼んだら購入後のアフターサポートは何もしてくれない、安さにつられては駄目」だと言う。

 確かに、一戸建てともなれば、一生に一度の買い物。買った後に何もしてくれないというのは不安に感じる。しかし、ここでも冷静になる必要がある。風呂が故障した、雨漏りがするとなれば、問い合わせる先は不動産仲介業者ではなく、家を造った「ハウスメーカ」だ。

 実際、十名ほどに聞いた限りでは、住宅購入後に不動産仲介業者に問い合わせた経験のある人は1名。その1名を除いては住宅購入後に不動産仲介業者と連絡したことはないと言う。私もマンションを購入し十年が経過したが、一度も問い合わせたことがない。

 契約時の内容に大きな逸脱事項があった場合には不動産仲介業者が間に入り対応してくれることはあるので、不動産仲介業者のアフターサポートは不要とまでは言えないが、大抵はハウスメーカとのやりとりの方が多く発生する。アフターサポートを売りに値引き交渉に応じない業者に対しては、どんなアフターサポートをしてくれるのか、リストアップして貰うと良いだろう。

そもそも新築戸建は仲介業者は必須ではない

 新築戸建の購入には、家を造った「売主」と、それを仲介する「仲介業者」、それを購入する「購入者」という三人が登場する。新築物件の場合は「売主直売」というものもあり、仲介業者を介在することなく売買することが可能だ。法律的にもなんら問題が無い。「売主」も「企業」であることが多いので、契約時のトラブルもさほど心配ない。このため契約手続きと宣伝が主な仕事となる「仲介業者」は必ずしも必須というわけではないのだ。

 一方、中古物件の場合には家を売る「売主」は個人となる場合が多い。この場合には個人間の取引となり、契約時のトラブルが発生するリスクもあるので、仲介業者を挟むのが一般的だ。

予算は低目に伝える

 不動産仲介業者の収入である「仲介料」は固定ではなく、物件価格に対する料率となる。そのため物件価格が高いほど、彼らの取り分は大きくなることになる。また、仲介業者の営業は歩合制となっていることもある。歩合制の場合は高い物件が売れればうれるほど、自分の収入も増えるわけだから、なるべく高い物件を売ろうとする。

 不動産仲介会社に足を運ぶと、まずはアンケートの記入を求められる。物件の希望条件などを明記するわけだ。すると購入者は一生に一度の大きな買い物だし、親身に相談にのって貰いたいという一身で正直に答える。「子供が生まれる」、「勤務先は東証一部上場」、「頭金はいくら」、「予算は幾らまで」といった具合に、プライベートなことも含めて書く。

 実の所、こういうアンケートは親身に相談してあげるために存在するのではなく「物件購入の真剣度」、「ローンの審査の通りやすさ」、「資産状況」を知りたいだけなのだ。不動産購入は一日、二日ですぐ購入につながるものではない。だから「真剣度」が高い顧客や、ローンの通りやすい顧客を優先的にフォローする。三ヵ月後に子供が生まれるので広い家に引っ越したいという人と、特に引越しの予定はないけどどんな物件があるかみたいというだけの人なら、どちらが購入につながりやすいかは、容易に想像がつく。

 ここで、予算については準備出来る額の1割~2割下を提示することをお勧めする。そうでないと安い物件が紹介されなくなるからだ。彼らの収入は仲介手数料なので、予算の大きな人に親身に安い物件を進めたりしない。安い物件を紹介しても、予算枠一杯の方向に誘導しようとする。私の場合はある仲介業者では三千万円台の物件について「買い手がついた」と言われたが、別の業者では「まだ買い手がついていない」と言われた。

高額な買い物なので、不動産仲介業者と仲良くしたいと思う心理は当然働く。しかし、そういった心理を利用しようとする狙いが彼ら側にもある。一つの仲介業者の言葉を鵜呑みにせず、複数の業者と必ず比較するようにし、友人や両親に物件購入時の状況などを確認してみることをお勧めする。



この記事のタグ:


関連する記事

  • タバコのヤニ落しには「激落ち君」がお勧め

  • 子育てに適した住環境を考える

  • 不動産購入検討時に便利なインターネットサービス

  • 戸建てとマンションどっちがいいか


  • プロフィール

    大元隆志(おおもと たかし) 通信事業者のインフラ設計、提案、企画を12年経験。異なるレイヤーの経験を活かし、技術者、経営層、 顧客の三つの包括的な視点で経営とITを融合するITビジネスアナリスト。業界動向、競合分析を得意とする。Yahoo!ニュース講談社 現代ビジネスCNET翔泳社EntepriseZineITmedia マーケティングITイニシアティブ、等、様々なIT系メディアで活躍する。SNSビジネス特集でNHK教育テレビに出演。ソーシャルメディア系イベントしては国内最大級となるソーシャルカンファレンス主催者。著書に「ビッグデータ・アナリティクス時代の日本企業の挑戦」「ソーシャルメディア実践の書」、「IPv4アドレス枯渇対策とIPv6導入」がある。所有資格 米国PMI認定PMP、シニアモバイルコンサルタント等。